Globis知見録で「ウェルビーイング」の本当の大切さを学んだ【302】
今回「予測不能な時代の働き方とウェルビーイング」というテーマの動画を観て「ウェルビーイング」の本当の大切さを学ぶことができました。
今回の一番大きな収穫は、ウェルビーイングという考え方が、個人の取り組みから家族、会社、社会全体に大きな影響をもたらすということでした。これまでは、どちらかというと社会を変えるよりも、まずは自分らしく生きることを追求するというイメージが強くありました。しかし、これを実践することで、家族との時間も大切にすることができます。そして、そういった生活基盤が整うことで、心身共に余裕のある状態が生まれ、これまでと比べ発想やパフォーマンスの力が高まります。
最終的には、それまでやみくもに目指していた会社の利益を上げることに留まらず、社会全体がウェルビーイングな状態になっていくことが理解できました。これは本当に素晴らしい考えだと思いました。
私が公立高校の教員の仕事を辞めたのは、家族との時間を大切にできていなかったことが理由の1つにあります。仕事の内容に関しても、本来教員の果たすべき役割が十分に発揮できておらず、学校教育について学び直す機会もありませんでした。
現在の私は、住環境も大きく変わり、フリーランスとして教育に関わる仕事をしています。休みの期間を確保し、心身共にゆとりがある状態が続いていること、そして仕事を遂行する時間だけでなく、今の自分に不足していると感じたことについて学んだり、今のパフォーマンスで何か改善すべきものはないかについて考えたりする時間は本当に貴重だと感じながら仕事をしています。学校教育から離れることはとても辛い決断でしたが、当時よりも「教育」「子どもの発達」というものをメタ認知して捉えることができていると感じます。
そして今回観たこの動画からは、ウェルビーイングを表面的な理解に留めるのではなく、本質から理解しておさえることが必要だということを学びました。また、労働経済学や労働科学研究所が示す根拠を知ることで、ウェルビーイングがもたらす恩恵は一つの会社に留まらず、社会全体にも関わるというのが理解できます。
以下は動画を観て取った私のメモと、小室淑恵さんが紹介していた科学的根拠についてまとめています。本当に学びの大きい時間でした。
学びメモ
ここからは私が動画を観て重要だと思ったことを記録しておきます。
ウェルビーイングが注目されていなかった勘違い
小室さんが働き方を変えるための活動を始められた当時は、まだウェルビーイングは経営を阻害するものと考えられていたり、労働時間の制約は成長を阻害するものだと考えられていたそうです。
そういった価値観の変化がまだ起こっていない時から、ウェルビーイングに注目し活動しておられ、それがやっと多くの人に認知されるようになったことに喜んでおられました。
それでもコロナが与えた日本経済への打撃を考えると、「もっともっと早くから普及させられたらよかった」という悔しい思いをなさっているという話を聞いて、現状に甘んじない向上心を常に持っておられました。
ドラッカー「未来を知ることができる2つの方法」
冒頭部分で、ピーター・ドラッカーの言葉が紹介されていました。
私たちは未来が予測不可能であることを忘れて、今日と同じ明日がやってくると信じてしまいがちです。日々の変化は小さいものなので、しっかりとアンテナを張っていないとそうなってしまうのかもしれませんね。
人口増加時代と人口減少時代で異なる経営戦略
意思決定の権限を持っているいわゆる上層部と、現場で実際にサービスを提供するメンバークラスとの間に、考えのズレが生じることがあります。トップダウンの意思決定をすることで、現場の声をうまく活かすことができず、利益が低迷する会社も多くあるそうです。そのメカニズムについてもとても分かりやすく説明されていました。
その原因として考えられるのは、人口の増える時代と減る時代の勝つための戦略が異なるということです。現在、長時間労働が問題視されていますが、人口が増加している時代においてはそれはむしろ有効な手段であったそうです。そのため、当時は長時間労働に耐えうる男性が働くことは経済的にも高い効果があったと考えられています。
その一方で、人口減少時代は労働力は余っていないため、男性に限らず総力をかけて効果を上げていかなければなりません。育児や家事、介護など多様な生活をしている人たちが働けるように、時間を減らして効果的な働き方が求められます。
時代によってマッチする戦略が異なるにも関わらず、人口増加時代に成功した戦略を強要するところにミスマッチが起こるそうです。
さらに、人口増加時代は市場が拡大傾向にあるので、未来の様子が比較的予想しやすいです。しかし、現代は今売れている商品がこれからも売れ続けるとは限りません。そのため、多様な商品とサービスで細かくニーズに応えていく必要があると話されていました。
ウェルビーイングは「継続性」がポイント
ウェルビーイングに関する理解を深める鍵として、一時的に労働時間を減らしたり、研修をすれば良いかというとそうではありません。何よりも継続性が重要だというお話がありました。心身の休息は毎日必要であり、キャリアアップのために学び続ける必要があると感じたらそれができる機会を用意できることが必要です。
しかし、ウェルビーイングを実現するためのアプローチは会社によって異なります。この方法が必ず成功するという正解主義的な考えを捨てて、自分たちのウェルビーイングを達成するために(その会社に)必要なことを考え、話し合うことが重要なのです。
フラットな関係が構築できているか
ウェルビーイングな環境を作るために、まず1つ大きな壁になってくるのは、立場の異なる人同士がフラットな関係で話し合えるよう、安全性が確保された状態を作れるかどうかということになります。
今ある課題について話し合う時には、いろんな人たちが無記名で同時に意見が出せるようにするなど、形だけではなく立場の違う人たちが平等に話し合える場所になっているかどうかを確認する必要があります。
ここで紹介されていた事例として、現場のパートさんや各店舗の意見を採用できる環境を整えただけで、クリエイティブな発想や自立性が生まれ、会社の利益にも大きく影響をもたらしたということが紹介されていました。
また、自分の意見が会社の経営に影響をもたらすことが分かれば、会社に関わる人がみんな「経営思考」を持って全体を考えられるようになっていきます。そうすると、より広い範囲で物事が考えられるようになり、社会全体へ意識が広がっていくのではないでしょうか。
自分の働く時間や場所を決められることから生まれる「自立」
ウェルビーイングのスタート地点は、自分の働く時間や場所を自分で決められるところからだと言われていました。これが、表面的な理解を深めるために必要なアプローチだと考えられます。そういった働き方への自立心が仕事において自発性を促すことにつながるのです。
ウェルビーイングが生み出す循環について、このように働く時間や場所を決められることで、必要な時間に家族のサポートができるようになります。そして、それが家族の他のメンバーの幸せにもつながり家族全員が幸せになるのです。そうすると生活における精神基盤が安定し、本人のモチベーションが高まり働くことに積極的になれます。
教育現場の腐敗がもたらす社会への影響
夢中で動画を観ていると、教育現場に対する危機感についても述べられていました。教員のウェルビーイングは、そのまま子どもたちの発達に影響します。
現在の学校の労働環境は異常なものになっており、教育現場の残業時間がとんでもないことになっています。それは給特法という、事前に4%の残業代が付けられていることによって、勤務時間が無限に増加する仕組みになっているからです。公立高校でしか勤務したことがない私にとっては、この働き方が当たり前だったのですが、これは異常なことだということに最近気づきました。
昨今ニュースになる教員の不祥事についても、素行に問題のある人が教員になることはあまりなく、超過勤務が続き、慢性的な睡眠不足から生まれるストレスが溜まった状態が継続して、そういった事件や不祥事につながると分析されていました。
その悪循環はさらに子どもたちに降りかかります。睡眠不足の人は、他人に暴力的な言葉を投げかける傾向が強まるようで、それが子どもたちに向けられてしまうことになります。ましてや、会社であればその人や職場から離れることができますが、子どもたちの場合その場所から離れることはできないのです。このように、異常な学校の労働環境によって生まれる「抑圧的な教育」は、子どもたちが最終的な犠牲者になります。そういった観点から、ウェルビーイングは会社の中だけの話に留まらず、社会全体に目をむけるためのい必要なものだということがわかります。
仮に、自分の子どもをそういった環境から離れて学ばせることができたとしても、自分の会社に入ってくる社員は抑圧的な教育を受けてきた犠牲者たちになるわけです。自分の考えを持っていたり、クリエイティブな発想を持った人間は会社に入って来なくなってしまいます。教育の問題は、最終的には自分たちの会社の経営に大きく影響するものであり、それは他人事では済まされないという問題意識が必要だということも理解できました。
私は教育に関係する仕事をしているので、学校教育のことばかりを考えてきましたが、経済界の人たちも危惧するぐらい危険な状態になっているんですね。
職場がフラットな関係になるように
「ウェルビーングは一人では達成できない」というお話がありました。確かに、組織全体の考えが変わらないと働き方が改善されることはありません。しかし、いろんな世代、いろんな考えを持っている組織が変わるにはどのような環境設定が必要なのでしょうか。
それは、まず初めにメンバーに忖度させている無意識の不平等な関係を改善することです。そのため、現状を把握しこれからのことを考える会議においては、立場の違う人でも忖度なしに意見が出せるようにするためのちょっとした工夫が紹介されていました。
「忖度のない会議」で仕事におけるエラーが減らせる
これらは全て会社の利益が上がることに直結していることを私たちは覚えておかなければなりません。
忖度のない会議においても、それが業務の実行においても効果を発揮します。無記名にすることで意見がたくさん出され、日頃は権限の持っていない若手が出した意見にイイネがたくさん出されると、それは業務の改善の必要があるものだということが共通認識として持たれ、会議が終わってから発生するエラーを事前に対処することができます。
メンバークラスでできること
決定権を持っていない人の場合は、会社の組織を変えることは急には難しいです。そのため、メンバークラスの立場の人にもできることが紹介されていました。
それは「自分の1日の仕事をどうデザインしているか」です。朝にその日1日の戦略を立て、その日の夜に振り返るようにすると、如何に自分が好き嫌いで仕事の順序を決めているかが分かるそうです。
残業においても、誰かがタイミング悪く話しかけてきたからといった外的要因だと思う人が多いそうですが、実は内的要因が多いそうです。残業が発生する構造として、仕事の順序が本当に適切なのか(難しい仕事であれば、それについて聞くべき人がいる時間にその仕事ができるように計画を立てているか)を考えなければいけないのです。
自分とは異なる価値観を持つ人と相容れずに否定してしまう
これは、「アンコンシャスバイアス」といって無意識な思い込みによる誤解が背後に潜んでいます。
これからは、多様な人同士がそれぞれできることを進めていく必要があります。自分とは違う環境の人、例えば、50代の専業主婦がいてずっと仕事ばかりしてきた人と、30代の家事と育児を両立させながら仕事をしている人が一緒に仕事を進めていくには、相手の見えていないところまでを理解した上で配慮をしつつ仕事を進めなければいけません。そこで重要なのは、「相手の課題をその立場になって考える」ということです。
「仕事」の成功と「生活」で失ったもの
仕事の面で成功している人を見ると、仕事面では尊敬されていたとしても、「生活」の部分で失敗していることも踏まえて考えるべきだとしています。例えば、家庭に帰っても仕事ばかりしているために居場所がないとか、もしくは家族がもうその人から離れてしまったということもあります。
仕事で失ったものは取り返せるが、生活で失ったものが取り返せないことがたくさんあるというのは私にとってはとても印象的でした。確かに仕事が生き甲斐になってしまうと気づきにくいですが、家族が感じた寂しさや虚しさはもう取り返すことはできません。
ましてや、子どもが幼い間に家にほとんどいなかった場合、かけがえの無い子どもとの時間は二度と帰ってきません。子どもとの関係もそうですが、何よりもパートナーとの関係の修復がもうできないところまで来てしまうこともあります。特に家族で出産を経験した場合、産後1年の過ごし方がその後の夫婦関係に響くそうです。これについては、私の妻も激しく同意していました。仕事が忙しく、そこに生きがいを感じることもあるかもしれませんが、家族のウェルビーイングについても考えてみる必要があります。
大切な仕事だけを残す
ウェルビーイングな環境を目指すにおいて、とにかく大切な仕事だけを残しいらないものを減らしていくことが重要です。そこでは、現場で働くメンバーがいらないと思っていて経営者がいると思っているというすれ違いが起こっていることが多いそうです。だからこそ、お互いの立場をフラットにして話し合いを進める必要があります。
管理職クラスに必要なマインドセット
小室さんがコンサルされた会社では、ウェルビーイングな環境について馴染みがなく、理解もできないために持論を展開して反発する上層部の方も多くいたそうです。そこでは、ウェルビーイングがなぜ大切かという話よりも、今はマネジメントで求められる内容が変わったんだということを理解させることができればみんな変わることができるんだとおっしゃっていました。
グーグルにおいても、心理的安全性が高いチームほどパフォーマンスが高くなるという結果を出していて、このようなエビデンスを用いて経営戦略について再考する機会を設けることの重要性が話の中にありました。
法整備が進んでいない日本
日本は他の先進国に比べて残業をさせやすい国だそうです。アメリカでは、残業代が高く設定されており、またEUは労働時間の間隔は11時間を空けなければいけないとされているそうです。
このように国家戦略にもなっている睡眠時間の確保を日本でも実施していく必要があります。
今回紹介されていたエビデンス
平均睡眠時間が長い企業ほど利益率が高い
慶應義塾大学山本勲教授における研究では、平均睡眠時間が長い企業ほど利益率が高く、しかもそれが継続するということが分かったそうです。
そして、残業と睡眠時間は連動します。
さらに、メンタルヘルス休職者が微増すると2年後の業績が下がることも判明しています。平均睡眠時間と国民一人あたりのGDPが相関しているデータも出されていました。もはやテスト前日に「全然寝てない〜」というのは、マネジメント能力がないという判断につながる時代になり、睡眠は我慢するものではなく、高いパフォーマンスのために必要なのものと考えなければならないのです。
さらに、人間の集中力は起きてから13時間しか持たないことも判明しています。それ以降は、お酒を飲んでいる状態に近くなるそうです。その後は一旦アドレナリンが出るため、パフォーマンスが高まるそうですが、その日の睡眠の質が低下するために、次の日のパフォーマンスが落ちてしまいます。すると、それが翌日の仕事のエラーにつながるため、結局はマイナスになるのです。
その他、睡眠不足の上司ほど部下に侮辱的な言葉を使うという、睡眠不足と怒りの関係性を示すデータも示されていました。これは教育のところでも述べましたが、これは教育現場でも知っておくべきことだと思います。
また、6時間以内の睡眠時間の人は認知症リスクが3割高まることも示されていました。ライフワークバランスについて本気で考えなければいけないというエビデンスが多く示されていたので、ぜひご覧になっていただきたいと思います。
1日の心身の疲労は、その日のうちに回復させることが大切
労働科学研究所、佐々木司慢性疲労研究センター長の研究結果です。1日の心身の疲労は週末に溜め込むのではなく、その日のうちに回復させることが重要だと示されていました。
仕事の緊張感や面白さによって、疲労は容易に隠されてしまうことがあるそうです。そのため、会社が過剰な仕事を命じる場合はもちろん、働く側が仕事に生きがいを感じる場合には、休むことの重要性を思い出す必要があるとしています。
人間は一晩に眠ったとして、肉体の疲労は眠りの前半に回復し、ストレスは後半に解消すると書かれていました。
まとめ:キーワードは「フラットな関係を構築する環境」と「十分な睡眠」
科学的根拠に基づくウェルビーイングの大切さ、それは会社の個人の働き方改革に留まらず、会社の利益につながり、個人に関わる家族なども幸せな環境に変わることで社会全体の幸福度が高まることもわかりました。
「頑張れるだけ頑張った方が良い」というのは、高度経済成長期のような人口増加時代には非常に有効(長時間労働に耐えられる男性が有利だった)であり、労働人口が極端に減少している時代においては、多様な生活をしている人(育児、家事、介護など仕事以外にいろんな事情を抱えている人)が総力を結集して効果を出していかなければいけません。
忖度が起こる場面では、自分の本当の思いを口に出すことはできません。また、睡眠が十分に取れていないとストレスが溜まった状態が続いて、他者に対して暴言を吐きやすくなったり、仕事の質そのものが低下することにつながっていくのです。これらについては動画の中でしっかりとエビデンスが紹介されているので、ご覧いただきたいと思います。
これらの考えはビジネスの現場に限らず、家庭でも教育現場でも必要だと思いました。
動画の中でも述べられていましたが、給特法による残業過多な状態で働く教員は、クリエイティブな発想をする余裕を奪われてしまい、睡眠不足によるストレスを子どもたちに知らず知らずのうちに向けてしまい、厳しい言葉を発したり指揮命令型の教育をすることにつながっています。
そういった環境で育った子どもたちが社会に出てから、社会で求められるような力を発揮できるはずもなく、負の循環は家庭や社会に浸透していくのです。いろんな物事がつながっているという認識を大切にし、フラットな関係での対話と休むことをより重視しないといけないということを考えることができました。
そういったことを自分の教育実践にも活かしていきたいと思います!!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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