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「先入観」を疑おう。という話。

前回までの振り返り

デザインという行為は「情報の再構築活動」なんです。
無限にあるパズルのピースを組み合わせるようなイメージ。よって答えも無限にあるし、そのパズルのピースを自作してしまっても構わない。組み合わせ方も自由。「情報」がそのピースの素材であることは間違いなく、うまく噛み合っていないと良いまとまりは生まれないと考えています。

この難解なパズルのピースのような「情報」について、「使う人・選ぶ人」「競合との差」「会社の強み」「制約条件」「一緒に作る人」にわけて書いてきましたが、今回は「先入観を疑う」ことの大切さの話をしたいと思います。

「情報」は特に「足かせ」にもなる

実際のプロダクトデザインの仕事に取り掛かる時、ライバルとの差を明確にする必要があることから、「どんな商品があるんだろう?」と、必ず既存商品をリサーチすることになりますね。ネットのおかげで国内外を含めて、かなりのライバル候補を見つけることができますが、せっかく集めた「情報」が仇になることがあります。
「すでにデザイン出尽くしてるな」とか「これより良いデザインなんて出来ないと思います」と諦めモードになってしまったりもします。特にデザイン初心者には既存商品に対する知識が一番大きな足かせであるといっても良いかも知れません。

「あたりまえ」を見つけよう

そんな時は集めた「類似品の情報」を見渡して、それらの共通点=「あたりまえ」見つけましょう。そして「本当にこうでないといけないのか?」と業界全体の「あたりまえ=先入観を疑う」ことをオススメします。そうすると今までの類似品の中でもがき苦しむことから解放され、全く新しい世界が見えてきます。

ホワイトボードイレーザー → フェルト ???

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こちらの商品は弊社オリジナルブランドSOGUBLACK BAR ERASERです。ジャンルとしてはホワイトボード用のイレーザー。この商品の特徴は「毛玉ができない」「最初から真っ黒」ということから、汚れた姿になっていかないということです。

このことを皆さんに説明をすると「あれ?どういう素材なんですか?」と聞かれることがほとんどで、「ビーチサンダルのソールに使われている素材です。指でも消せるくらいですから、これでも十分ですよね。」と説明をすると「そうか。なんでフェルトばっかりだったんだろう?」と頭をかしげられます。

そう。ホワイトボードのイレーザーの既存商品をみると「フェルトで消す」ものばかりなんです。これがこのジャンルの先入観です。そして、その先入観を守って何十、何百?ものプロダクトのバリエーションが世の中にありますね。

ここで「先入観を疑う」と色んなことが見えてきます。
・どうして汚れていく姿を見たいかのように白いフェルトなんだ?
・どうして汚れを溜め込んでいってるんだ?
・どうしてこんな樹脂カバーがいるんだ?
などなど
そしてホワイトボードマーカーが消せる原理の「情報」を調べることで、気づくことが出来ます。「そうか!ボードに付いている顔料を剥がす道具なんだ。」と。

「デザイン」を考える前に「手段・目的」まで立ち返る

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こういった思考から「真っ黒のEVAにマグネットシートを貼り付けた」だけの羊羹のようなホワイトボードイレーザーが生まれました。もちろん、前回までに投稿してきたように全員に好かれるデザインにはなり得ません。フェルトの方が摩擦が少ないので、大きな面を一気に消すにはフェルトの方が適していると思います。でも、ある一定数このBLACK BAR ERASERがぴったりのシーンやユーザーがいると確信して商品化し販売を続けているんです。

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今回のまとめ

全く新しいジャンルのプロダクト商品なんて、そうそう生まれることはない時代。新商品の開発を始める時点で、同ジャンルに多くのライバル商品があります。そういった中でデザイナーに求められるのは次の3つのパターンかなと思います。
 1:ライバルより「素敵に見える」デザイン
 2:ライバルより「使いやすい」デザイン
 3:ライバルがいない「今までにない」デザイン

今回の投稿の「先入観を疑う」手法は、3番のパターンの時のみに発揮される方法ですので、他のパターンの時には使わないでくださいね。特に2番が求められている場合は「先人の知恵」として、類似商品や参考商品から導き出されたあたりまえ=「制約条件」を徹底的に活用することをお勧めします。



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