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[74] 枯れ木の涙

集積所を荒らす
カラスの姿はまだありません
道端の残雪は
ひんやり
早朝のしずけさのなかで
ぐっすり 眠っているかのよう

朝靄 もやもや
昨夜のゆううつ ひきずって
開けきらない目で見あげれば
雲間の朝空めがけ
鋭利な枝を発射させる数秒まえ
そんな枯れ木の立ち姿

つめたい
きびしい 風雪にも耐え
折れず
撓まず
しゃんとまっすぐ
えらいなぁと感心しつつも
隠し持つさびしさ 探ってしまいます

あなたはこの枯れ木のように
たくましい生き方でしたけれど
肉体のもろさを目の当たりにすると
痛々しいほどの かなしみを伴っていました
あなたは立派だったと
思いつづけるけれど
さいご あのとき
あなた
なにを想って
ひとすじのなみだ こぼしたのでしょうか

いくら寒くても
早起きの枯れ木は
いやなカラスを拒むでもなく
しずかに 待ちのぞんでいるようです
小鳥との楽しいお喋り
花々との切ない恋模様
春宵に心地よくひびく
星たちのジャズ

芽吹く季節の 到来を


※幻想宇宙でうたう星々
(胸がときめく星の声 後編)

お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。