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そうだ。仲間に頼ろう。という話。

前回までの振り返り

デザインという行為は「情報の再構築活動」なんです。
無限にあるパズルのピースを組み合わせるようなイメージ。よって答えも無限にあるし、そのパズルのピースを自作してしまっても構わない。組み合わせ方も自由。「情報」がそのピースの素材であることは間違いなく、うまく噛み合っていないと良いまとまりは生まれないと考えています。

この難解なパズルのピースのような「情報」について、「使う人・選ぶ人」「競合との差」「会社の強み」「制約条件」にわけて書いてきましたが、今回は「一緒に作る人」の大切さの話をしたいと思います。正確には「情報」の話ではありませんが、ちょっとばかり寄り道を。

「情報」<「知識」<「知恵」<「人」

インターネットの恩恵で、いろんな「情報」が検索できるようになりました。私もかなりネット検索に頼っています。今日なんて、お世話になっている卸先さんの社長が「ダンモ?ってなんだ?」という投稿があり、早速Google検索。結果、かなり前に「モダンジャズ」のことを「ダンモ」と呼んでいたことが判明(笑)。本当にすごい時代ですね。世界中の「情報」をつなぎ合わせるWWWを提唱者してくれたティム・バーナーズ=リーさんに感謝。

こういった「情報」って、何かの役になっていますか?と言われると、その「単体の情報」は何の役にも立たないものですよね。人は何か課題を与えられたとき、何かの自分に蓄積された情報の塊=「知識」を基本としてしか物事を考えることしかできません。その課題をクリアするためのパズルのピースが足りないときに「情報」を検索し、ちょうど補完できた時に「ヘウレーカ!(わかった!)」と思えるものなのです。

たくさんの「知識」があって悪いことはないのですが、「知識」があったらなんでもできるかというとそうでもありません。「織田信長が何月何日に何を食べた」など、日本史の細かなことまで熟知していたとて、目の前にいる些細な課題をクリアできるわけではない。頑張って獲得した「知識」であっても、それぞれの特定の場でしか役に立たないのです。

では「知恵」はどうでしょうか?「知恵」は何かの課題をクリアするための「知識」の組み合わせとも言えるもの。記憶していないと使えないので「情報」の組みわせではありません。例えば「無人島で火をおこす知恵」といった感じです。あ、やっぱり頑張って獲得した「知恵」も、それぞれの特定の場でしか役に立たない。。。

そう、勉強しても勉強してもキリがないのです。
さて、よいデザイナーになるにはどうすればよいものか。。。

そうだ。仲間に頼ろう!

「知恵」を持っているのは「人」です。世界中に「情報」はあふれていますが、それを解読し理解できるよう加工にしているのも結局は「人」。
何か自分だけでは難しい課題にぶつかったときには「その分野に対してたくさんの知恵を持っている人」に頼るのが一番です。その人に自分の悩みという「情報」を与えると、たちまち解決してくれることがあるというお話をしたいと思います。

リデザインの苦悩の始まり

こちらの写真は弊社オリジナル商品の先駆けレザーレースハンガー(左)と、その3年後の発売した弊社オリジナルブランドSOGUFORMLESS HANGER(右)。この2つの商品はおおよそ共通の構造を持っています。

このレザーレースハンガーはミラノサローネの一角で発表していたこともあったからか、さまざまなメディアで取り上げられ(なんとニューヨークタイムス日本版まで!)、弊社の名刺がわりのようなプロダクトになってくれました。しかしながら、この商品はその名の通り革紐を使っているので濡れた衣服をかけてしまうと染料が移ってしまう可能性があります。革紐と木の組み合わせが好きなプロダクトですが、この注意説明なしに販売したく無いという気持ちと、納得のいく革紐(イタリア製)の安定調達が難しいので、いつかリデザインしようと2年ほど様々な素材で試作を繰り返していたのです。

たかがゴム、されどゴム

いくつか試していた素材の中には、もちろんゴム系の素材がありました。これなら一般的に販売されているコードで、安価で継続的に入手できるだろうと考えていたのが大間違い。様々な入手先を探索しても、黒く白い粉がついたようなものか、硬いもの、乳白色ですぐに切れるようなものしか見当たらず、なかなか素敵なコードを発見できない日々。
そのまま製品にしなくとも試作はしてみようと、黒いゴムコードを取り寄せて使いつづけてみると、壁に色が移るなんて事も発生したり、そもそもパイプとゴムの接続方法が見つからなかったりと、苦難の時は続きました。

もう自分たちでは無理だなと、ゴム成形を生業とした友人に相談を持ちかけると、「○○素材は時間が経つとネバネバしてくるよ」とか「○○という素材は○○で」などなど、流石にいろんな「知識」を教えていただけます。「いや〜、本当に奥が深い。たかがゴム、されどゴム」という感じでした。

「何にもしていないように見せる」ための「多くの知恵」

たくさんの「情報」を「知識」として蓄え、「知恵」として活用できるその友人に、更なる「情報」としてこちらの達成したい事を伝えることで、彼の頭の中でこのコードはSOGUのために「デザインされました」。

オリジナル金型・オリジナル配合・オリジナル色・コーティング加工付きというシロモノのコードになり、当初の目論見のように安価にはできなかったのですが「真似できそうに見えて、真似しにくいモノ」にはできたと考えています。

今回のまとめ

前回までデザインに必要な素材である「情報」について、「使う人・選ぶ人」「競合との差」「会社の強み」「制約条件」ついて書いてきましたが、今回は「有用な情報を持っているのは人だよ」という話に行き着いたように思います。なんといっても「餅は餅屋」ですね。自分だけでクリアできそうにないデザインのパズルに出くわしてしまったら、それをクリアするためのピースをもった「人」に助けを求めましょう!

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