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ダックスフントのワープ【読書のきろく】

自分と同じ名前の作家さんの作品。同名タイトルの作品を含む、4つの短編が収録されています。
緊張感と疾走感を楽しんだ『テロリストのパラソル』に続いて、2冊めを読み終えました。

どちらも、主人公の男性の冷静さは共通してるけど、印象が全く違います。

先に読んだ『テロリストのパラソル』は、クールでカッコイイ感じ。
今回の『ダックスフントのワープ』は、冷たくて残酷な感じ。
すごくざっくりとした、僕の感想です。

『ダックスフントのワープ』の主人公は、大学の心理学科に通う青年。自閉的な少女の家庭教師を引き受けています。と言っても、教科の勉強を教えるのではなく、心を開くための話し相手としての依頼。少女の心に対するアプローチは、創作の物語を語りながら会話すること。
父の再婚相手が自分と10歳しか違わない少女の心の変化も、家庭教師をする時間に生まれるその物語の行く末も、どちらも目が離せません。

広辞苑が好きな少女の境遇と心境、担任の女性教師、創作の物語に出てくる、ワープした老ダックスフント、たどりついた砂漠、ゼンマイ仕掛けのアンゴラうさぎ、希望を嫌う邪鳥(よこしまどり)。それぞれが、何かの象徴なんだろうなと思いながら読んでしまうのは、主人公の青年が心理学科に通うという設定だからでしょうか。
それ以上に、「心の動き」を、分析の対象として冷静に扱っていると、冷酷、そして残酷さにもつながっていくように感じてしまいました。動揺しないことは必要な要素かもしれないけど、心を閉ざして動揺のない生き方を得るのは、切ないものです。

カウンセラーは、突き詰めると冷たい存在かもしれない。
以前、そう考えていたことも思い出しました。

他の3編も含めて、それぞれの物語は分かりやすいハッピーエンドではなく、読んだ後に思考が動き出す。そんな作品でした。

読書のきろく 2020年66冊目
「ダックスフントのワープ」
#藤原伊織
#文春文庫

#読書の秋2020 #読書のきろく2020

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