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記事一覧
ダフネ・デュ・モーリア「恋人」
本作は、鳥、という短編集に収められている短編です。当作者は、ヒッチコックに映画化された『鳥』というパニックサスペンス映画の原作で有名ですが、その作風はあまりサスペンスサスペンスしていないように思います。少なくとも、この短編においては、ハラハラするような展開はあるものの、わりと淡々と綴られている印象で、ドラマティックな演出はありません。しかしながら、それを補って余りある衝撃と憐憫とある種の清々しさ
もっとみる池田晶子「14歳からの哲学」
最近、池田晶子さんの本を読むことが多いです。本作を読んですっかりファンになりました。すでに鬼籍にはいられているようで、新作がでないのが残念ですが……。
タイトルの通り、本作の対象はすごく若い世代ですので、平易で読みやすい文体で書かれています。しかし、内容はすごく濃い。濃いがゆえに、ここで多くを書き記せません。よって、ひとつだけ、印象深かった部分を紹介します。
それは、「言葉」の章にあった、
C・プリースト「奇術師」
クリストファー・プリーストはイギリスのSF・ファンタジーを手がけるベテラン作家です。個人的な印象として、氏の作品はタイトルが短い。本作の「奇術師」はもとより「伝授者」、「逆転世界」、「魔法」、「双生児」などなどタイトルが短い。さらに本が分厚い。図書館などで氏の本がならんでいるのをみるとどの本も分厚いのです。個人的な意見として、「タイトルが短い」+「本が分厚い」=「内容がお堅いやつだろうからとっつ
もっとみるG・オーウェル「動物農場」
ジョージ・オーウェルは監視管理社会的なディストピア(ユートピア(楽園)の反対語)を描いた『一九八四年』や本作が代表作です。似たような世界観の作品は「オーウェリアン」と呼ばれるようになるほど社会的な影響度も大きく、著名な作者ですがわたしは今回『動物農場』で初めて著作を読みました。どうにも社会派な作家さんのようで『一九八四年』にしても『動物農場』にしてもかなり政治的なメッセージが強い作品になっている
もっとみるF・カフカ「カフカ寓話集」
一般に「変身」で有名な作者であり、その著作は世界中で読まれていますが、生前はさっぱりと芽が出ず、25歳でデビューしても鳴かず飛ばずで出版にもなかなかこぎつけず、やっと出版できてもほとんど売れなかったようです。役所に勤めるかたわらで小説執筆に集中するために、雑事に煩わされない実家で暮らし、家庭をもたず、勤めが終わると夜遅くまで小説を書いていたという彼の名声がはじまったのは、皮肉にも彼の死後、友人の
もっとみるS・キング「図書館警察」
スティーブン・キングは世界有数の人気作家であるとともにホラー界の重鎮でもある奇異な作家だと思います。なにせ、ホラーというのはこれまであまり脚光を浴びてきたジャンルではないからです。「へぇ~、趣味が読書なんだ。好きなジャンルは?」「ホラーです!」「あ……、そう……。変わってるね」となってしまうジャンルなのです。現に、「キャリー」というホラー作品でデビューしたS・キングでしたが、次作品「呪われた町」
もっとみる歌野晶午「絶望ノート」
歌野晶午は「葉桜の季節に君を想うということ」がベストセラーになって有名になったイメージです。作風からするとなんとなく若い作家さんなのかな、と思っていたのですが調べてみると1961年生まれ(!)ということで現在50代なかばのようですね。作風や文章に年齢は関係ないということでしょうか。ちなみに私は20代なかばですが、いかがでしょうか? せめて年相応の文章が書けていたら幸いです。
本書は、推理小説
三島由紀夫「真夏の死」
「真夏の死」は短編集のタイトルでもありますが、短編集内に表題作が収録されていたので、その一編についてつらつらと感想を述べたいと思います。
そもそも、なぜ感想文を書こうと思ったか。それは、最近になって物忘れがはげしいからです。いや、最近ではないかもしれません。物忘れがはげしくなったなあ、と思ったことすら忘れているかもしれませんから、ずっと以前からこうなのかも……。本を読むのは好きですから、時間があ