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五輪とカルテルあるいは、「ギャング団」、大ボスと小ボスと縄張りー「お金」と「五輪」②

「五輪」と「カルテル」ということで、まずは、その構造について説明しよう。

IOC(国際オリンピック協会)が売っている商品は、何か、もちろん「試合(ゲーム)」である。そして、そのゲームを作り出しているのは誰か?もちろん、「選手(プレーヤー)」である。このことについては、前回の記事で書いた。

そこで、五輪の「カルテル」構造を分析するのに、次に、導入しなければならないのが、NOC(Nationai Olympic Comitee 国別オリンピック協会)である。例えば、日本ではJOC(日本オリンピック協会)がこれにあたる。

ここで、一つ問わなければならないのが、選手はどのような「身分」でオリンピックに参加しているのか、ということである。オリンピック憲章では、NOC(日本ではJOC)が選手を選び、IOCに申請し、IOCが承認する。そして、NCの一員としてオリンピックに参加するのだ。

ということは、実質的に考えれば、NOC(国別オリンピック協会)の労働者として、オリンピックに参加していることになる(ここで、実質的と言ったのは、実際個々の契約がどのようになっているか、分からないからである。)

さて、準備が整ったので、「カルテル」について説明する。ここで考えなければならないのは、誰と誰がカルテルを結んでいるか、である。

結論から言おう、オリンピックに参加する「NOC」達が、カルテルを結んでいるのである。

それでは、大ボスIOCは何をしているのだろうか。オリンピック憲章では、IOCは国に「NOC」を作れと言っている。つまり、「NOC」からの「派遣選手」しか、承認しないという形で、間接的に「NOC」を作らせているのである。

これは、ギャングの世界を考えてほしい。まずは、大ボス(IOC)がいて、その下に各縄張り(国)がある。小ボス(N
OC
)がこの縄張りを統治させてください、とお伺いをたてる。そしたら、大ボスがそれを承認するのである。その逆もあるが。

本来ならば、各縄張りごとに競争が起こるはずなのでなるが、大ボスがいることで、小ボスは各縄張りを守るのである。

話をオリンピックに戻すと、例えば、JOCと中国オリンピック協会が争っていたとする。ここでは、卓球を例に取ろう。現在の卓球世界ランキングでは、男女とも1位~4位は、中国人選手である。

それに対して、日本から派遣される早田ひなは5位、平野美宇は13位である。

さて、もし中国が4人の選手を派遣できたらどうであろうか。もちろん、世界ランキング通り1位~4位の選手が派遣されるであろう。番狂わせは、スポーツ界では起こることであろうが、かなりの確率で中国が金から銅メダルまで独占することが考えられる。

しかし、大ボスIOCが、各国のオリンピック協会から派遣される、シングルの選手は、2人までという協定を決めている。つまりは、2人までしか承認しないということである。この協定は、オリンピックに参加する限りNOCは従わなければならない。

さて、私がここで先取りしている議論がある、すなわちオリンピックは、世界最高の選手が集まり、その実力を決する大会である、ということである。そうであって欲しいと思うなら、IOCは世界ランキングに従わない不合理な協定を押し付けていることになる。

しかし、「オリンピック憲章」を読む限り、そのようなことは、一字も書かれていない。
よく言われるように、「平和の祭典」(書かれている)である、と考えるならば、一国からの選手数の制限は理に適っているであろう。

さて、「カルテル」かどうかを判断するのに、一番問題となるのが、「公共の利益」である。

世界最高の選手が集まり、その実力を決する大会であることが、オリンピックの「公共に対する利益」であるという立場に立つならば、我々は、世界最高の選手同士の「ゲーム」を観られないので、「公共の利益」が害され、「カルテル」性を検討しなければならない。

しかし、オリンピックが「平和の祭典」だと考えれば、一国からの選手数制限は、合理的で、その「カルテル」性は疑われないだろう。

それでは、このNOCたちは、なぜこの「カルテル」に納得しているのか、その経済的利得は、なぜカルテル破りは出てこないのか、ということは、次回書きたい。

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