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悩んでもいいよって、教えてみようかな【 #こんな学校あったらいいな 】

僕の学校には、4年生になったら『お仕事の学習』がある。

毎年、いろんな人がゲストティーチャーで来てくれて、お仕事の話をしてくれる学習だ。今年は、カウンセラーの先生。去年は、パン屋さんだったみたい。パン屋さんパンを作っている。カウンセラーってどんな仕事なんだろう。僕の学校にもスクールカウンセラーの先生がいることは知ってるけど、会いに行ったことはない。どんなことを話せばいいか分かんないし、相談しに行ってるところを友だちに見られたら、何か言われるかもしれないから。

カウンセラーの先生は、男の先生だった。ちょっとぽっちゃりして、ニコニコしていた。僕たちと同じ、4年生の子どもがいるそうだ。

「カウンセラーの仕事は、お悩み相談と言ったら分かりやすいかな?」
先生が話し始めた。
「悩んでいる人のお話を聴きながら、今、どんな気持ちなのか、何があったのか、どんな風になれたら嬉しいのかを一緒に考えます。その時に、一番大切にしていることがあります。何だと思いますか?」
先生の話が、少し止まった。僕は考えてみた。元気になれるように、頑張れって言ってあげるのかな。

「一番大切にしているのは、『悩んでもいいですよ』って伝えることです。こんなことで悩んでたらダメですよね、って言う人がいます。でも、悩んでる自分がダメなんだって思っていたら、実はなにも解決しなくなるんです。」
先生は続けた。
「いつでもどこでも、ポジティブに考えなさい、って聞いたことがあるかもしれないね。それも素敵なことかもしれない。だけど、悲しいこと、つらいこと、いやだなって思うこともあると思います。それが人間です。そんな風に見えないって言われるけど、私だって悩みます。」
先生は、みんなを見まわして、ニコっとした。

「みんなも、頭を上からグーって押さえつけられたらイヤだよね。それと同じで、悩んだらダメだって気持ちをグーっと押さえつけたら、イヤなものが心の中にたまります。急に元気が出せなくなったり、本当は仲良くしたいのに誰かを攻撃してしまうような、悪い影響につながります。」

「悲しいな、つらいな、いやだなって、まず自分の気持ちに気づいてあげることが大事。悩んでるときは、悩んでるんだなって。時間をかけてもいいので、自分がどう感じているかを自分で分かってあげる。『気持ちを受け止める』って言います。そうすると、気持ちが安心して、どうしたいかを自分で考えられるようになります。」
僕はいつの間にか、先生の話に集中していた。みんなもそうだったと思う。

「悩んでもいいんだよって、自分や周りのお友だちに言えるようになったら、もっと楽しく過ごせるような気がしませんか?
相談って言うと、難しそうとか、恥ずかしいって思うかもしれませんね。だけど、ちょっと聞いてほしいんですって気軽に言えたら、子どもも、大人も、暮らしやすくなると私は思っています。だから、悩んだり、ちょっと休憩したりするのが、ふつうになるのを目指して、私はカウンセラーの仕事をしています。」

悩んでもいいという考え方があるなんて、びっくりした。
悩むのは、ダメなこと。悩むのは、心が弱いから。もっと強く、もっと頑張らないといけない。
今までそう思っていた。

先生の話を聞きながら、ふとお母さんを思い出した。
毎月、月のはじめは仕事が忙しいから、帰りが遅い。ほかにも、時々パソコンを持ち帰ってきて、晩ご飯を食べた後に仕事をしている。弟が近くに行くと、「今はやめて、仕事してるから。お兄ちゃんたちと遊んでて。」と言う。僕は正直、弟にこっちに来てほしくないときもある。弟と一緒だと、ゲームが好きなようにできない。失敗ばっかりしておもしろくなくて、「あっちに行って」って言うと、お母さんに怒られる。ケンカしないでとか、今の言い方はダメとか。
弟が嫌いなわけじゃない。でも、いつも仲良くしてないといけない、というのはおかしくないかな。不思議だ。そんなこと言ったら、また怒られそうだから言わないけど。僕はイジワルな人なのかなと考えると、重たい気持ちになってしまう。これが悩むってことなのだろうか。

夜中に目が覚めておしっこに行ったとき、まだパソコンで仕事していたこともある。お母さんは、もう少しで終わるから大丈夫だよと言っていた。ニコっとしてくれたけど、本当は大丈夫じゃない時もあったかもしれない。

もしかすると、お母さんも悩むことがあるんじゃないだろうか。
そんな時、どうしてるんだろう。誰かに相談しに行ってるのかな?
先生は、気持ちを受け止めたら安心できるって言ってる。

お母さんに、悩んでもいいよって、教えてみようかな。

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