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大工を見てると、将来の木工の姿が見えてくる

新築中の建物を建てる中で、大工というものが想像していたものとだいぶ変わっていることに気づいた。

今から20年ほど前に自宅を建ててもらった大工は、全て手刻みだった。その当時でも少なくなっていたので、今思うと仕事を依頼できて本当に良かったと思う。室内を見回すと、至る所にコミセンと呼ばれる、ホゾを抜けないようにするための部材が顔を覗かせている。その部材の角は鉋か鑿で綺麗に削ってある。長さが微妙に違うのは、手仕事を感じさせ愛嬌さえ感じる。

建前も壮観だった。土台に立つ柱のホゾがきちんと効かせてあるので、柱から建ててしまうと横に入れる梁が入らない。だから、全ての柱のホゾを土台に落とすのは一番最後だった。

さて、今はどうだろうか。プレカットと呼ばれる工場で機械加工された部材が現場に一式届き、それを仲間の大工に声を掛け合い建前の時だけ応援してもらって上棟する。土台に刺さる柱のホゾもかなり緩くしてあるので、柱が簡単に斜めにできる。柱を傾けながら、梁などの部材も入れやすいように調整してあるようだ。ホゾとして入っているが、きちんと効いていないので金具の補強が必要だ。

今回は地元の材料を使いたいため、私が材料を支給する部材がいくつかある。原木で購入し製材までされたものだが、そのまま渡すと加工ができないと言われる。いや、正確に言うと加工をする技術はあるのだが、加工する場所を持っていないので加工できない。2階の天井材は全てサネ加工まで用意したが、流石に一階部分はやってもらおうとお願いした結果の返事だった。

そこは頼む際にも心配だったので事前に確認すると、以前世話になっていた親方のところを借りられるので大丈夫とのことだったので安心していたが、借りるのにお金がかかるのでその費用が欲しいと頼まれることに、、、、。

聞けばほとんどの現場はきちんと加工されたものが届き、原木から製材されたままの粗材から加工することがないという。いつの間にか、加工場(刻み場)も持たずに大工という職業が成り立つようになっていて、それが当たり前のようになっていた。その究極はハウスメーカーの大工のようで、部材のカットまでされているので現場で組み立てるだけだという。

そういう話を見聞きすると、私たち木工の世界もいずれそうなるかもしれないと思えてきた。実際、その変化を少しずつ感じ始めている。飛騨の家具メーカーもどんどん機械化が進んでいる。実際、現場を知らないので何とも言えないが、図面と材料(粗材)を渡されて椅子を1から量産できる人がどれくらいいるだろうか。

あと、数十年後には、機械も持たず、部材加工されたものを組み立て、磨いて仕上げるだけの木工家が現れているかもしれない。



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