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絵本を作るときに考える「絵本の役割」| 絵本作りノート No.004

こんにちは。
手作り絵本作家のまえだよしゆきです。

私は10年ほど、小さい子どもに向けた絵本を作ってきました。
「箱」や「野菜」といった日常に身近なもの、「お寿司」や「畳」といった日本の文化、はたまた「角度」の存在を感じてもらうという知育要素が入ったものまで、扱ってきたテーマはいろいろでした。
ただ、どんな絵本を作るときも、常に大切にしていることがいくつかあります。
その一つが「絵本の役割」を考えることです。

今回は私が絵本を作っているときに考えている絵本の役割について、言葉にしました。よろしかったらご覧ください。

絵本の役割を大切にする意味

これまで作ってきた絵本の一部

「絵本は何のために存在するか?」
絵本を夢中になって作っていると、「絵本の役割」についての答えを見失いがちになります。
答えは人それぞれでよいのですが、その答えを見失ってしまうと、自己表現に終始してしまったり、伝えたいことが整理できず、誰のためのものでもない絵本ではない何かが生まれてしまいます。
絵本を作る上で私は、「人のためになってほしい」と願います。
なので、次から挙げる3つの答えを私は大切にしています。


「絵本は、人と人を繋げるもの」

人と人の間にある絵本

絵本は一人で読むだけでなく、複数人で同時に読むこともあります。
友だち同士でページをめくりながら「きゃっきゃ、きゃっきゃ」と楽しむ様子は微笑ましいですね。
また、大人や年上の子が文章を読んで、子どもに読み聞かせる様子も絵本ならではの光景です。

誰かが読み手になり、誰かが受け手になる。その間にある絵本は「人と人を繋げる」存在です。その関係性が繋ぎ止められるように、絵本作りにおいては工夫を施す必要があります。読み手が声に出しやすいような文章にしたり、絵が見やすいように本の大きさを大きくする、または、本を持つときにどこに手が入るかを考えて絵作りをするなど、読む人や読む場面を意識することで、より長く読んでもらえる絵本になると思います。


「絵本は、人の心を動かすもの」

絵本を読んで気持ちが動く

絵本は空気や食べ物と違い、生きていくために必要不可欠なものではありません。絵本はなくてもいい存在だということは、作り手として心に留めておく必要があります。ただ、なくてもいい存在のままでいい、ということではなく、読む人にとって絵本は「あるほうがいい存在」に変えることを意識するためです。

「あるほうがいい存在」というのは、決して大袈裟なことを考える必要はなく、「ふと笑みが溢れた」とか「少し寂しい気持ちになった」とか、心を動かす瞬間が少しでも作れれば十分だと思います。意識しつつも気負わずに、そんな感覚です。
理想としては、その心が動いた瞬間を生涯忘れずに、心の支えとなってその後の人生を歩んでくれるような絵本になったら、万々歳ですね。


「絵本は、新しい気づきを与えるもの」

絵本で広がる世界

絵本の中は、何でも見せることができる自由な世界です。
楽しいことや悲しいこと、現実にはありえないことなど、いろいろな世界が表現できます。
その世界で得たものが、日常にも持ち帰ることができたら、より絵本の存在は読む人にとって、大切なものになると思っています。
日常に持ち帰ってもらうものとして、私は「物事の見方が変わる気づき」が、絵本の中に含められるようにしています。

「さんかく おさかな かくれんぼ」の表紙
表紙のお魚さんで遊ぶ絵本

例えば、「さんかく おさかな かくれんぼ」は、表紙についているお魚さんがどこに隠れられるかを見つけて遊ぶ絵本なのですが、「角度への気づき」がテーマになっています。「物の種類は違うけど、重ねたらピッタリだ!」という絵本の中での気づきは、身の回りの物を見る視点が変わることに繋がります。

お魚さんがピッタリはまるところはどこかな?
フォークの真ん中だ!

感覚の世界が広げられる大切な子どもの時期に、どんどん新しい気づきを体験させる。絵本もその役割が担えるものだと思います。


最後に

「絵本の役割」について言葉にしましたが、これは今の私の考える答えですし、答えは常に更新されていくものです。ただ、大切なのはどんな答えでも、自分の中で求め続け、持ち続けている状態であることが、作り手には必要だと感じています。

まだまだ精進する身ですが、またこの自分の言葉が達成できるように、日々過ごしていきます。


このノートについて

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