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珍妙な絵師

 奇抜で奇怪な浮世絵を描く鬼才絵師がいるってんで、此処大江戸。
 下町の一世を風靡しているこの噂。  
それがまぁどんなものか気になりゃあせんって言えば嘘になる次第で、一度心向くまま気の向くままってな言葉もある通りにその浮世絵を見て回ったんですぜ、アタイはね。  

 するとどうだい、いやどうしたってんだい。絵が特別綺麗ってわけじゃあないんでさ。描かれているものがね?
 まぁ珍妙にして絶妙、奇奇に怪怪なものばかりなんでさ。
 まぁまぁ何を言ってるかわかんねぇっていうのもわかりやす。アタイもそうだったんですから、見るまでは。

 1つは反物屋の帳場で子供がチャンバラをしてる絵なんですがね?  そのチャンバラに使ってるのがまぁ見たこともない持ち手から上の刀身が光る棒ってんだからこれまたおかしな話なんです。

 1人の童は黄緑の、片やの童は桃色の光る棒を持って振るんですがね?そこに描かれている振った時の音ってやつですかね、それが、文字として書いてあるじゃないですか。

 それがブゥゥゥンなんて言葉が絵に書かれてあるもんですからこれを珍妙と言わずしてなんになるですかい。アタイはね、びっくりしてその浮世絵師の家をまぁ探し出して珍妙な絵を描く奇妙な絵師の面を一眼眼前に捉えようと思いましてね?見に行ったんでさ。

 扉をですよ?こう勢いよくガラガラっと開けて。

 「やい!珍妙な絵師め!なだてがましいおめぇさんのツラを拝みにきた!」  

 すると真っ黄色の髪を揺らして変な言葉で言うんです。

 「うわぁダルいなぁ、だから言ったんだ北斎先生。時代を入れ替えるのは良くないって」。

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