「ニューヨーク・ニューヨーク」を読みまして

 今回読了し紹介をするのは、羅川真里茂(らがわまりも)先生作の「ニューヨーク・ニューヨーク」という漫画です。

 これは自作の小説の勉強の為にまず生まれて初めて読んだBL漫画です。X(Twitter)の私のフォロワーの方におすすめBLを紹介していただいたのがこの作品と出会ったきっかけです。BLと言ってもこの作品はとても奥が深く、女性だけではなく男性でも楽しめる作品だと思いました。

 舞台はニューヨーク。ニューヨークの端にある「クリストファー・ストリート」と呼ばれるゲイ・ネイバフッズ(ゲイ地域)で出会う二人の男の物語です。二巻完結作品なのですが、一巻と二巻でジャンルが異なります。一巻は純粋な同性愛者の恋愛ですが二巻はそこにクライムサスペンスが絡みます。(一巻もクライムサスペンスが絡むと言えば絡むのですが、二巻はクライムサスペンスメインなところがあります。)

 「クリストファー・ストリート」が実際に存在するのか気になり、グーグルマップで調べた結果「LGBTQの象徴的な名所のある通り」と検索結果が出ました。かの有名なエンパイア・ステート・ビルからそんなに遠くない。ニューヨーク大学からもかなり近い。田舎に住んでいるとゲイバーがないので距離感が分からないのですが、アメリカだとオープンなのだろうか。ああ、日本にも新宿二丁目がありますね。

 ちなみにドイツのベルリンでは「クリストファー・ストリート・デイ」というLGBTQイベントが毎年初夏に開催されているそうです。本場のニューヨークのクリストファー・ストリートでもイベントを開催しているのだろうか。

 「クリストファー・ストリート・デイ」は以前クリストファー・ストリートのバーで起きた、同性愛者に対する不当な警察の弾圧に対する抗議デモを行った事が発端となり、パレード等を行うようになったようです。コロナ化が過ぎ現在はどうなのだろうか。気になるので、海外旅行でいつか行けたら参加してみたいイベントです。

 さて、今回の作品の主人公は、ケインというニューヨーク市警に勤める一人の男。これも男前でモテる男です。その彼がクリストファー・ストリートにあるバーに入って来た青年、メルと出会った事で人生が変わるという物語です。メルは金髪碧眼で中性的な容姿をしており、これもまた女性にも男性にもモテそうです。彼らはゲイです。ケインはメルと出会った事で、今まで特定のパートナーを持たず周囲にゲイである事を隠して生きてきましたが、実の両親にもメルの事を紹介するようになります。

 この作品は英語の台詞がたまに出てくるのですが私の中で一番印象に残った台詞は、バーに入ってきたメルを見てケインが初めて思った台詞です。この台詞は物語の最初と最後に出るので、一度読了した後再度最初の台詞のシーンに戻ると思わず涙が出そうになります。

 この台詞を最初思ったケインの目には美しいメルが映っていました。ケインは思わず見とれてしまいます。よほどタイプだったのでしょう。そんな下心でメルを見つめるケインに、メルは嫌な顔をせずに微笑みます。ケインはメルに話しかけますが、メルはただ人と話したかっただけだと語り始めます。メルはケインとは違い、フリーセックスはしない主義の男でした。だがそんなメルに惹かれていくケイン。メルは複雑な幼少期を過ごした事をケインに語ります。

 ケインとメルの周囲に居るバイセクシャルの人間、ノンケ(ノーマル)な人間を複雑に絡み物語は進んで行きます。途中ゲイである事をきっかけに、些細な事から何度かケインとメルは喧嘩します。そんな彼らの繊細な心をリアルに描く。作中には同性愛者に偏見を持った人間が何人も出てきます。ですがそんな中、同性愛者への偏見の目を持たない人間も居ます。複雑な人間模様を同性愛に絡めて書くのがこんなに上手い作家さんは今まで私は知らなかった。

 羅川真里茂先生をWikiで調べた結果、「ましろのおと」の作者さんだった事が分かりました。「ましろのおと」はアニメ化もされていますね。羅川先生も青森出身だから青森の津軽三味線を題材にした作品を作られたのでしょうか。

 「ニューヨーク・ニューヨーク」は様々な愛の形を描くヒューマンドラマです。二巻で始まるFBIを絡めたクライムサスペンスも面白かったです。二巻最後の少女視点の物語は涙なしには読めません。是非貴方もご一読を。