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ICT機器の使い方を教える前に

2021年の5月の話です。
ある小学校からのご相談。

クラブ活動で「情報クラブ」があり、子どもたちにも人気がある。
1人1台のChromebookをいかして今後の活動を充実させたい。
どうしたらいいでしょう?

ICTを使って学校でできることは大きく2つと僕は答えます。

  1. ICT機器などの使い方を学ぶ

  2. ICT機器を使って、何かを成し遂げる

です。
僕は2が大事だと思っています。
ICTは「使い方」より「活かし方」です。

ICT機器などの使い方を学ぶ

例えば、タイピングやプログラミングを学ぶのは「使い方を学ぶ」です。
多くの子どもたちはゲーム感覚で学べるのでプログラミングが好きです。
論理的な思考の育成にも繋がりますし、
今後はある程度のプログラミングの知識は一般教養になっているでしょうし、
優秀なプログラマーの育成は国家の経済浮沈を左右するため、
先進国が国策として育成に力をいれています。
クラブ活動で楽しく学ぶのも良いのではないでしょうか。

HOUR OF CODE

この時ご相談の小学校へは HOUR OF CODE を紹介しました。
世界中で使われている子ども向けのサイトです。

全員がCODEを書く必要があるか

ただ、プログラミングが一般教養になったとしても、全員がCodeを書けるようになる必要はないと思います。
Codeを書く作業はAIが代用し
「使って創る」が大半の人の作業になると思います。
みんなに必要なのは、”しくみ”の理解。
もちろん、一部の優秀なプログラマーの輩出は必要ですから、子どものうちから楽しく学ぶのは良いと思います。それはスポーツの世界や数学の世界と同様ではないでしょうか。

創作で普段のアプリの機能を学ぶ

情報クラブの時間にプログラミングではなく、ICT端末や普段の授業でも使用するアプリの使い方を学んで、教科等の時間の学習活動に活かすのも良いと思います。
いつものアプリで楽しい創作をしながら、アプリの機能を学ぶのです。
ご相談の小学校はChromebook導入校でしたから、例としてGoogleスライドのハイパーリンク機能を使った「おみくじゲーム」を紹介しました。

スライドを使ったおみくじゲーム

iPad導入校はKeynote、Windows導入校はPowerPointで同じものがつくれます。
シンプルなアプリケーションです。
画面上のオブジェクトを押し、他の画面に移動。
動作を加える対象と、その反応。
これが基本で、対象、配置、反応のデザインが創造力。

Springin'(スプリンギン)ならオブジェクトが手で描け、設定できる反応も様々。
楽しく学べます。
「プログラミングを学ぶ」の先の世界、「プログラミングを使って何を成し遂げるか」に役立つツールです。

Springin'

ICT機器を使って、何かを成し遂げる

ICTとPBL

ICTがあればPBL(問題解決学習)へ取り組みやすくなります。
学校内外でみんなが困っていることを解決するために、
ICTを使って成し遂げる学習です。
例えば、給食の食べ残しが増えて困っているので、ポスターを創って貼る。
落とし物が増えているので、みんなが見られるサイトをつくって写真を載せる。
などです。

情報モラルやリテラシー

ICTを用いたPBLでは解決の最中に様々ことを学べます。
「写真を撮る時に人が写り込んでもいいのか?」
など情報の取り扱いについて考える機会も生まれます。
情報モラルやリテラシーの指導の機会です。

ICTは「使い方」より「活かし方」

ICTの使い方を学ぶより、問題解決にICTを活かす中で自然と使い方が身に付く方が良いと僕は思います。
だって、所詮ICTは道具ですから。
プログラミングも然りです。
プログラミングを学ぶより、何かを成し遂げるためにプログラミングを用いる。
コードを書くことより、プログラミング的思考より大事なことはある。
「困っている人のために、ICTやプログラミングを使って何かつくれないかな?」
の思考が先だと思うんです。
キャリア教育ってこの思考の上に成り立つんじゃないでしょうか?

小学生のアプリ開発

「困っている人のために、ICTやプログラミングを使って何かつくれないかな?」
の思考が大切だと思うきっかけが2017年にありました。
あるiPhoneのアプリです。

「スマイルキャッチ」というこのアプリは、沖縄の小学校6年生(当時)が開発しました。
触ってみるととてもシンプルなアプリなのですが、開発の動機が素敵なのです。

■スマイルキャッチを作った動機
アプリを作るなら、人を笑顔にすることができ、役に立つアプリを作りたいと思っていました。私の身近にも、身体が不自由な人が苦労しているところを多く見て来ました。そのような人たちの中でも。人も耳の方が私の中で一番困っていると思ったので、このアプリにしました。

■このアプリを観てくれた方へ
このアプリを見てくださり、ありがとうございます。アプリの対象は耳の不自由な子供や、耳の不自由な親がいる子供などを対象として開発しましたが、未就学児などとのコミュニケーションにも使えると思っていますので、いろいろな人にぜひ使っていただきたいです。

APP Adviceより

「素晴らしい!」と思ったので、
沖縄へ行き、開発者の彼女とお母さんにお話をお聞きしました。
彼女は通っているプログラミングスクールでの学習としてアプリ開発に臨んだそうです。
アプリの着想は彼女のご家庭の日常の困り感にあり、それを拡大し、他の多くの人の助けになるアプリにしたそうです。
「学校のクラスの中でもそんなに勉強できる子というではないので、親として驚いています」というお母さんの話も印象的でした。
子どもが誰でも「誰かのために」という考えで、アプリを開発し、困っている人に届けられる時代になったのだと感じました。

ICTは「使い方」より「活かし方」です。
小学校でも「使い方」を教えることを念頭におかず、
誰かのためになるPBLの中でICTの使い方を教える方が、
世の中が楽しくなりそうです。

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