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ジョン・ハッティ『教育の効果 メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化』(第2章)何をエビデンスとするか〜メタ分析による知見の統合【318】

 この著書においては、あらゆる教育的なアプローチが学力にもたらす影響を数値で表記しています。
 ただし、これらを見る時に気をつけなければいけないことは、その数値をそのままそのアプローチの価値としないことです。その数値が出された背景やなぜそういった数値になっているのかをしっかりと分析することが求められます。

 典型的な日本教育を受けてきた人たちにとって、数値は絶対的でそれが真理であるかのように捉えがちなところがありますが、それが正解ではないという認識が重要です。

 大切なのは、数値を見て考え、いろんな人と対話することだと思います。そして、自分の実践として振り返り新しい挑戦を続けることではないかと思います。

 こちらの記事では、第2章に書かれているエビデンスについての考え方や、この本を書く上でのメタ認知研究について説明されていたことをまとめておきたいと思います。


メタ分析とは?

 本書にはメタ分析の結果として、いろんな実践の効果についてまとめられています。
 「メタ分析」とは、数々の研究をさらにまとめて研究することを示します。認知したことが広がる「メタ認知」のように、分析されたものをさらに分析して視点を広げることがメタ分析と考えます。

第2章 何をエビデンスとするか〜メタ分析による知見の統合

 次章以降で私たちが目にする数値は、それそのものが「学力に影響を与える価値」というわけではありません。
 本書でも「効果量の大きさだけを考慮するのではなく、効果量としてどういったものがありうるかや各々の効果量がどういった因果でもたらされるのかを検討し、効果量の違いを総合的に検討した上で意思決定を行う必要がある」書かれています。

「宿題」に関する理解を深める

 ここでは、宿題を例に性別や年齢、読解と数学のどちらが効果があるのかについて書かれています。そういった分析を通じて、宿題があるかないかだけで考えるのではなく、さらに深く捉えてどのように実施するかを考えることができます。

メタ分析は「過去の結果の集約」でしかない

 ここで出されている結果は、答えではなく、これまで取り組まれてきた「過去に対する見解」です。
 そのため、過去の分析結果が思わしくないからといって、その取り組みは意味がないと考える必要はありません。
そこから何を学び、次にどう活かすかはこれからの人たちに委ねられています。本書の中にも「今日明日の教育にどの程度反映させるかという問題は、読者の解釈にゆだねられる」と書かれています。

学力を高める効果の唯一最大な要因はフィードバックである

 著者のジョン・ハッティは、「教師が自身の行う指導についてのフィードバックを多く受け取ることができるような教室の状況を作り出すことこそが最も重要ことであるとわかりかけてきた」と述べています。

 教員の働き方や学校の環境はもちろん大切なことなのですが、それだけでは根本的な問題は解決しないことを示します。後ろの章で紹介されているように、学級人数を減らしても効果はあまり出ていないという結果が出ています。

学習・学力に影響を与えるもの

 第2章の終わりに、学習や学力に関わる要因について理解を深めておきたいと思います。
 本書では、「『教育生産性』の9因子モデル」や、「学習に影響を与える3つの主たる心理学的要因」、「学力に与える影響を左右するもの」が紹介されています。
 学術的な捉え方は難しいと感じられることもありますが、そういった子どもたちを取り巻く環境の中で、学習・学力という観点において影響力があるものは何なのかをしっかりと学ぶことは本当に大切なことだと感じます。直接的に影響するもの、間接的に影響するものなど、それらを総合的に把握した上で考えられる力が必要だと感じました。

メタ分析から分かったこと

 学習者は、やみくもに学習に取り組むというのが学力向上に結びつけるのが難しいと考えられます。
そこで、方向づけと学習方法を学習者に示すことに大きな効果があるという結論に至っています

学習者に関わる人にあらゆる可能性がある

 本書では、学力の要因となるほとんどが学習者であるとされています。そこに教師の要因があり、わずかながらに家庭要因があると考えられています。

 これは私の経験から学校の先生に魅力があれば、多少教育条件(人数やICTなど)に課題があっても子どもたちの学力は伸びると思います。

 この記事の結論としては、誰もが他の要因があると諦めてしまうのではなく、「今の自分にできることは何か」という考えをもってスタートすることが大切だということです。

 次の記事からは、いろんなエビデンスに関する情報をまとめていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

<参考文献>
ジョン・ハッティ著、山森光陽訳『教育の効果 メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化』図書文化社、2019

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