俺と師匠の情熱seitai life 始まりの始まり 7
「ヨシナリ東京に来い」
何通かのメールのやり取りの後、先生が言った。
「施術と人生の改造を手伝いたいと思っている。僕に一年、時間を預けてみないか?」
『東京』
20年前に音楽で喰うために上京し、コテンパンにやられ心も体もボロボロになった街。
行きます!と返信した後、ガタつく足をひっぱたき、頬も数回ひっぱたいた。ここで変わらなきゃいつ変わるんだ。もうチャンスはないかもしれない。
レジのお金を計算しながら必要な分をどう作るかまず考えなければいけなかった。これ以上の借金はできない。
交通費は高速バスで、宿泊、休憩はマンガ喫茶。ローンの残っていた車を売り、大事にしてたギター、ベース、音楽機材も全部売っぱらった。
しわくちゃの壱万円を握りしめ、20年ぶりの東京へと向かうバスへと乗り込んだ。
よく覚えている。
1万円の感触も、嫁さんが握ってくれたおにぎりの味も、初めて乗った高速バスのシートの匂いも。
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