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僕の音楽体験 Vol.7 クインシー・ジョーンズ 愛のコリーダ

僕の音楽体験 Vol.7 クインシー・ジョーンズ 愛のコリーダ

すっかり歌のないインストルメンタルの音楽、いわゆるクロスオーバー、のちにフュージョンと呼ばれる音楽に夢中になっていった高校生の頃ですが、またまた転機が訪れました。1980年代はじめの頃の話です。

高校2年生の時に3年生の先輩のバンドに混じって文化祭に出させていただくという、なんとなく文化祭的「飛び級」をすることになって有頂天になっていた頃。そのバンドも基本的にはラリー・カールトンやリー・リトナーなどを演奏するクロスオーバー的なバンドだったわけですが、バンドのキーボーディストのコウイチロウさん(のちにScoop On Somebodyで活躍する)のアイデアで、クインシージョーンズの「愛のコリーダ」を演奏しようということになり法案は可決。
「ええ!何それ!歌あるやん!」
と心の中で叫びましたが、先輩の中に混じって出演させてもらうだけで光栄な事だったので受け入れるしか無かった自分でした。
(ロックからフージョンなどに転向したものにありがちな「歌」が入っていると軟弱という病に一度はかかる)
コウイチロウさんから「スティービー・ワンダー、知ってるか?」
と聞かれたので「名前くらいは。でも聞いたことありません」
と答えると「キー・オブ・ライフ、貸したるわ」
と二枚組プラスシングルというなんとも奇妙なアルバムを貸していただきました。
それまでどちらかというとロックバンドとフージョン、クロスオーバー中心に聞いてきたので踏み入れたことのない世界。当時は「ブラック・コンテンポラリー」という名前で呼ばれていたジャンルです。(通称ブラコン)
とにかく情報のない時代だったのでラジオとテレビ、そして音楽雑誌、楽器屋が全ての情報源でしたが、ここに先輩、という新しいメディアが加わることになりました。
初めて聞くスティービー。
レコード(!)に針を落として流れてきた、脂多めの声のコーラス!明らかに今まで聞いてきた音楽と違う!なんだこれは!そしてロックバンドではあまり聞いたことのない楽器の音色の数々。いや、フュージョンでは聞いたことあるぞ。
聞き進んでいくうちに、あれ、なんだ、この粘りのある、うねりのある、だけど細かいリズム。ロックとは違うバネの利いた思わず踊りだしたくなるリズム。すっかり虜になってしまいました。
そして、フュージョンで聞いているあのリズムはここから来ていることに気づいたのです。
そうか!フュージョンに歌を乗せたらブラコンなのだ!
完全に逆ですが。

すっかり、そのアルバムに夢中になり、毎日聴きまくっている日々。
もっと、いろいろなものが聞きたい。

でも高校生でお金もないし、そんなに先輩からレコードを借りるわけにもいかない。

そんな高校生に強い味方が現れました。
そう「貸しレコード屋」です。レンタルレコード屋とも呼んでました。

当時、すごい勢いで伸びていた貸しレコード屋ですが、著作権問題などはグレーのままで、レコードの売り上げが落ちるなど、アーティストや制作サイドからからも反対意見が多かったようです。

しかし、お金のない高校生にとっては200円ぐらいで一枚借りれるのはありがたい。聞いてみたいがレコードを沢山買う資金がない自分には「これしかない」というものでした。当然、借りたものはカセットにダビングです。これも物議を醸し出した要因ですが。

難点はブラックコンテンポラリーのコレクションが大手の貸レコード屋チェーンにはあまりないということです。大概は有名どころが少しだけ。先輩とコレクションが豊富にあるところを探す旅に出ることに。

ついに見つけました「レイコウ堂」というむしろマニアが喜ぶコレクションが豊富に揃っているレンタルレコード屋さん。確かレイコウに当て字で漢字だったと思うのですが思い出せません。麗がレイで、コウは何だっけなあ。

もう、狂ったように借りまくりました。
当時、アルバイトもしていたのですが、ちょうどギターの古川昌義さんの紹介で少しずつ、音楽の仕事を回してもらえるようになり、スタジオ系の仕事も則竹君と一緒に呼んでもらえるようになっていました。
なので少し資金があったので、それこそ、そのレンタルレコード屋にあるブラックコンテンポラリーのレコードは全部借りたのでは?というぐらい借りまくりました。マービン・ゲイ、ダイアナ・ロス、ライオネル・リッチー、マイケルジャクソン、グラディス・ナイト。

その中でやはり心を惹かれたのはクインシー・ジョーンズ。
そう、「愛のコリーダ」の人です。
クインシー・ジョーンズがどういう人かなど、詳しいことはわかりませんでしたが、彼の名前があるレコードはどれも独特のサウンドとクロスオーバーに近い演奏が自分の心にフィットしました。
これは文化祭でやるしかない!先輩!あなたは正しい!

ということで急遽、先輩のボーカリストAYAさんに参加していただきこの曲「愛のコリーダ」をやることになりました。
嬉しいことにベースはルイスジョンソンというチョッパーベース(!)の大御所のものが弾けることに。レンタルレコードでブラザースジョンソンも聴きまくってたので嬉しい選択です。途中でチョッパーベースのソロまであるという痺れる曲なのです。ちなみにチョッパーとは今でいうスラップのことで日本でしか通じないということを後で知るのですが。

この後、ブラコン(省略形)を聴きまくって歌のあるのもいいなあ、と改心したことがその後のジャンルにこだわらない心を育んでくれたのかもしれません。ありがとう、クインシー。そして先輩!

文化祭当日は視聴覚室がディスコに、そして選ばれた1バンドだけが、後夜祭そして行われる野外で演奏できるバンドに選ばれて、運動場に響く「愛のコリーダ」。そして盛り上がる全校生徒達の前でのチョッパーベースソロ!
僕のチョッパー人生はこれがピークだったかも。いい時代だったなあ。

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