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児童書は老眼に優しい

いつものように隣町の図書館に行く。

新刊コーナーをざっとながめた後、児童書コーナーも物色する。
この前子どもたちに「オツベルと象」(宮澤賢治)の概略を演劇風?に話したときに、白象が「サンタマリア」と言ったり象たちが「グラガアガア」と言うのがみんな「??」だったので、私も話しながら自分の記憶が不安になり、ホントにそういう内容だったか確かめるため幾つかの絵本を手に取る。
結果、記憶が正しかったことがわかり安堵する。やはり10代、20代のときに読んだ内容は意外と忘れてない。今は1時間前の記憶も自信がない。

ふと、洒落た装丁の本が目に止まる。エドガー・アラン・ポーの「黒猫」。最近出た本みたい。そういえばポーはほとんど読んだことがない。江戸川乱歩の「少年探偵団」は全部読んだのに。明智先生ばんざーい、小林団長ばんざーい。
すごく読みたくなる。こういうとき図書館は気楽でよい。借りよう。若いときは児童書のアンソロジーなんかちょっと下に見ててわざわざ当時ものの全集とか買ったりしたけど、よい意味でこだわりがなくなってきたので何の抵抗もない。(これを読みたい小学生から横取りするような罪悪感は少しだけある) 
早速自宅に帰って読む。イラストはスカイエマ。最近よく見ますね。カッコいい。ちょっとビアズリーっぽくてよい。
(今の少女漫画は遡ると大抵ビアズリーに行きつく気もする。意識的にせよ、無意識的にせよ)
小説の挿し絵って、たとえ扉絵だけでもその世界を左右するから重要だよね。中学生のとき読んでた「宇宙皇子」はいのまたむつみ先生のおかげで全巻読めました。
閑話休題。
黒猫。
字が大きい。老眼にはたいへん読みやすい。更に仮名が振ってある。難しめの単語には説明まである。さすがにそこまでは要らないと言いたいが、ないよりあった方が断然よい。
早速1話目の「黒猫」を読む。挿し絵の雰囲気もあり作品世界に没頭できた。

いやー、怖い。若いときに読んでたらトラウマになるかも。・・・いや、むしろ今だから怖いのか。酒の魔力、一つ間違うと落ちるところまで落ちる、誰でもあり得る世界。猫が怖いのではなく、主人公の心持ちに共感してしまうのが怖いんだ。 
ほかの作品も同様の「自分もなるかもしれない怖さ」がある。

たぶん今読むことに意味があるんだろうな。若いときは江戸川乱歩で止めといてよかった。明智先生ばんざーい、小林団長ばんざーい。

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ホラー・クリッパー ポー短編集 黒猫
文 にかいどう青
原作 エドガー・アラン・ポー
絵 スカイエマ
ポプラ社
2024年2月

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