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不審者(夜勤バイト)

夜になったら別人格でも目覚めるのでしょうか?

夜勤バイトでは普段よりも、変な人、傍若無人な人と遭遇する率が跳ね上がるような気がします。

それにはいくつかのパターンがある・・という仮説を僕は持っているのですが、先日の5円割引適用不可でブチ切れた左寄りの三人組などはその代表例で、遭遇率が最も高いですが、今回は深入りしないでおきます。

同業の友人によると、最も御しがたく、最も厄介なのは若い女子のヤンキー集団だそうですが、僕が今回遭遇した件は、彼によれば「普通」「大したことない」ということです。

実際そうかもしれません。

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そうじゃのう・・。あれは、先日の少し寒い、夜の11時過ぎのことじゃった。

言い方普通に戻します。

爆音と共に、金髪・半ヘルの若者たちが、5分から10分くらいの時間差で数台ずつ、ガソリンスタンドに入って来ました。最終的に10数台になったので、待ち合わせ場所にでもしていたのでしょう。

いつものように、「営業妨害や」「死ねば良いのに」などと思いつつ、これもいつものように、溜まり場にされないよう、外から僕の姿が見えやすいようわざわざ椅子から立って、スマホをポチポチしておりました。

先日読み終えたアメリカの財産法の本やったかな。めっちゃ面白いところだったので、良い感じに「死ねば良いのに」という毒は抜け、まるで穏やかな晴れの日にそよぐ大木かなにかのように、仏のように、僕は本の内容に集中していました。

3人寄れば文殊の知恵と言いますが、若者が10人つるめば、これはこれでまた、別の人外な雰囲気が出て来ます。

8個並んでいる給油器の間を結構なスピードで走る奴やら、大声で喋る奴やら、色々出て来ます。でも僕は、仏モードなので、大して腹は立ちません。(暴走行為はさすがに酷いのであと一回やったらオイコラと声掛けるつもりでしたが、すぐ止みました。)

まもなく、一人の青年が店舗内に入ってきました。割引券の使い方を聞いて来ましたので、仏モードで、昼勤時に常連のおばちゃんにスマホの操作を教えるときと変わりなく、親切に教えてあげました。

使い方が分からなかったらそっち行くでくらいなつもりで。本当に仏ですね。さっきまで死ねば良いのにと思ってましたが、まあ、通常運転です。もう一人別の青年が入って来ました。トイレを借りに来たので、これもどうぞどうぞと。

トイレは酷い使い方のお客さんも結構いるので、あとでチェックしましたが、小便器の足元に毟った陰毛が散乱していることもなく、大便器に流れなかったブツが棲息していることも、手洗い場に水溜まりのように水が散っていることもなく、きれいな使い方でした。

さらに心が穏やかになりました。

しかし、外はガヤガヤしています。

それから5分ほど経った頃、ガシャン!と大きな音がして、はやし立てるような声が聞こえました。一人、中型バイクの若者が転倒していました。ちょっとイラっと来ました。

彼らが集まり出してから10分くらい経ったかな。ずっと黙認してると思われたら嫌なので、あと10分経って帰らなかったら、一言声を掛けて帰ってもらおうと思い、じっとりとした目で外を見ました。彼らのうちの数人と目が合いました。

でも読んでいる本が面白いところだったので、また本の内容に戻るべく視線を落とし、スマホをポチポチ。あと5分で声掛けるかあ、ともチラッと思いながら。

外の彼らが僕の存在を少し意識しているのは分かったので、まあ、あと数回プレッシャーを掛ければどっか行くやろうと気楽に構えていました。あと、スマホポチポチ、警察に通報しているように見えるかも知れん。可哀想だがもっとビビらせてやろ。ポチポチッ。で、また数分経過。

本の内容を反芻しつつ、ほんま良い本やなあ・・と思いながら、外を見るとまた若者の何人かと目が合う。プレッシャーが効いているのが分かったので内心ホッとしつつ、またスマホをポチポチ。どうだ、怖いだろう。ふふふ。

その3分後ぐらいに、彼らは帰って行きました。

良かった。

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で、後で、忘れていた頃に、以上のことを思い出していてハッとしました。

彼らに僕はどう見えていたのだろう? 中学生の頃、放課後に教室等で友人とダラダラしているときに、早く帰れと声を掛けて来たり、厳しくは言わないけど、10分ごとくらいにうろうろ見回りに来て、いつまでおるん?と声を掛けて来たりした先生のことを思い出しました。

うっとうしいなあ・・という軽めにイラっとした記憶が蘇って来ました。

あ、あのときの先生らと同じことしてる・・。

頭ごなしに怒るでもないけど、うろうろ、はよ帰れと、じっとりとプレッシャーを掛けて来る感じ。同じことを僕もしてたんだなあと思わされた瞬間でした。

「なんだあいつは」

「絶対怒ってるで」

などと、さぞ不審に思われていたことでしょう。

少し申し訳ない気持ちになりました。

まあ・・次来たときも同じことしますけど。

不審者は「僕」というお話でした。おわり。

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