デジタル通貨へ30社連合 22年にも共通決済基盤 3メガやNTT、電子マネーと交換可能に

日本でデジタル通貨の発行に向けた取り組みが本格化する。3メガバンクやNTTグループなど30社超が組み、2022年にもデジタル通貨の共通基盤を実用化する。デジタル通貨はスマートフォンなどで受け取れ、既存の電子マネーとの交換機能を備える。業界の垣根を越えた決済基盤を整え、企業間取引のデジタル化にもつなげる。

インターネットイニシアティブ(IIJ)傘下で暗号資産(仮想通貨)交換を手がけるディーカレット(東京・千代田)を中心に、6月に協議会を立ち上げていた。これを母体に、基盤整備に向けた「デジタル通貨フォーラム」を設立する。



今回新たに野村ホールディングス、東京海上日動火災保険、大同生命保険、関西電力などが加わり、参画企業は30社を超えた。3メガバンクやセブン銀行などのほか、通信系はNTTグループやKDDI、交通系ではJR東日本が名を連ねる。

構想ではデジタル通貨は銀行を通じて発行する。個人や企業が持つ現預金を裏付け資産とし、銀行口座と同様の役割を持つウォレット(電子財布)に発行する。送金や決済に使えるようにし、基盤を通じて既存のスマホ決済サービスや電子マネーとの交換も可能にする方針だ。

事業者間で決済サービスの相互利用を促し、利便性を高める狙いだ。国内ではネット企業や通信会社が相次いでQRコード決済に参入したほか、ここ数年で独自のスマホ決済サービスも急増した。政府のポイント還元事業などを追い風に利用が拡大した一方、乱立で使い勝手が悪くなっているとの指摘もあった。

新基盤では、消費者はデジタル通貨を介して各種決済サービスを横断的に使えるようになる。例えばあるお店が交通系電子マネーの決済にしか対応していなくても、利用者は別のスマホ決済サービスで支払いできるようになる。店にとっても何種類もの決済サービスをそろえる手間が省ける。

企業間の大口決済や取引にも対応する。ディーカレットが開発する決済基盤は分散型台帳(ブロックチェーン)を使う。ブロックチェーンに情報を書き込むことで個別の取引内容の把握や追跡ができる。参画企業は21年4月から小売りや製造業、物流、電力といった分科会ごとに実証実験を始める計画だ。

事業者は業務の効率化や新たな事業モデルの開発を期待する。例えば、小売業界では商品を納品、検品した時点でメーカーや運送会社に送金できるようになる。鉄道やバスなど複数の事業者をつなぐ次世代移動サービス(MaaS)の決済手段にもつながりそうだ。

世界では中央銀行が発行する中銀デジタル通貨(CBDC)の議論が進んでいる。日銀もCBDCの実現を見据えた準備を加速しており、21年春にも実証実験を始める方針。ただし現時点で具体的な発行計画はない。

大企業によるデジタル通貨構想としては米フェイスブックの「リブラ」などがあるが、実現には至っていない。日本での構想が実用化されれば、世界でも珍しい企業主導のデジタル通貨となる。

(出典:日本経済新聞電子版)​

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