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生物多様性 × 地域創生 × 共創型事業でイノベーション(わくわく)を

私が代表理事を務める一般社団法人MITは、2013年3月に対馬で設立し、対馬を拠点に地域の資源、魅力や誇りを “みつけ・いかし・つなぐ”事業を11年間行っています。その間、本当に多くの方々に支えていただきましたことに深く感謝しています。

noteにもこれから色々と綴っていきたいと思いますが、私の原点は、幼少時代に海の生態系の頂点にいる海洋哺乳類のシャチの虜になったことにあります。少年時代はシャチにとにかく夢中でした。その後、琉球大学に進学し、沖縄で生物多様性の魅力や価値を知り、東北大学・大学院でコウモリ(とシャチ)の音響・進化生態学で博士号を取得しました。多様ないきものたちの存在が私の心をわくわくで満たしてくれました。

​2013年から移住した対馬のくらしも、わくわくそのものでした。日本で三番目に大きな離島であり、森里海が一体となり、ツシマヤマネコを頂点とする多様ないきものが生息するここ対馬での暮らしは魅力や素材に溢れています。凪の日には、自分の船外機で大海原に15分繰り出し、大きなマダイやヒラマサを釣り上げて、自らの食料を調達できるほどの自然の身近さと豊かさ。対馬にしかいないツシマヤマネコや日本でみられる野鳥の半数以上に出会えて、プロ顔負けの写真が撮れるほどの自然の身近さと豊かさ。対馬の人にとっては当たり前のことが、私たちにとってはわくわくに溢れています。

日本全体で人口減少、少子高齢化、産業の担い手不足により地域創生は喫緊の課題となっていますが、対馬も社会問題に加え、環境問題(磯焼け、水産資源の枯渇、漂着ごみ、鹿の食害、里山の崩壊、生物多様性の危機等)が目白押しで、あらゆる地域課題が顕在化しています。しかし、見方を変えれば宝島です。課題先進地といえる対馬は、日本の縮図であり、新しい時代へ新しい価値観やイノベーションを起こす場として可能性が無限大です。

私は、MITの仕事を通じて、これまでに対馬市の総合計画や環境基本計画等、行政計画の策定業務を担当しました。ツシマヤマネコと共生する米づくりに励む佐護ヤマネコ稲作研究会の事務局や磯焼け対策としての食害・未利用魚の島内流通の仕組みづくり、放置された対馬の森林の再生と森林サービス産業の多主体連携による事業化(対馬もりびと協同組合の設立)、未来を担う地元子どもたちの環境教育・ESD推進などに取り組みました。事業を進める中で、素晴らしい仲間やパートナー、クライアントに恵まれ、異業種・異分野・多主体が横断的に連携することで、イノベーティブな成果が生まれ、日々わくわくが止まることはありません。

振り返ると、MITの10年は、対馬の森里海を舞台に、生物多様性と地域創生をかけ合わせ、自らは触媒-カタリスト-となり、多様な主体を繋ぎ化学反応を起こすことで、共創型のイノベーティブな新規事業を生み出してきたのではと思います。また、MIT独自の自主事業としては、イラストレーターであり、妻の吉野由起子のいきものたちの生命力の宿るイラストを付したポロシャツや雑貨等の制作・販売を行い、経営を支え、キャッシュを生み出す主要事業へと成長してきました。

私にとっては、「生物多様性の保全」と「地域創生」は、同時に解決したい課題です。

人間活動によって生物多様性は急速な勢いで減少しております。第6期の大量絶滅を迎えています。アルベルト・アンシュタインは、ミツバチが地球上にいなくなれば、人類は4年で絶滅すると警鐘を鳴らしています。生物多様性は、経済活動を行う上でなくてはならない自然資本であると同時に、事業や開発の制約やコストになる存在です。しかし、以前として、生物多様性は世の中で浸透せず、受け入れられている状況ではありません。

なぜ生物多様性は広がっていかないのでしょうか。

生物多様性は、遺伝子の多様性、種の多様性、生態系の多様性を包含し、難しい・捉えどころがないものであることが一つあると思います。そして、人類の生き残りをかけた、やらなければならない重たい課題であり、我慢や行動制限が必要と捉えられている部分もあるでしょう。生物多様性を守らなければならない。それは間違いではないですが、どこか説教くさく、意識の高い人や自然環境が好きな人、一部の環境系の役人にしか届かないメッセージになっていると考えます。

人々の日常や暮らしの中で、生物多様性を浸透させていていくにはどうしたら良いか。

ヒントは私の原動力である心の高揚感「わくわく」にあるのではと思います。

私の人生や暮らしは、「生物多様性」があったからこそ「わくわく」してきました。豊かな生物多様性の魅力や価値を感じ、わくわくしながら、地域創生につながる課題解決に取組みました。その結果、コミュニティ・社会の中での自分の居場所が見つかり、日々生きがい・心の豊かさ(=幸せ)を感じています。私と同じ気持ちを持つ人が世界中に増えていけば、わくわくの循環により、生物多様性が当たり前になり、自然共生社会の実現に近づくと信じています。

生物多様性で満たされる知的好奇心。そこから生まれる心の高揚感「わくわく」。

これからの10年間は、生物多様性でくらしにわくわくを届けることをMITのミッションとし、私もそれに尽力していきます。

そして、今後は、対馬に止まらず、多様ないきものがくらす世界自然遺産の地域・沖縄や奄美、知床等を拠点に、生物多様性のわくわくを広め、地域創生に資する事業を拡大していき、人といきものが共に豊かな地域社会の実現に貢献していきます。

10年間の経験を携え、自らは触媒-カタリスト-として機能し、みつけ・いかし・つなぐ戦略によって、多様な関係者と連携し、生物多様性×地域創生に資する共創的事業に取り組み、新しい価値創造=わくわく=イノベーションを生み出して参ります。


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