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わが盲想【読書のきろく】

人生を聞く楽しさと、想像すること不思議な力を教えてくれる

著者のアブディンさんは、スーダン人です。でも、この本には翻訳者がついていません。しかも、本人は全盲です。
読み終えて、改めて冷静に考えると、そんな本が目の前にあるってすごいことですよね。

でも、そんなことまったく問題じゃないよと全身で表現してくれるかのように、読み始めてから終わるまで、テンポよく、おもしろおかしく、そして感動で胸が震える話を見せてくれました。

 この本は、(中略)、目で見たことのない日本を、見えない世界でどのように想像してきたかを読者のみなさんと共有したくて書くことにしました。
 盲人であるぼくの「盲想」が作り上げた日本像と、実世界の日本を比べつつ、楽しんでいただければうれしいです。

>『わが盲想』p.5「はじめに」より

確かに、色に関する描写は出てこなかった気がします。「って、○○さんが教えてくれた」みたいな表現はあったけど。

それでも、アブディンさんが出会う人たちや、行った先々での出来事は、とても豊かに迫ってきます。目が見えない彼が感じ取ったものがことばに変換され、それが文字になって読者の頭の中にイメージを作り上げる。不思議なプロセスです。
もうその沼からは抜けられないんですね、と言いたくなるダジャレも次々に炸裂して、大変な状況も笑いに変えてくれます。アブディンさんがもともと持っていた勤勉さや行動力と、出会った人たちのご縁が重なり、その接点に運よくユーモアが存在していたから、こんな素敵な本が生まれました。
アブディンさんは、そんなつもりで書いたんではないと思いますが、彼の人生に引き込まれながら、自分の視野の狭さを見せつけられた気がします。世界をおもしろくするのも、つまらなくするのも、自分次第なんてことも考えさせられました。

今、僕の手元にこの本があるのは、地域でお世話になっている人から借りたから。会議で会った時だったかな、「今までと違う感じだけど、おもしろかったよ」と渡してくれたんです。確かに、今まで借りた本とは違った雰囲気を持っていて、そして、おもしろかったです。
読んでいる間は純粋に話しを楽しみ、読み終わってそのすごさにドキッとする本でした。

文庫本の表紙に立っているのは、きっとアブディンさんご本人でしょう。
単行本の表紙には、写真がありました。やさしそうな笑顔が素敵ですね。

読書のきろく 2021年52冊目
『わが盲想』
#モハメド・オマル・アブディン
#ポプラ文庫

#読書のきろく2021

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