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[24] お寒い熱帯夜

規律をまもれば
ぼんやり者をまぬかれるから
識者のふりして説かれた
ざれごと
信じてみるのも 悪くはないけれど
疲れ果て
衰弱するなら
損を繰りかえして終わるだけの
むなしい魂魄の可能性
せめて
きな臭いあたまのなかでは
ひとり残らず
ノックアウト
それくらいの気概を持ちあわせて
淡々に立ち向かおうか

遅鈍な子はながいあいだ
鋭敏な子をおそれていた
それなりの経験と学習で
やっとこさ 追いつくと
他者の遅鈍には
かつての己を見ることもなく
無性にいらだっている
そんなこころが お寒いとかんじた
野良猫もアイスほおばる
熱帯夜

天上天下があるように
ちいさな営みにおいても
上と下が
あらかじめ 仕組まれているかのようだ
優劣念頭の諍いは絶えず
責任転嫁の連鎖で満ちる
なんともかなしい
いたずらだ
へんてこだ

きれいなお花が 咲いていましたよ
いいおてんきです
散歩を取りいれてはいかがでしょう

もくもくと手元 カタコタカタコタ
もくもくと手元 パチポチパチポチ

無駄な時間は省いて省いての
オンパレード
そうか
みんな猫なんだ
そろいもそろって猫背の猫だ
コーヒー啜っているあいつは猫舌
電話中のあの子は猫なで声の猫かぶり
あぶない
あぶない
食われるぞ
大事なこころの やわらかいとこ
躊躇なく食われるぞ
こっちを向いて にゃごおと
鳴いてみろ!

もくもくと手元 カタコタカタコタ
もくもくと手元 パチポチパチポチ

ぼくらは
放したわけじゃないからね
赤子が母親の小指をにぎるような
やさしさを

おのおの隠し持つ幸福が
透けて見え
こらえられず 惨めな赤面
あとずさり
あとずさり
全速力の 逃走だ


※逃亡銀河の鼠たち
(逃げのびた闇のなかで 前編)

お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。