宇宙エラー4【統合失調症 小説】
episode04
どれくらいの期間そこにいたかは分からない。よしえは何処にあるか分からないそんなカッパの世界にいた。宇宙エラーそれは、居場所を失ったエピソードの主人公達がたどり着く場所。宇宙エラーが様々な場所で起こっている。
ジーンの優しさに心が癒やされたよしえは、彼女のように何かしたいと考えるようになる。自分にできることは何か?考えたがこれといった特技のない平凡なよしえ。やっぱり私は何もできない。よしえはそんな自分に飽き飽きしていた。
何かできることはないか?そう考えた。そう考えているうちによしえはこの村の人々が文字を持たないことに気がつく。話し言葉しか持たない彼らは、コミュニケーションを口頭で行っていた。よしえは文字を教えることにした。ローマ字を教えよう。よしえはそう思った。ローマ字なら口語体で表現できる。
この村の人々が使う言葉の母音は日本語と同じ五文字で、子音もアルファベットで十分表現できる範囲だった。
アルファベットを教えていくよしえ。村の人々は文字を気に入ってくれた。それからよしえは文字を使って日記を書いた。ジーンに教えてもらった薬草のことや、カッパ達の食文化、遊び、娯楽など日々の出来事を色々と綴った。そしてよしえはそれらの記録を村の長老にプレゼントした。
その日記を見て長老はとても喜び、感謝された。その経験は、よしえに大きな成長と達成感を与えた。よしえの顔つきと体が少し変化した。幼い少女から大人の女性へと変化したのである。カッパとの関わりを通して成長したよしえの心が姿形となって現れたのである。
それからよしえは、自分の経験をもとに詞や小説を書いた。
ガジュマルのうた
ガジュマルに昇る太陽で目が覚めて、
ガジュマルに沈む太陽で眠りにつく。
ガジュマルの太陽の傾きで時間を測り、
ガジュマルの木の木陰で休憩をとる。
大樹の下で心安らぐ心
木の葉がささやく自然の調べ
風が吹き抜ける木漏れ日
ガジュマルの木陰、私の隠れ家
季節が移ろい、葉も色づく
ガジュマルの姿、いつも変わらず
大地に根を張り、風雨に耐え
生命の息吹を感じる場所
自分の役目を見つけたよしえは充足していた。地球の人生では、味わうことのなかった充足感によしえは喜びを覚えていった。
よしえは彷徨っていた。彷徨って行き着ついた場所そこにはよしえなりの未来が待っていた。よしえは宇宙エラーが起きてこの世界にたどり着いた。地球のストーリーから外れてしまったよしえはこの世界へ導かれた。どんな人にもどんな状況でも未来がある。私達の想像力が尽きる限り。そう信じたい。
↑挿絵を描いてくれた人↑
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