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こゝろ

「最近どんな本読んでる?」
地域の人とのそんなやりとりの中に、この本が出てきました。

「教科書に出るような作品は、大人になって読むと感じるものが違いますよね」と話が盛り上がると、読みたくなりますね。名前を知ってても読んだことのない作品が多いので、読みたい本はどんどん増えていきます。

夏目漱石の『こゝろ』は、初めて読んだのは5・6年前。「心に関する仕事をするならぜひ読んだ方がいいよ」と、友人に勧められたのがきっかけです。その時はこわい物語だと思ったけど、改めて読み返した今の方がおもしろかったです。さすが歴史に残る名作!ぐんぐん引き込まれました。

舞台は、明治から大正に移り変わろうとする時代。「私」と「先生」、そして二人の身近な人たちが登場します。
「先生」の過去を知らない「私」にとっては、近づきたいけど遠い存在だった先生。「遺書」によって心に秘められていたことが語られて、先生の振る舞いの意味と大きな葛藤を知ることになります。

若くて未熟な学生時代に、恋愛感情と友情にゆれ動く心。そして、誰の心の中にもありそうな、自分が優位に立ちたい気持ちと、心の弱さやズルさ。かけ引きを考えれば考えるほど深みにはまり、タイミングを外してしまう。
そして、物語の中では、友人の死をきっかけに罪の意識に支配され、心を閉ざして葛藤の中に生きる姿が描かれています。行きつく先は違うにしても、相手の反応にゆれ動く心は、自分の中にも思い当たる部分があるから、抜けられない感覚になるのだと思いました。

心の純粋さ、弱さ、ズルさ、罪の意識、恋愛感情、葛藤、恐ろしさは、令和の時代にも通じそうです。

物語は「私」が「先生」を振り返る思い出から始まり、「遺書」の中で「先生」が語る思い出によってすべてがつながる。その構成もおもしろかったです。
学生時代に読むのもいいけど、大人になってから読むとまた味わい深くなる作品だと思います。作品のタイトルを「こころ」としたところがすごい。


読書のきろく 2020年29冊目
「こゝろ」
#夏目漱石
#角川文庫


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