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ギャンブル依存症問題を考える会10周年記念フォーラムに参加して

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会10周年記念フォーラムに参加してきました。


公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 10周年記念フォーラム
日 時:2024年5月18日(土)14:00-18:00
場 所:銀座ブロッサム ホール
主なプログラム:
・松本俊彦さんの依存症についての講演
・相席スタートさんのネタ
・松本俊彦さん、相席スタートさんの座談会
・邦楽ユニットの演奏
・田中聖さんのメッセージソングの公開
・映画「アディクトを待ちながら」のPVの公開、トークイベント
・カウントダウン


印象的だったこと

印象的だったのが、依存症を抱える人の自殺の多さについてです。

依存症自体が自身や他者へもたらす害以上に、副次的に生じる生きることの困難から自殺に至ることの害があるということです。

これは、他の依存症にも言えることですが、依存が短期的には保護因子として生きることを助け、長期的には危険因子として生きることを難しくすると。

つまり、今日明日を生きるためには依存が必要で、生きることを助ける。一方で、長期的には自殺などのリスクになると。

これは、法律の問題、マスコミの問題、教育の問題と、さまざまな問題が重なってリスクを助長しているので、できることはまだまだ多いな、と思います。


考える会の挑戦

今回、ギャンブル依存症問題を考える会が、新しい挑戦をすることを発表しました。それが、次の3つです。


1 ギャンブルサイトのブロッキング

アプリをダウンロードすると、ギャンブルサイトにアクセスできなくなるというサービスをリリースするとのこと。

イギリスのフォーシーズンズ株式会社と提携し、「Gamban」というアプリを利用できるようにするそうです。

今とても危険性が指摘されているネットカジノ(違法です)への対策として、効果が期待できそうです。


2 ハームリダクション

ハームリダクション自体は、他の依存症でも用いられている手法です。依存症からの回復のステップとして、安全に依存することを目指します。

考える会では、大きく2つの活動を行うそうです。

まず、生活に困窮している場合に、1日1,000円の支給を基本的には10日間に渡って行います。ギャンブル依存症の場合に、家族はあえて支援しないことで、回復を目指すことがあります。その場合に、本人の生活が苦しくなることも少なくないそうです。そのような場合に、一日あたりの最低限の生活費を支給することで、生活を助けるというものです。

次に、住む場所がない場合に、宿泊補助をするそうです。公的支援が十分ではない状況で、考える会が行っていくことに踏み切ったそうです。


3 予防教育

ギャンブル依存症の始まりは、その多くが大学生の頃とも言われます。一方で、大学側はそのような認識に乏しく、予防教育が十分になされていないそうです。

そこで、実際の依存症の元学生やその家族が、母校に働きかけ、講演などを行うという活動を行っていくそうです。

まずは、大学がギャンブル依存症について認識を改めることが大事ですね。そのためにも、卒業生からの働きかけは、説得力があって効果的だと思います。


カウントダウンの感動

参加して驚いたのは、参加者のエネルギーです。

おそらく、家族会や当事者会でつながった方々なのでしょうが、互いに声をかけあって、にぎやかにしています。

また、販売物などの声掛けに活気があり、終始とても明るい雰囲気でした。


そのような明るい雰囲気の根本を見たような気がしたのが、カウントダウンでした。

カウントダウンは、薬物依存症の当事者会として知られるダルクで行われているもので、会の終わりに毎回するのだそうです。


まず、20からカウントします。20は、20年です。

司会者の「20」の掛け声とともに、参加者全員で1回手を打ちます。

そして、ギャンブルを絶ってから、家族会につながってから20年経った人は立ち上がり、それを全員で拍手をして讃えます。

次に、司会者の「19」の掛け声とともに、参加者全員で1回手を打ちます。

そして今度は、ギャンブルを絶ってから、家族会につながってから19年経った人は立ち上がり、それを全員で拍手をして讃えます。

それを、18、17、16……2、1と続けていきます。


そこからは、月です。「11」の掛け声とともに、参加者全員で1回手を打ちます。

そして、ギャンブルを絶ってから、家族会につながってから11か月経った人は立ち上がり、それを全員で拍手して讃えます。

それを、10、9、8……2、1と続けていきます。


そこからさらに、日です。「30」の掛け声とともに、参加者全員で1回手を打ちます。

そして、ギャンブルを絶ってから、家族会につながってから30日経った人は立ち上がり、それを全員で拍手して讃えます。

それを、30、29、28……2、1と続けていきます。

ここまでくると、みんなで手拍子をしながら、場を盛り上げ、立ち上がる人々を勇気づけます。


20年や10年と比べると、30日や10日なんて大したことがないと思えるかもしれません。

しかし、その大変さをみんなよくわかっているのです。その辛さがわかっているからこそ、いっそう彼らを勇気づけるのだと思います。それが、とても伝わってきました。

ここに至るまでの数分間、会場のあたたかい空気に、涙が止まりませんでした。ここまで肯定的で、勇気づけられる空間はなかなかありません。


当事者会の力

依存症について学んでいくと、医療や福祉にできることの限界を感じていきます。一方で、回復者の話を聴くと、当事者会の存在の大きさを知るのです。

これまでは、今一つ、当事者会というものがよくイメージできませんでした。当事者でなければ参加できないのですから、当然なのですが、今回の参加で、その一端を感じることができました。

特に最後のカウントダウンでは、「これは医療や福祉の何倍もの効果があるな」と体感しました。それほどまでに、圧倒的な力を感じました。

当事者会というのは、さまざまな領域で行われていますが、特に依存症に関わっての当事者会は、なんと強力なリソースなのかと、改めて認識することができました。


一方で、非当事者にだってできることはたくさんあるはずです。

まずは知ることから始めて、これからどんなことができるのか。よく考えていきたいと思います。


考える会では、寄付を募集しています。
新たな挑戦に対して、ぜひ協力をお願いします。


ギャンブル依存症問題を考える会



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