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「紙」という「物」の存在価値

先日、僕が経営する木村文章店主催で、「プリンティングディレクター・崎山篤史(さきやまあつし)の世界」というイベントを鎌倉で開催しました。

崎山さんは、弊社が懇意にさせてもらっている藤沢の印刷会社「東湘印版株式会社」の社員さんです。
東湘印版さんは、紙の可能性を追求している印刷会社さんで、僕はそれにとても共感しています。

デジタル全盛の現代。
文章も、パソコンやスマホなどで書くことが大半になりました。
現に、僕もこのnoteをパソコンでいま書いています。

普段の仕事もそうで、原稿は九割型、パソコンで執筆します。

ただ、「ここぞ」の文章は、手書きで、紙に書くんです。

たとえば、キャッチコピーの案件のとき。
プレゼンに3案持っていくとして、そこまでに数百〜数千のキャッチコピー案をつくります。
で、この時、僕はキャッチコピー案をひとつずつ、コピー用紙(裏紙が多いです)1枚にマジックペンで大きく書きます。

1000案出すとすると、手書きキャッチコピー案が1000枚生まれることになります。

なぜそんな面倒なことをするかというと、たしかに面倒な作業ではあるのですが、自分の手で、自分の文字で、紙に書くということによって、文章に魂が入る…気がするんです。

以前、映画の脚本を担当させてもらうことになった時。
「前書き」といって、映画をつくる前の決意表明みたいなものを書いたのですが、この時も手書きでした。
原稿用紙にボールペンで書いたのですが、書いていくうちに、「勝手に手が動く」ような感覚になったんです。

いやいや、僕はオカルトはまったく信じていません。
でも、そんな不思議な現象が、実際に起こったんです。

これもまた、「文章に魂が入る」ということだったのではないかと思います。
この前書きは、映画のスタッフ全員に感動してもらい、コピーをして、みんなで最後まで脚本といっしょに持っていました。

日々、仕事の締切に追われ、スピード重視のためにどうしてもパソコンで原稿を書くことが多いですが、紙に手書きで文章を書くと、クオリティが格段に上がると感じています。
本当は、すべての原稿を紙に手書きをしたいくらいです。

前出の東湘印版さんが紙の可能性を追求しているところに僕が共感していると書きましたが、僕も紙には大きな可能性がある、と思っています。

紙は「物」です。
物なので、触ることができます。匂いを嗅ぐこともできます。紙は、リアルに「そこ」にあるんです。
それが、デジタルとの大きな違いでしょう。

メールよりも、手書きのお手紙をもらった方が、嬉しいですよね。
温もり、親しみ、愛情。そういったものが感じられますよね。
電子書籍は便利ですが、本の手触り、インクの匂い、それらといっしょに読んだ方が、味わい深くありませんか? 思い出に残りませんか?

環境のことを考えるとペーパーレスの方が良い、ということはわかっています。
デジタルの便利さも享受しています。

ですが、僕は紙の可能性を信じています。
紙で書いた文章の方が、相手に伝わりやすいことを、何度も経験しています。

これからも、紙で文章を書くことを大切にしていけたらと思います。

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