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「金利のある世界」を前に、僕たちが備えるべきこと

日銀がついに「マイナス金利」を解除し、17年ぶりに政策金利を値上げへ。今年の春は「桜はまだか」「金利はどうなる」のどちらかの話題で持ちきり(?)でしたね。

僕自身も、社会人になってずっと「金利のない世界」で生きてきたので、これから始まる「金利のある世界」は未知のワンダーランドです。

皆さんの中にも、「これから一体、何が起きるの?」とドキドキしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

日経新聞さんでも、下記のように興味深い特集が組まれていて大変勉強になりました。

そもそも金利が上がると何が起きるのか。

基本的には、政策金利が上がると預金金利が上昇するので銀行にお金を預ける人が増え、一方で、借り入れの利息の金利も上がるので住宅の購入や企業の設備投資が鈍化すると言われています。現に、「住宅ローンの変動金利が上がるのでは?」という不安の声は聞かれました。

ただし、ここまでの政府の動きを鑑みても、金利は上がったとしても長期で1.0%、短期でも0.5%程度までに抑えられるのではないかという予測が現実的。住宅ローンの金利が上がったとしても微増にとどまるはずだとすれば、家計へのダメージは限定的ではないかなあと僕は推測しています。

同様に、銀行の預金金利も劇的に上がるわけではないので、新NISAで加速している「貯蓄から投資へ」の勢いも衰えることなく継続するのではないかとおもいます。

金融機関にとっても、利上げは運用益を増やす効果があるので、お客様から預金を集めるメリットが久々に生まれます。

APIによって多くの金融機関様と連携し、サービスを提供しているマネーフォワードとしても、ユーザー視点での利便性を高める努力を一層進めることで、預金口座の価値を上げる貢献をしていきたいと考えています。

……と僕なりの私見を並べてみると、「辻さんは楽観的過ぎるよ」なんて怒られそうです(笑)。

たしかに、経済はいくつもの変数が絡み合って影響し合うものなので、全部がうまくいくパーフェクトな結果なんてあり得ません。金利の変化だけでなく、為替や物価の変動との関連も俯瞰で注視するマクロの視点が重要になります。

預金金利が上がって、「銀行にお金を預けると、10年後にお金が増える時代」になると、今日預けた1万円の価値は1年後には上がりますが、同時に物価高がそれ以上に進行すると、生活的には苦しくなることになるかもしれません。実質的なお金の価値の見極めは非常に複雑になるわけです(経済は面白いが、難しい!)。

また、ゼロ金利政策のもとで借り入れに依存していた企業は、今後は苦しい経営になるはずですし、結果として、倒産やM&Aも増えるかもしれません。企業は今まで以上に生産性を高くし、筋肉質な経営が求められることは間違いないでしょう。

よりタフな体質へと奮闘する企業の役に立てるよう、僕たちも、バックオフィス向けのクラウドサービスや、ファイナンスサービスなど、ますますサービスを磨いていかなければ!と身が引き締まります。

利上げによる影響の分析や今後の見通しについては、すでに多くの金融の専門家やジャーナリストが言及されているのでそちらに譲るとして、こうした大きな変化を前に僕が大切にしたいのはマインド、心の構えです。

漠然と変化を恐れて「なんとなく怖いから嫌だ」と思ってしまうのではなく、「変化を理解し、変化を楽しむ」というマインドを持つことが重要な気がします。

変化はチャンス。何が起きているのか、これから何が起こるのかを想像し、その変化の中にチャンスの種を見つければ、新しい挑戦への意欲が湧いてきます。

重ねて強調しますが、ポイントは変化を「知って理解、想像」し、「楽しむ」ことかなと思っています。

まず、知って理解するためには、情報を集めて勉強するしかありません。「辻さんは特別な勉強をしているんでしょう?」と聞いていただくことがあるのですが、そんなことはありません。

新聞やネット記事など、誰でも入手可能な情報の中から必死にインプットをして、自分よりもはるかに賢く詳しい方の話に耳を傾けて、なんとか追いつこうとしているのです。

この4月にマネーフォワードでも50人の新入社員の皆さんを迎えることができました。入社式で僕が伝えたのは月並みで恐縮ですが、「日々の勉強が大事」という話でした。「知識と経験は、社会人にとっての武器になる。そして、この武器は勉強し続けないと磨かれない。大人になると、『勉強しなさい』と叱ってくれる人はいなくなるから、自ら貪欲に勉強して、武器を手に入れましょう!」――そんな話をしたばかりです。

ちなみに、僕のおすすめの勉強法の一つは「アウトプットをする」と決めて自分を追い込むこと。

誰かに説明する、発表するなどのアウトプットのゴールを決めると、インプットの吸収力が全然違ってくるのでおすすめです。この「アウトプット先行型インプット」のフォーマットは、高速・高密度な情報収集が欠かせない政治家や経営者など各界のトップリーダーの方々の実践から学んだ手法でもあります。

アウトプットを自分に課すのは、正直しんどい苦行ですし、その日までは憂鬱で仕方ないのですが、本気でインプットするにはこれが一番です。

自分なりに変化の構造を勉強し、理解が進んできたら、「そこにチャンスはないか?」と目を凝らしてみる。すると、なんらかの希望や期待が見えてきます。「楽しむ」マインドが自然と高まるというわけです。

僕の場合、「金利のある世界」について自分なりに情報を集め、解釈をして描けたイメージは「もっとお金がポジティブに動き始める世界になる」というものでした。

日銀が公表している2023年第4四半期の資金循環統計によると、日本国内の家計の金融資産残高は2,141兆円、そのうち現金・預金は、5割を超える1,127兆円。さらに、第一生命経済研究所の試算によると、現金のまま個人所有されている「タンス預金」は、2023年12月時点で約59.4兆円(!)にものぼるそうです。

この眠れる巨額の個人資産が「金利が上がる」というモチベーションによって少しでも銀行預金や投資に回るとしたら(1割でも約6兆円!)、銀行が融資に回す資金も潤沢になり、企業にお金がより回るようになり、経済活性化につながるはずです。

お金は天下の回りもの。もちろん、変化によって起きる痛みはゼロではないかもしれませんが、「じっと動かさないでいるほうが得」と思考や行動を止めてしまう世の中よりも、「もっと動かしていこうぜ!」と前向きに行動する人が増える世の中のほうが、僕は世の中がより前に進んでいくし、好きかなあと思っています。また、そんな世の中を応援できる仕事をしたいと常々思っています。
 
同時に、これからますます加速するであろう個人投資のパワーにも期待です。新NISA制度によって「貯蓄から投資へ」のムードもかなり浸透してきている段階なので、過度に預貯金だけに資産が集中するのではなく、バランスよく投資にもお金が回る循環が生まれるはず。

より多くの人が投資に参加すれば、それだけ多様な価値観や意思が、未来のチャレンジ、価値創造に反映されるということ。すごくいいことだと思うので、マネーフォワードとしても、「はじめての投資」を応援するサービスをどんどん拡充していくつもりです。

社会が前に進むときには、必ず「変化」が起きます。

傍観者や評論家ではなく、変化をプラスに転換する当事者の1人でありたいなと思う今日この頃です。

「金利のある世界」がどうなっていくのか、皆さんとともに勉強していきたいと思います。新年度が始まりました。2024年度もマネーフォワードをどうぞよろしくお願いします!

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