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ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話【読書のきろく】

この本との出会いは、Facebookの広告でした。タイトルと著者が気になって、図書館で予約して手元に届きました。
『鹿の王』や『精霊の守り人』シリーズの上橋菜穂子さんと、漢方医の津田篤太郎さんの、往復書簡。出会いのきっかけは、上橋さんのお母様の肺がんだったそうです。

母の介護に一緒に寄り添いながら、「生きること」に向き合うお二人。
おしゃべりのように、書きながら思いつくままに思考が広がる。でも、ひとりの相手に向けての手紙なので、一通の中で着地点に落ち着く。

僕たちの前に立ちはだかる、「なぜ生きるのか?」の問い。
そして、どうしてそんな問いを抱いてしまうのか?

終わりのある命を与えられた人間とAIとの対比や、遺伝子を次の世代に伝えるための「性」の営みとそれが生み出す悩みについても考えがおよび、生きることについて考えさせられます。

生きなければいけないが、生き続けてはいけない。その二律背反が必ず生じるようにできている。生物とは、誠に不思議なものです。
>p.160より抜粋

この不思議さのつじつまを合わせるために、物語が紡がれてきたのかもしれないというひらめきも、すごく興味深いものでした。物語に心惹かれる理由を、ひとつ教えてくれたようです。

手紙は、読む行為に時間的な「間」が生まれて、相手の言葉を拾いながら、丁寧に返事を書くことができます。そのやさしさも心地よくて、対談とは違うおもしろさと味わいがありました。

文庫化されたのは、今年の9月。コロナ禍に向き合う思いも新たに綴られて、読み応えが増しているようです。

追伸。
ネット上で展開されている、村瀬孝生さんと伊藤亜紗さんの往復書簡『ぼけと利他』も、本にならないかなぁ・・・

読書のきろく 2020年70冊目
「ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話」
#上橋菜穂子
#津田篤太郎
#文春文庫

#読書の秋2020 #読書のきろく2020

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