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マネーフォワードのESG /「A」評価でもバンザイ“しない”理由

 先日、お知らせでも発表しましたが、米モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社による「MSCI ESG レーティング」において、A評価を初めて獲得しました!昨年度のBB評価から2段階の格上げです。今日は「マネーフォワードのESG活動」について、特に尽力してくれている3人のメンバーと一緒に話せたらと思います。

一同 よろしくお願いします。

左から忍岡さん、有馬さん、僕、石原さん

<登場人物紹介>
石原 千亜希(いしはら ちあき)/People Forward本部長

2016年にマネーフォワード入社。IPO準備プロジェクトを経て、上場後はIR、海外資金調達等に従事。経営企画部長を務め、自身の問題意識からESGの取り組みに初期から関わる。People Forward本部(PF本部)に異動後、21年12月より同本部長。

忍岡 真理恵(おしおか まりえ)/経営企画部
2018年マネーフォワード入社、事業開発、社長室長を経て、21年に石原から引き継ぐ形でIRを担当。その一環として社内のD&I推進に関わり、過去2回の統合報告書やESGデータ集を担当。経済産業省で特許法、民法(契約法)等の改正プロジェクトに従事した経験も。

有馬 瑛里(ありま えり)/パブリックアフェアーズ室 サスティナビリティ担当
東京都環境局を経て、2022年4月マネーフォワード入社。ESG担当として、対外対応の取りまとめや、実際に温暖化ガス排出量の算出なども担当。統合報告書を読み込んでマネーフォワードの価値観に共感し、入社を決めた経緯あり。

 そもそもマネーフォワードは「社会をアップデートしたい」という思いからスタートした会社なので、「ESG」のために事業の中身や姿勢を変える必要はあまりないんですよね。でも、「分かっていること」や「やっていること」と「社外の方にきちんと伝わるようにすること」は全く別物。構造をきれいに整理したり、外に向けて分かりやすく発信したりする努力は全然足りていなかった。また、当然検討できていなかった点もありました。まずその認識を合わせた上で、社内で議論することから始まったんですよね。

石原 当社をよく知ってくださっているユーザーや国内スタートアップ業界の方々からは、「世の中にとっていいことしているよね」と認知いただいているかもしれませんが、例えば海外の投資家に私たちの理念や価値観が伝わっているかというと、決してそうじゃない。真剣に取り組む姿勢を示すためにも、マネーフォワードが取り組む重点テーマ(マテリアリティ)を定めるところから始めました。

結果、まとまったのは「User Forward」「Society Forward」「Talent Foward」という3つの軸です。骨子を定めた上で、各項目においてどんなアクションをしているかの発信を意識的に増やしていったのが、この2年くらいのことですね。

当社コーポレートサイトより

 ESGは、どうしても一般的な言葉になりがちなので、マネーフォワードらしいテーマ設定ってなんだろう、という議論から生まれたこの重点テーマがすごくよかったなと思います。そして、重点テーマを支える土台として、Mission/Vision/Value/Cultureもスッキリと位置付けられた。僕の思考もよりクリアになりました。

石原 3つの軸のうち「User Forward」「Society Forward」については創業当初からあるマネーフォワードのDNAのようなものなので、マネーフォワードらしいサービスの展開や改善を考えていけば持続できることでした。一方で「Talent Foward」、つまり人材の活用や育成については改善の余地があるんじゃないかという課題意識があったんですよね。会社が大きくなるにつれ、メンバーも多様になっていく中で、人の力を最大限に活かす環境を整えられているかというと、まだまだだなと。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)に対する問題意識は、私の後にIRを引き継いでくれた忍岡さんとも共有していました。

忍岡 そうですね。私は4年前に入社して、徐々に経営に近い会議に参加するようになったのですが、「参加者の中で女性は私一人だけ」という状況も少なからずあって。そこで発言を遠慮してしまう自分自身にも葛藤がありました。

先進的な企業と見られることも多い当社で女性幹部登用が遅れるのは不本意ですし、なんとかしたいと思っていたところに、世の中の流れとしてもD&Iが重要視されてきたんです。「自信を持って、できることをとにかくやっていこう」とエンジンがかかりました。

石原 「Talent Forward」の取り組みのポイントは、「働きがい」と「働きやすさ」の2つのアプローチで進めていること。まず「働きがい」の面では、評価制度を刷新して、パフォーマンスが高い人がより高い報酬をもらえる仕組みに変えました

 僕はチャンスはオープンで、評価はフェアである会社を目指したいなとずっと思っていて。めちゃめちゃ成果出しているのに、サボっている同期と3,000円しか給料が変わらなかったら、会社辞めたくなるでしょ?(笑) マネーフォワードは性別や国籍、年齢、学歴といった属性は一切関係なくフェアな評価をしたいんですよ。マネーフォワードiに新卒入社して3年目のベトナム人、Son君がCTOに就任したのも分かりやすい例ですね。

石原 あらためて見渡してみると、マネーフォワードはオープンチャンスな文化がありますよね。私も忍岡さんも未経験からの挑戦ですし。

一同 たしかに!

石原 評価や働きがいは、みんなの納得感が非常に大事なので、上司とメンバー間の1on1をより丁寧にフォローするようになりました。「やり方が分からない」という人向けに練習の機会をつくったり。人事制度は創るだけでなく、それが運用として根付くような施策とセットだと思っています。また、より中長期の人材育成に力を入れていこうとしておりまして、マネジメント育成のための研修「Leadership Forward Program」(以下、LFP)も昨年から始め、今年は60名強が参加しました。

 僕も含めて経営層も総出でLFPに参加しています。本当に優秀ないい人がどんどん入ってきてくれて、組織が拡大してきていますので、チームの力を最大化できるマネジメントの重要性が増しているんですよね。でも、マネジメントについて体系的に学ぶ機会って意外と少ない。石原さんはじめPeople Forward部のメンバーが渾身のプログラムを作ってくれました。

石原 もう一つの「働きやすさ」の面でも、いろんな施策を導入しています。今年から時短勤務にもフレックス制度を導入し、より柔軟に働くオプションが増えました。また、インクルーシブ採用(障がい者採用)メンバーのキャリアアップの仕組みも整えているところです。さらに、男性の子育て参加を促進する法制度変更のタイミングに合わせ、皆が安心して産休育休を取り、それを他のメンバーが適切にサポートできるよう「産休育休ガイドブック」も作りました

当たり前を言語化することが評価につながる

 石原さんと忍岡さんが地道に築いてきたESGの取り組みを外部的にも高く評価いただいたのが、今回のMSCIのA評価だったわけですよね。これに関しては、評価機関対応の表に立ってくれた有馬さんや忍岡さんの苦労話をぜひ聞きたいです。

忍岡 まずは求められていることにしっかり答えることだと思います。傾向と対策をしっかり把握して、着実にスコアを取っていく。すでにA評価を獲得している他社さんにもヒアリングに行って情報を集めて、求められるルールに沿って数値を整えたり、数値がないものに関しては社内の各部門からデータを集めて新たに数値を作ったり。もう最後はゲームみたいに、チームで一丸となって取り組みました。

有馬 評価項目が一つのカテゴリーで100項目くらいあったりして……結構ハードではありましたね。しかも英語で報告しないといけないので、日本と海外との慣習上の違いや、どういう考え方で現行の体制になっているのか説明が不可欠な部分をどう表現したらいいかなど、いろんな工夫が必要でした。

忍岡 しかも有馬さんは入社してすぐの仕事がこれでしたからね。例えば温室効果ガス排出量に関してどの部署に聞けば正確な算出ができるのかも分からない中で、会社中を駆け回って頑張ってくれました。

有馬 おかげで社内に知り合いが増えて、以後のコミュニケーションがとてもスムーズになりました。統合報告書は誰よりも読み込んでいる自信があります(笑)。私は入社前にも統合報告書を読んでいて、そこに書かれていたビジョンに共感して入社を決めた経緯がありまして。今回、社内で情報を集める中で、「書かれていたことは本当だったんだな」と確信できたんです。だからこそ、「しっかりと外部にも評価をいただきたいな」という気持ちで取り組めました。自分で選んだ会社をもっと好きになれました。

忍岡 いいリフレクションの機会になりましたよね。その意味で、結果はもちろん嬉しいですが、それ以上に評価を獲得できるまでのプロセスに意味があった気がします。

有馬さんがそうだったように、統合報告書をきっかけに仲間になってくれる人がいるというのも嬉しいですし、中身に登場してもらったメンバーやクライアントの方々もすごく喜んでくださって。「感動した母からLINEメッセージが届きました」と教えてくれたメンバーも。自分たちにとって当たり前の行動を“誇り”に変えるためにも、発信することは大事なんだなと実感しました

 あの統合報告書はかなり評判が良くてうれしかったですね。「ユーザーをトップページに出しているのがいいね。1ページ目で社長が腕組みして出ていないのがマネーフォワードらしい」と褒められて、「あ、全然意識してなかった」と気づいた社長は僕です(笑)。

石原 とってつけたアピールじゃなくて、社内にとっては当たり前の意識や行動を形にしただけだから、自然に受け入れられるんですよね。だから、「A評価取りました!」という報告をしたときも、それほど浮かれた反応にはならなかったのかなと。

有馬 特に変化がなかったことが、逆に嬉しかったですね。「Aを取るために、あれもこれもやって、頑張って良かった!」とはならなかった。日々取り組んできたことが正当に評価されただけ、という感覚で通常運転を続けられるのが本当に強い組織だと思います

 結果として市場で評価されるなどメリットはもちろん大きいけれど、それが目的ではない。ESG的経営はこの言葉が注目される前からやってきた自負はあるから、いざその発信を強化するぞとなったときに、みんなが協力してくれるのも自然なことなのだろうなと思います。

一方で、“言葉の力”って絶大で、それまでなかった言葉が生まれることで、世の中の流れが加速することがある。「Fintech」や「SaaS」も然り。これからの社会を前に進めるキーワードの一つである「ESG」の流れの一端を担う存在として、これからもやるべきことをやっていきたいですね。

さらにその先の目標を言うならば、ゼロからポジティブを生むことができる存在になっていきたい。新たな言葉が生まれる前から、その事象をつくり、インパクトを証明していける存在に。強力なメンバーが集まり、リーダーを育てる仕組みも今のマネーフォワードなら可能だと信じていますよ。皆さん、よろしくおねがいします! 

これからもよろしくお願いします!


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