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札幌移住1年半の雑感

東京生まれ神奈川育ちの私が北海道に移住して、1年半が経った。
冬を二度経験し、この土地の空気感や人との触れ合いが少しずつ、自分ごととして捉えられるようになっている感覚がある。

私は2022年9月から札幌に住んでいるが、実は2021年まで北海道に来たことはなかった。
それ以前にも北海道を旅するチャンスはあったのだが、諸事情でことごとく潰えてしまっている。
それだけに、初めて来た時の感動は相当のものだった。

移住のきっかけは私ごとなので割愛するが、これだけは言いたい。
札幌は素晴らしいまちだ。

まず土地が広いからか、気持ちがおおらかになる。
首都圏では列車が1分遅れただけで殺気立つが、北海道ではあまり気にならない。
かつては細かいことを気にしてカリカリしていた自分の心が、以前より自身のことを許せるようになったと思う。
仕事の締め切りはもちろん守るが、「早く仕上げなきゃ」といったプレッシャーを自らかけることも減った。
人間、環境を変えると勝手に変わっていくものなのかもしれない。

また大都市なのに緑が多く、白樺など本州ではなかなか見られない樹木や生き物たちが「北海道」というブランディングを助けている。
札幌市ではないが、新千歳空港を降りた時のひんやりとした空気がたまらなく好きだ。
近所の公園を散歩するだけでヤマガラやシマエナガといった可愛らしい小鳥たちが見られるのも、バードウォッチャーとしては嬉しい悲鳴である。
ただ、金木犀の香りが嗅げないのはちょっとだけ寂しい。

そして個性的な飲食店が多く、何を食べても美味しい。
首都圏の駅前といえば、ファストフードチェーンやスーパーといった商業施設が一堂に会する光景がよく見られるが、札幌の駅前はそうとは言い切れない。
チェーン店はもちろん、商業施設が駅前にほとんどない駅もしばしば見られる(我が家の最寄り駅はまさにそう)。
地下鉄や市電の沿線に住めば車がなくても生活できるが、駅前ですべてを完結させることはできない。
チェーン店が少ない分、喫茶店やレストランなど興味深い店舗が多数ある。
店主との距離が近いため、一度懐に入ると大事にしてもらえるのも嬉しい。
首都圏ほど便利ではないが、その方が人間が住む街らしく感じられるのは私だけだろうか。

以前の記事で、昔から北の地に憧れがあったことを述べた。
最近、その「なぜか」が少しずつわかってきたような気がする。
おそらく、私が本来持つアイデンティティと北海道の人々の価値観が似ているのだ。

たとえば、食文化。
私は酒飲みで味の濃い食べ物が好きだから、ジンギスカンやスープカレーを受け入れやすかった。
近所の八百屋では新鮮な道産野菜が安く売られていて、野菜を毎日モリモリ食べられる。
北海道で食べるじゃがいもは、どこよりも美味しい。
道民に話すと毎回理解してもらえないのだが、これは声を大にして伝えていきたいことだ。

加えて暑いよりは寒い方が得意であることも、都合が良かった。
北海道の雪はサラサラとしていて、傘をささなくても払えば落ちる。
冬場のコートの中に薄いダウンを挟めば、大抵の土地ではなんとかなっていると思う。
もっとも札幌は道内では温暖な方で、寒い土地ではもっと着込まないといけないかもしれない。
しかも夏はそこそこ暑いから、結局夏にダウンするのは私の風物詩だ。

そして、人の温かさは本当に魅力的だ。
北海道の人々は観光客に「遠いところをわざわざありがとう」と話すが、その裏には強烈な郷土愛があるのも伝わってくる。
私などはまだまだ新参者で真の道民とは言えない部分もあるが、私はそんな道民の温かい心とフレンドリーさが大好きなのだ。

私にとっての北海道は、「自分が自分でいて良い」と言ってもらえる場所である。
首都圏から離れると仕事面で不利なこともあるが、北海道を拠点に活動したい思いは変わらない。
少しでも恩返しができるよう、頑張っていこうと思う。

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