[62] 天使の梯子のような
たいして価値はない
そう思わざるを得ない歩みの途次で
浮かんでくるのは
このまま さびしく消えゆくだけでは
我慢がならないという想い
冷水はいやだいやだと拒み
温水なら大丈夫なのかといえばそうでもなく
泳ぐこと 忌むばかりで
けっきょく
飛びこまない
さびしい人の同志でありつづける
だあれも望んでいない 頑なな信念を
ただ失いたくなくて
いたずらにかたくなってゆくばかり
その割には案外もろく
あるとき 気づかされるのだ
浅はかであったと
たとえば「たらしこみ」の技法に感嘆
あんな奥深さが
欲しくてたまらないのに
指をくわえてばかり
過ぎゆく年月
泥臭い
生臭い
這うような日々でも
傷ましさに にぶくならず
漏れ差す光
天使の梯子のような
つかみどころのない 美しい「なにか」を
追い求めていたい
尽きることのない
ちんけなさびしさ
だあれも望んでいない 頑なな信念
「執念」
いつか触れたいというあくなき欲求が
膝を突くことを
許してくれない
※幻想宇宙でうたう星々
(耳をすませば星の声 前編)
お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。