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書評|『これから、絶対、コピーライター』黒澤晃(マスナビBOOKS)

広告・マスコミ業界を目指す人を応援する就職本シリーズ。それが宣伝会議のマスナビBOOKSです。

黒澤晃さんはコピーライターとして活躍し、日経広告賞の受賞など多数の輝かしい実績を残された博報堂のレジェンドクリエイターのひとり。

黒澤事務所を立ち上げて独立されるまで、博報堂で人事にも携わり、新卒・中途の採用、教育を担当されていました。武蔵野美術大学や文教大学の非常勤講師、宣伝会議のコピーライター養成講座の講師も務められています。

いわく「コピーライターになりたい人を、コピーライターにする本」です。

90分の講座50回ほどを一冊に凝縮した内容になったと思っています。

コピーライターとはどんな仕事をする職業なのか。社会でどんな役割を果たしているのか。いいコピーはどうやったら書けるのか。どんな人がコピーライターになれるのか。噛んで含めるように教えてくれていますので、広告業界にぼんやりとしたイメージしか持てていない人も、心配はいりません。

たとえば、1000人規模の総合広告会社でクリエイティブ局に所属している入社5年目の若手コピーライターの具体的な一日のイメージが時間軸に沿って紹介されていたり、職人的技術が必要なコピーライターに求められる「知的身体感覚」を磨くステップと発想のツボを押さえるコツを伝授してくれたり。章のおわりにはポイントのまとめがあり、ワーク式の課題も用意されています。

TCC新人賞の受賞者で、面白法人カヤックを経て、現在は株式会社コピーライターのCEOをつとめる長谷川哲史さんなど、6人が登場する「あの人にコピーライター道を聞いてみた」は,、業界の先輩がキャリアを振り返るインタビュー。学生時代に考えていた卒業後の進路、就職、コピーライターとして活躍するまでのプロセスが掘り下げられていて興味深く読めます。

そういえば黒澤さんは、アドタイでもこんなインタビューをされていました。2人のクリエイターに話を聞いた「自分を変えたくて、未経験からコピーライターを目指した。」というタイトルの記事です。

どちらのやりとりからも、若い人に期待して、成長と活躍を望み、応援し、未来を託したいと思っている人なのだと感じ取れます。

言葉はあなたを映す鏡です。あなたが魅力的であれば、言葉を磨くことを鍛錬しさえすれば、コピーは必然的に魅力的なものになるでしょう。ですから、まず自分らしさを見つめて、そのらしさに基づいて自分の魅力を発揮できるようにすること。若いときには、とても大事なことになります。それは、すべての就職・転職時に最大の武器になることなのです。

最終章は「2030年、コピーライターのある日」というショートストーリー。この本の初版は2015年12月ですが、まるでwithコロナ社会を予言したような内容になっていて驚かされました。

在宅でのワークスタイルがすっかり定着した今も、アイデアをぶつけあう打ち合せは、フェイスツーフェイスでおこなわれることが多い。人間は人間と触れ合うことで、脳は通常より20%ほど活性化する。それが定説になってきている。

そのなかで、コピーライターからキャリアチェンジして靴のブランドを立ち上げ、成功した女性に、こう語らせています。

「ひとが望んでいるものが何か、それを言葉で考えてきた経験は、オールマイティよ。つぶしが効くってこと」

『これから、絶対、コピーライター』。ちょっと大げさなタイトルですが、たしかにそうだよね、とうなずけます。学生や転職を意識している若いビジネスパーソンに、ぜひ手にとってもらいたい一冊です。


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