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オンライン生活の中のオフライン-『21 Lessons-21世紀の人類のための21の思考』から学んだこと① 【Aflevering.134】

 これまでにユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書を読んで感じたことを記録してきました。
 私がこれまで記録してきたのは、
『サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福』(以下、『サピエンス全史』)
『ホモ・デウス-テクノロジーとサピエンスの未来』(以下、『ホモ・デウス』)
についてです。

 そして今回からは、『21Lessons-21世紀の人類のための21の思考』(以下、『21Lessons』)を読んで感じたことをまとめていきたいと思います。
 ユヴァル氏の著書は、人類の現在・過去・未来を歴史学的に分析しており、私はそれを読む中で非常にたくさんの学びがありました。特に現実と虚構のバランスについて書かれているのがとても印象的でした。
 そして今回の『21Lessons』では、現代を生きる私たちがこれからの社会を考えるために必要なことを、21の観点から述べられています。
 この記事では、「テクノロジー」と「政治」について考えたことをまとめておきたいと思います。

国家からグローバルへ

 近代以降、ナショナリズムによる国民国家が成立し「国家」というまとまりができました。そして、その中で多くの人々は国民という意識を持って生きるようになりました。それが国家間の争いを引き起こし、そうした争いの時代を経て、経済のグローバル化に伴って政治のグローバル化も並行している状態です。

 しかし、国家とグローバル化は相反する働きを持つ時があります。ユヴァル氏は、「身内とよそ者」に分けるからこそ国民という意識が生まれるのであり、それが過剰になると排他的な考えにつながる危険性があると指摘しています。
 また、その意識を利用しグローバルな課題を「よそ者」のせいにして、国民の団結を強めようとすることも起こりかねないことを示しています。

 先日、グリーンランドで初の降雨が観測されたということで、いよいよ地球の環境問題についても考えなければならないと私個人としては強く感じています。
 しかし、ユヴァル氏が本書で指摘したように、私たちの選択や行動が、地球のどこかに影響をもたらしていることが実感しにくいため、具体的にどんな行動を起こせば環境に配慮した行動になるのかが不明です。

 それでも、人類が環境問題のような地球規模の問題を解決するには、グローバルな関係が必要になるのは明らかです。そして、そのグローバルな関係の中で、一人ひとりが気づいて考えて行動できる能力と機会が重要だと感じました。

「オフライン」のつながりで幸福度が上がる

 私たちの多くは、インターネットによるつながりが不可欠な生活を送っています。それは、オンラインのネットワークが私たちの「虚構」の中に取り込まれ、それありきの生活になっているからなのです。

 私もインターネットを活用して、世界各地の子どもの日本語学習サポートをさせていただいています。離れていても学習に困っている子どもたちの力になれることはとても嬉しいことです。確実に私も高度情報社会の恩恵を受けています。

 しかし、その一方でユヴァル氏はオフラインでの自分の身体感覚や現実のつながりを疎かにしすぎると、幸福には生きられないという指摘をしています。
 仕事や生活の一環でインターネットを有効に活用することは良いことかもしれません。しかし、自分の身体的な感覚を感じる時間や、目の前にいる人とのつながりを大切にすることが、幸せな人生につながるということを改めて学びました。

 仕事の延長線上で、私はついオンライン環境に浸ってしまいます。しかし、オフラインでの生活も大切にしたいと思っています。
 私はオランダに来て、スマートフォンの1ヶ月あたりの通信量をかなり下げました。これまでは月20GBの契約をして、何かあるごとにスマートフォンを見ていたように思います。しかし、今はプリペイド形式で、使うごとにお金が請求されるようにして、外出先で必要でない時はスマートフォンを使わない生活を心がけています。
 そうすると、電車で外の景色を見ながら家族と話をしたり、外にいる時は街をぼんやり眺めたりして、リラックスできています。
 何かあるとすぐに調べたくなって、少し不便に感じる時もありますが、その不便をあえて味わう感覚も大切にしています。

 ただ、道に迷っている人や言葉が通じない時に翻訳機能が使えないので致命的です。それでも、何とか電子機器に頼らずコミュニケーションを取ろうと頑張っています。

関心が持てた本書の内容

・政治家への質問
・善きサマリア人の寓話
・宗教と経済の関係

 冒頭でも述べましたが、本書は現代社会のあらゆる「虚構」について分析されています。そのため、私たちが無意識に通り過ぎてしまっている事柄について、改めて考える機会を与えてくれました。
 考えるためのヒントを活かし、子どもたちと未来について考えて話し合える機会を授業の中で作っていきたいと思います。

<参考文献>
・ユヴァル・ノア・ハラリ、柴田裕之訳『21 Lessons-21世紀の人類のための21の思考』(河出書房、2019)

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