見出し画像

書評 『ミケル・アルテタ アーセナルの革新と挑戦』、チャールズ・ワッツ著、結城康平、山中琢磨訳、2024年、平凡社 前編

ミケル・アルテタのアーセナル監督就任から、2022年〜2023年シーズンまでの出来事と舞台裏を描いた本である。

読者を選ぶ本である。

いきなりであるが、アーセナルのファン(グーナー)や他チームのファンでプレミアリーグをフォローしている方以外は、読んでいても楽しい読書ではないだろう(値段も高い)。

この本の原著者は、アーセナルの番記者である。そのためアーセナルの内部で何が起こっていたのかということは、詳細に書かれている。ただ、10年以上、アーセナルをフォローしていないと、知らない選手が出てくるし、ヴェンゲル時代の選手も多く出てくる。
また、番記者という身分のためか、アーセナルに批判的なことは書かれていない(当然だろう。書くと情報を得られなくなり仕事を失う。)

また、アルテタが主な取材源(勘では90%くらい)であるためだろうか、アルテタの視点、アーセナルの視点のみからしかメディアを騒がせた事件が描かれていない(批判的に描かれている、エジルやオバメヤンに改めて取材を行ったとは読んでいて思えない。)アーセナルのファンなら、楽しいであろうが、著者をジャーナリストと考えるなら、相手側の取材を行うべきである。
そのため、本書は表面的な印象を与え、深みに欠けているように思える。

私は、アーセナル・ファンであるので、1年前、原著("Revolution:The Rise of Arteta's Asenal”)を読んだ。題名に「Revolution(革命)」とあったので非常に楽しみにしていたが、何を指して「革命」と言っているのか全く分からなかあった。そのためかどうか分からないが、翻訳本では題名が「Revolution(革命)」でわなく、「革新と挑戦」に変わっていて、本の内容ぴったりだと思う。訳者の良心を感じる。

また、本書には「アルテタ戦術云々」という話は、ほとんど出てこない。「アルテタ戦術の革新性とか挑戦」という本ではないということも注記しておく。
以上をまとめると、「この本はアーセナル好きには、おすすめであるが、サッカー一般や戦術等を期待して読むと肩透かしをくらう。」それが私の感想である。

ただ、今回改めて読んでみて感じたのは、オーナー・クロエンケ家の存在である。彼らがアーセナルの支配権を100%取ったときが「革命」だったと思う。それについては、本書の批評からはズレるので、後編で書きたいと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?