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【読書のきろく】マリス博士の奇想天外な人生

「PCR」を開発した博士の自伝がある。
それを知って、さっそく読みました。ちょうど市内の図書館も再開して、久々に借りた本です。

ものすごくおもしろかった!

PCR理論を開発し、ノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリス博士。
このPCRは、なんと交際相手とのドライブデート中にひらめいたもの。最初は、あまりにも簡単すぎて、すでに誰かが発明してるはずだと自分を疑ったそうです。
でも、それは、今までに誰も気づいていなかった。
調べれば調べるほど大発見だという確信が固まっていく興奮が、本の中からも伝わってきます。

PCRをひらめいたのは、1983年。そして、ノーベル賞を受賞したのが1993年。このおかげで、2020年に生きる僕たちが、新型コロナウイルスに対処することができています。
「感染症の診断にも利用できる」と書かれている、その通りのことが起きたわけです。

ノーベル賞受賞の年には 日本国際賞を受賞するなど、日本にも縁があり、当時の皇后陛下と気さくな会話を交わした様子も描かれています。
また、難しい専門用語を使った説明ではなく、ふつうの人の、ふつうの生活で、どのように役立つかを、ふつうの言葉で話すという姿勢を貫かれていて、親しみを感じました。

子どものころから実験が大好きで、疑問を持ったことは納得いくまで自分で調べる。クリスマスプレゼントに科学実験セットを選び、火薬を合成し、自作ロケットも飛ばす。当然、失敗も多くて、大きな木を丸ごと火事にしたり、小学校を回る化学ショーで子どもに大ケガをさせたこともある。
「科学とは楽しみながらやること」と信じて、興味を持ったことにとことん向き合ってきたから、歴史的な大発見に気づくことができたんでしょう。

オゾン層破壊、地球温暖化、健康食品、薬物、占星術、などの話題も出てきます。利害関係や世間の一般的なイメージにとらわれず、事実だけを追い求める姿は、とても魅力的です。
思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る、『ファクトフルネス』の実践者でもあると思いました。

今回読んだ単行本版の表紙は、自宅近くの海岸でくつろぐ写真。文庫本は、大好きなサーフボードを抱えた写真が表紙を飾っています。当時、「サーファーがノーベル賞獲得!」と話題になったそうです。
心のおもむくままを信じて行動する。そして、人生を楽しむ。
原題の Dancing Naked in the Mind Field には、そんな意味が込められているような気がします。

自分は何かにそこまで夢中になれているか?
子どもたちに、そんな環境を提供できているか?
読んでいるうちに、心の中にそんな問いかけも生まれてきました。

本の最後で語られている博士の言葉も、とても大切なことを教えてくれます。

人類ができることと言えば、現在こうして生きていられることを幸運と感じ、地球上で生起している数限りない事象を前にして謙虚たること、そういった思いとともに缶ビールを空けることくらいである。リラックスしようではないか。地球上にいることをよしとしようではないか。最初は何事にも混乱があるだろう。でも、それゆえに何度も何度も学びなおす契機が訪れるのであり、自分にぴったりとした生き方を見つけられるようにもなるのである。

>本文 p.250より引用

マリス博士は、残念ながら去年の8月に亡くなられています。
もし今も存命なら、新型コロナウイルスに対して、どんな風に語ってくれるんでしょうか。
とても気になるところです。

読書のきろく 2020年37冊目
「マリス博士の奇想天外な人生」
#キャリー・マリス
#福岡伸一
#早川書房


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