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書評:『野球IQを磨け!勝利に近づく"観察眼"』飯塚智弘、2004年

本書は、いわゆる「野球のセオリー」が分かる本である。たとえどのレベルであろうと、野球選手にはマストな本である。私は少年野球をやっていたので、コーチから色々教わったことを思い出した。

また、野球コーチには、コーチングの仕方が変わる本であろう。
野球を観戦される方にもお薦めである。
「野球あるある」を頭に詰め、野球観戦に行こう。何かつぶやけば、賢人と思われるかも。

ただし、本を読みながら、書かれていることを視覚化できない方には、厳しい読書となる。なぜなら、図やイラストが入っていないため、脳内で視覚化しなけらばならないからだ。最近、サッカー選手が、プレーを「言語化」するという言葉を使うが、その逆を行わなければならない。

本書では、「野球あるある」として、試合でよくある「状況」があげられ、その状況下で、「やるべきこと」と「やってはいけない」が解説されている。筆者によれば、つまるところ野球は、「やるべきこと」と「やってはいけない」ことのシーソーゲームらしい。

例えば、「フルカウントからワンバウンドを振ってしまう」「代打で出た選手が見逃し三振をする」という「野球あるある」にピンときた方は、興味深読めるであろう。

私のように、多くのスポーツを横断的に考察しているものにとっては、「名将」とは何か?あらためて、考える機会になった。私が考える名将の共通点は、以下である。

①プロセス(準備)を徹底する。結果にはこだわらない。
②ディテール(細部)にこだわる。
③試合で起こることを予知できる。

①は、筆者も書いている通り、結果には「運」が作用するからである。これは、誰もが考えることであろう。しかし、名将はここからが違う。「運」が作用するその瞬間まで、プロセスを準備(練習)する。

それは、②にもつながる。プロセスを微分して行けば、ディテール(細部)が算出できる。筆者も、書いているが、「ビデオ」、「統計」等を生かして、自らの脳内で何百回と試合をシュミレーションするのである。これは、将棋指しの「読み」に似た思考法である。

そのことから、③試合で起こることを予知し、それを練習に落とし込むのだ。これが、「野球あるある」と筆者が読んでいるものである。

例えば、サッカー界で名将と言えば、誰もがマンチェスターシティのペップ・グアルディオラを挙げるだろう。『ペップの狂気』という本に書かれているが、彼の「練習」は、全て理由があり、全て次の試合の状況を想定している。

そして、一番驚くのは、それが実際の試合で必ず起こるということだ。

これは、故オシム監督にも言えることだ。オシム監督は、ヨーロッパのサッカーの試合を生中継で観ていたことは良く知られている。

彼は、例えばチャンピオンズ・リーグの試合があった次の日に、練習を変更することが間々あったらしい。「昨日の試合を観ていたら、次の試合でこういうことが起こると想定されるので、この練習をする」というのである。

また、予知することで、監督は「カリスマ」性を帯びるようになる。古今東西、手短なところでいえば、「占い師」のように。そのことにより、監督への「求心力」が高まり、監督は選手をコーチしやすくなる。選手が話を聞くのだ。

以上が、本書の雑感だ。名将とは何かについては、現在、『恩塚メソッド』という本を読んでいるので、また書評を書きたい。



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