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第1回「保護者のための『子どもの日本語』について話し合う会」報告【Aflevering.196】

「子どもの日本語をどうしていったらいいのだろう、、、」
 日本人同士の集まりに参加させていただいたり、娘のプレイデートで他の保護者の方たちとお話をする中で、自分も含めて多くの方が子どもの日本語環境について悩んでおられることが最近分かりました。確かに現地の学校や英語を学習言語とする学校に通っている場合、日本語の時間をいつどのように取るのかは難しい課題です。

保護者がアウトプットをする場を提供したい

継承語教育の中心は「家庭」だけれども、、、

 かつて私は、中島和子氏『バイリンガル教育の方法』(アルク選書、2016)の中で紹介されていた社会学者のある言葉がとても気になっていました。

「(週末学校や週に1回の日本語レッスンよりも)子どもは家に帰して、親に子どもとの付き合い方を教える継承語学校にした方がよい」
中島和子氏『バイリンガル教育の方法』(アルク選書、2016)
第9章海外日系児童生徒とバイリンガル教育 継承語プログラムの問題点より

 毎日の積み重ねが言語習得には欠かせないものの、保護者の子どもに対する態度も重要だと述べられています。私自身も保護者として感じたことですが、家はリラックスをして家族との団欒を楽しむべき場所であり、家庭に「日本語の勉強をしなさい!」というプレッシャーがかかる雰囲気が蔓延していると、子どもたちの心を安らげる場所はどこにもなくなってしまいます。子どもたちは学校でも言語の不自由さを多少は感じているかもしれないので、なおさら家庭ではゆっくりと休んでもらいたいです。

保護者が学べる場所

 バイリンガル教育に関する本や記事を読んでいく中で、とても重要な一歩目だと感じることがあります。それは、教科書やドリルだけが日本語学習ではないことだということです。しかし、学習としては分かりやすい「教科書やドリル」ではない他のアプローチにどんなものがあるのかを考えるのは一人では難しいときがあります。
 そこで、他の人のアプローチを参考にして自分が自分らしく子どもと一緒に日本語に触れる環境を作るにはどうしたら良いのかを考えるきっかけがあれば、保護者の方はリラックスして家庭の日本語環境を作ることができるのではないかと思ったのです。保護者自身が学ぶ場所こそが重要なのです。

「安心・共感」の居場所

 保護者の方が集まった時、セミナーのように「こうすればうまくいく!」という正解主義的な形式ではなく、保護者の方それぞれが持っている悩みや不安を含めて、自分が子どもの日本語に関してどういう風に考えておられるのかを自由に話し合う雰囲気が大切だと思いました。私は子どもの日本語講師ですが、一人の保護者として時には講師として感じていることなどを話すように心がけました。
 子どもたちの日本語教室の居場所づくりと同じですが、保護者の方にも「そこには自分の居場所がある」と感じてもらいたいのが私の1番の思いです。

第1回議事録

第1回目はお二人にご参加いただきました。

①自己紹介

 ほぼ初対面の方達だったので、それぞれご自身の簡単な自己紹介をしていただきました。お子様のことやご家族、お仕事などについてお話しいただきました。

②なぜあなたはオランダに?

 自己紹介から自然な流れで、それぞれ質問をしあいました。日本とオランダはどんなところだと感じるか、幼い頃の海外生活の経験、自分らしく生きるために必要なことは何か、など3人でいろんな話をしました。

③子どもの日本語で困っていること悩んでいること

 今回は、まだオランダに来られて間もない方のお子様がオランダの現地校に通われて、「オランダ語を次第に習得していく中で日本語をどのように維持していったらよいのか」というテーマの中で、保護者の方自身が海外で育った経験をお話ししていただいたり、異なる言語がどのように作用し合うのかについて考えました。
 ハーフとして育つ子ども、日本語家庭で育つ子ども、年齢や性格、環境が異なる中で「バイリンガル教育に正解はない」という前提でそれぞれが考えていることを話し合いました。

 私自身も1人の親として、時には日本語教室で見ている子どもたちの様子などを報告させていただきました。その中で、子どもの日本語に関する悩みは尽きないけれど、「まずは保護者自身が幸せであること」の大切さを改めて確認しました。

 保護者として、きちんとやらなければいけないと意気込んでしまったり、不安から子どもについ厳しくしてしまう一面もあるかもしれません。でもそれは子どもを思うが故の不安であり、その不安を共有できる場所があればもう少し肩の力を抜いて子どもたちと接することができるのです。
 答えのない難しい環境にいるからこそ、似たような境遇の人が集まる場所で、お互いに日頃困っていることや悩んでいることを共有する場をこれからも設定していきたいと思います。

 最後に、悩みや不安は尽きないものの、子育ての原点でもある「子どもは毎日元気で、学校にも行ってくれているその日常に改めて感謝し、子ども自身は毎日本当によく頑張っている」ことを再確認しました。日本語は、教科書やドリルで片付けるのではなく、プレイデートや絵本の読み聞かせ、日本の漫画やアニメなど、生活の一部としてなるべく自然な形で進めていくことが大切だというお話もありました。

今後の活動について

 今回お二人の方に来ていただき、たくさんのお話をすることができました。また、私自身も保護者として救われたところがありました。参加していただいたお二人とも、これからも海外に暮らす日本人としての面白さや難しさを共有していきたいと思います。
 今後についても、「自分が考えていることを話したい」「他の人がどんな風に考えているのかを聞いてみたい」という方向けに毎月1度ぐらいのペースで取り組んでいきます。

 この活動は、今後"D-room"という名前で活動していきたいと思います。
 "D-room"とは子どもの(言語)発達についてみんなが集まって話し合う空間という意味です。私がかつて大学に在籍していた時に、同じ名前の場所がありました。それは学部の名前をとったものでしたが、友人たちと集まって話したり、企画の打ち合わせを行った私にとって特別な場所でした。また、オランダ語で調べてみると「夢(droom)」という意味にもなるということがわかったため、この名前に決めました。

次回のテーマ

 「子どもの日本語をどうするか」というテーマについて、どうしても手法が先行しがちなケースも多いので、次回は「なぜ日本語をしないといないのか、日本語習得の原動力は何か?」について参加者の方と一緒にお話ししていきたいと思います。

 この記録は、当日参加できなかった方や、ご興味のある方、きっかけがほしい方向けに作成しました。オランダに限らず、海外での子育てで何か意見交換をしたいという方のお役に立てると何よりです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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