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イヤホンに内蔵された磁石の働き〜IGCSE生と学ぶ理科の「磁気」【295】

 インターの中学校(IGCSEのカリキュラム)に通う生徒の授業記録です。今回は、「磁石が身近に使われている例について調べる」という課題のサポートをさせていただきました。

IGCSEとは?

 IGCSEとは、ケンブリッジの国際教育プログラムのことで、世界中で認められている国際的なカリキュラムの1つです。こちらの学習もIBと同様に、探究的な学びが提供されているように感じます。

私の役割

 私が日本語のサポートをしている生徒はIGCSEの学校に通っています。先日、理科の授業で「磁石の実用例」を調べる課題が出されました。一般の授業では、棒磁石を使った磁石の働きとして学ぶことが多いですが、現実世界で磁石がどのように使われているのかを調べて、それをまとめるのが今回の課題です。

 私の役割は課題の代行ではなく、課題を進める上で必要な知識や情報の集め方を一緒に考えるサポートをすることです。あくまで生徒自身が自分で考えたり調べたりするのですが、その方法に間違いはないのか、そもそも理科の知識を日本語ではどのように考えるのかについて、チューターの役割として学ぶ時間を提供しています。

課題の内容

 磁石が生活の中でどのように使われているのかを考えようというものです。課題の中に設定された細かい質問としては、以下のようなものがありました。

実際に使われている磁石の使用例を用いて、
①「磁石がなぜ必要なのか」と、「それがなぜ役に立つのか」に焦点を当てて紹介すること
②この磁石を作るのに必要な材料は何か
③この磁石がどのように機能するのかを示す回路図
④磁石がどのように作動しているのかの仕組みをまとめる

ヘッドホン・イヤホンの構造を調べる

 まずは授業で学習した磁石の働きがどのようにして製品に使われているかをリサーチします。最近は、メーカーのHPで製品の構造や仕組みについて詳しく説明してくれているページがあるので、専門的なことでもとても学びやすいです。私自身も磁石や電磁石の知識はありますが、イヤホンの中で磁石がどのように動作しているのかを調べたことはなかったので、生徒と一緒に調べることにしました。

 私がいくつか調べた中で、"audio-technica"のHPが分かりやすかったので、これを生徒と一緒に確認しました。こちらにもシェアしておきます。

次にシェアしたページでは原理的な話から書かれていて、仕組みや回路について学ぶことができました。課題でなくとも読むのが面白そうです。

 これらの情報にアクセスすることで、イヤホンの中がどのような構造になっていて、磁石と振動板の動きによってどのように音が生み出されるのかを確認することができます。授業で確認した電磁石の働きについて復習をしながら、こちらからも日本語で解説しながら理解を深めていきます。

最終的に、生徒は学校で習ったことが何となく分かった気でいたようでしたが、このように現実世界での働きを感じることによって、より学びが深まったと感じたようです。普段何気なく使っているイヤホンの仕組みと、学校で学んだ磁石の知識が繋がったことで、現実世界を見る視野が今回も深まったのではないでしょうか。

現実世界とのつながり

 今回の課題のサポートをして大切だと感じたことが、授業で学んだ知識を教室や教材の中に留めておくのではなく、現実世界でどう使われているかを確認することが大切だと思いました。

 今私が読んでいる書籍『学習する学校 子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する』においても、「教室での学びが現実世界とのつながりを見落としがちだ」と書かれていました。こういった学びの現実世界との乖離は子どもたちの学習意欲の低下にも影響します。

 私自身も磁石や電磁石の説明だけではなく、今回のようにイヤホンという生活に使われているものの中でどのように使われているかを知ることができましたし、身近なものだけに多少難しいことが書かれていても「知りたい」という気持ちで辛抱強く学ぶことができたと感じています。

「知識」はインターネット上に無数に存在する

 生徒の課題のサポートをしていると、「知識の習得に偏った学び」がもはや必要のないものだといつも感じます。今回の課題でも、調べてみるといろんな知識をすぐに手に入れることができました。大切なのは、その知識をどのようにまとめて、他者に伝わるように表現することです。そのため、知識だけ世の中から切り離されたものとして学校で学ぶことの意義がなくなりつつあることを改めて痛感させられました。

 今私たちが暮らす社会は「知識基盤社会」と言われ、知識を身につけることではなく、知識の活用が重視されるようになっています。しかし、未だに学校では知識の定着だけで学習が止まっている学びの場もたくさんあります。そこで、「社会で求められていることと、学校で教わっていることが違う」というのは子どもたちが一番感じていることかもしれません。今回の課題をサポートするにあたって、単純な知識として終えることなく、それが日常生活でどのように活用されているかを知ることが、むしろ知識の定着をより促すようにも感じました。

 もちろん、情報の信憑性については判断できる力(情報リテラシー)も付けなければいけません。こういった力は社会に出てからも必要になります。そういった社会に出てから必要な力を学生の間に養っておくことで、社会に出る準備を進めることができます。

 IBやIGSCEの生徒たちの学びを見ていると、日々私たちの周りにある世界を意識しつつ、自分たちの世界が広がっているように感じます。これからもそんな学びを日本語でサポートしつつ、私自身も学び続けていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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