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[66] 死にゆく街の小景

粉塵が風にまじり
建物はクラック
廃墟と呼んで片づけるには
あまりにも悲しすぎる街で
あちこちに
馬が転がっている
立派なツノも
しなやかなツバサも
ぴくりとも動かない不気味さで

四季はマーブル
巡りが悪い
青ざめた春が ぶるぶるふるえている
滅びのさなか
生まれてしまった恋の
哀れかつ情ない終焉
その短命さを儚んで
春風さえも 逃げるように逸れてゆく
つめたい黒い雨の仕打ち
死にゆく街にはうってつけ

日々は裂けてゆく
夕闇の瞳の心細さにおいて
死んだふりをつづけるまごころ
されば無風の
しずかな真夜中に
おおきく振り下ろされるサーベルの
きらり煌めく死に光で
真っ二つな絶命を 乞うてみようか
街の変容に
望みを託して


※幻想宇宙でうたう星々
(耳をすませば星の声 前編)

お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。