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高校公共の国際連合の単元で無理やり登場させられたNewJeans『Ditto』

新年度も始まって早1ヶ月。昨年度と同じように年度初めは学校での授業を受け持たず、事業推進に注力しているフリーランス教員兼経営者の羽田です。

前回投稿した高校公共の日本国憲法の授業で扱ったOfficial髭男dismの話が意外と多くの人に読んでもらえたので、その二番煎じとして(用法間違い?)高校授業✖️エンタメ関連でもうひと記事書こうと思います。

以前、ウクライナ侵攻についてのnote記事を書きました。ロシアによるウクライナ侵攻が金融と経済に与える影響についての授業をダイジェストでまとめたものです。

ただ、ロシア・ウクライナ戦争を取り扱った授業はこれで終わりではなく、「誰がこの戦争を止められるのか?」というテーマで、国際連合、国際司法、安全保障などの観点から考える一連のコースものとなっています。そのうち、NewJeansが登場したのは、国際連合についての授業でした。

国際連合に関連するK-POPアイドルといえば、BTSなんじゃないの?と思われた方もいるかもしれません。
実際にBTSは国際総会で何回かスピーチをしており、その度にメディアでも大きく取り上げられていたので、記憶に残っている方もいると思います。

でもここはあくまでNewJeans。どんな文脈で登場したのかというと、国際連合の主要機関のうちのひとつ、安全保障理事会についての場面です。

授業では簡潔にまとまっているニュース動画もよく見ます

2022年2月26日、安全保障理事会においてロシアを非難する決議案が出されたのですが、常任理事国であるロシアが拒否権を行使したため、否決されました。ここで、国連の安全保障理事会とはどのような組織なのか、概要を押さえておきましょう、ということで、根拠条文も含めて紹介します。

実は、国連憲章には「拒否権(veto)」という言葉は登場しません

常任理事国が持つ拒否権は英語で「Veto」と言います。発音は「ヴィートゥ」。最近流行りのNewJeansの「Ditto」ではないですよー、とここでさらっとニュジ登場。
ところで、みなさんNewJeansの曲の「Ditto」って知っていますか?この「Veto」と似ている「Ditto」の意味も分かりますか?と聞きます。

これに対しての生徒の反応は様々。えーなんだろう、という生徒もいれば、知ってますよ!とか、そんなん知らんし、また脱線始まったよと呆れている生徒も。
ちなみに、授業後には、「先生、K-POPアイドル好きなんですか?」と話しかけてくれる生徒もいました。いや、家の中でよく流れているので自然と聞くようになっただけ、と話しましたが、「私も好きでよく聞きますよー」と返してくれる生徒もいます。

この二つの単語、発音が似ているのに、意味が全く違う、むしろ真逆の意味になっている、それって面白くない?と生徒に投げかけます。

veto / ˈviːtəʊ(ヴィートゥ)拒否、拒否権、不承認
ditto / ˈdɪt.əʊ(ディットゥ)同上、前と同じこと  

出典:Cambridge Dictionary

ちなみに、ヒゲダンの『115万キロのフィルム』の時は実際に授業中に曲を流しましたが、NewJeansの『Ditto』は流しません。この違いは、『115万キロのフィルム』は、歌詞そのものが気づきと学びの対象になっているのに対して、『Ditto』は、授業に関連している要素が曲名だけなので、歌を流す必要がないためです。貴重な生徒の授業時間なので、その辺りの分別はあるつもりです。
でも、NewJeansそのものや『Ditto』を知らない生徒もいるので、なんなら片手をななめに突き上げて、もう片方の手を身体の前でぐるぐる回して踊ってあげます。はい、やってますね(笑)分別はやっぱりないかもしれません。

ただ、数年後には『115万キロのフィルム』も、NewJeans『Ditto』も、授業では取り上げないと思います。やっぱりその時その場所だからこそ伝わることもあるはずで、少し古くなると、あぁそんなのあったなとちょっとダサくなってしまう。中高生の流行は一瞬なので、その瞬間を見極めて、流れに乗ることが欠かせないのです。少しでも楽しく学んでほしい、興味関心を持って勉強してほしいという思いでこのようなことをやっています。
このようなネタ的なものを授業に入れ込むことに対して、迎合している、生徒ウケを良くしているだけ、という批判的な見方もあるかもしれません。ただ、生徒と双方向での授業をリアルでライブで演る意味はまさにここにありと思っています。その時その場所でそこにいる生徒にしか伝わらない内輪ネタが実は最強です。

さて、安保理常任理事国5カ国は拒否権(veto)を持つことは、事実として知っている高校生も多いです。中学生の時に学んでいますし、ニュースで読んだり聞いたりしているようです。
では、なぜ常任理事国に拒否権という強力な権利を与えたのでしょうか?第二次世界大戦の戦勝国だから、という生徒からの反応もよくあるのですが、ここでは国際組織の歴史的な観点から見てみましょう、ということで、国際連合の前身である国際連盟との比較を見ます。

国際連盟と国際連合の相違点

この比較表自体は参考書や資料集にもよく掲載されているので、生徒にとっても目新しいものではないのですが、この相違点を単に覚える対象とするだけではもったいないです。
「国際連合では、なぜ主権国家平等の原則を逸脱するような拒否権という大国の特権を認めたのか?」という問いの観点から考察すると、両組織の違いの理由をより深く理解することができます。

なぜ主権国家平等の原則を逸脱するような拒否権という大国の特権を認めたのか?

国際連合の単元では、基本的な知識を覚えるだけではなく、どのような組織形態にするのか?意思決定方法をどう設計するか?という組織論について、考えを巡らせてほしいと思っています。特に、今の安全保障理事会、ひいては国際連合全体は、機能不全に陥っており、世界の戦争や紛争を防ぐことができていません。このような現在の国際情勢を見るに、では国際秩序を維持するにはどのような仕組みが必要なのか?という問いは考えるに値するものだと思います。

安保理の機能不全に対して、拒否権行使にあたり説明を求めるという案は有効?

高校生には少し難しいかもしれませんが、生徒自身も部活や生徒会、学校行事の実行委員会など、集団で意思決定をする場面は少なからずあるので、どうやって決めるのがいいのかな?と授業で学んだことを日常でも思い起こせるといいなと思っています。

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