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第13回 時には思い切り、嘆こう ~十分に“嘆き”きれば自然と前に進みたくなる~

変化の時代の中で、課題解決、即行動、スピード、ポジティブに―。ビジネスでは、どれも大事なこと。でも、これらに気を取られすぎると、かえって前に進めませんよ、というお話です。

 

ある女性をキャリアカウンセリングしたときのお話です。(本人が特定できないように少しフェイクをいれています)
 その方は、ある部署で非常にやりがいをもって働いていましたが、異動で全く違う部署で仕事をすることになりました。以前の部署でまだまだやりたいことがあっただけに、ご本人としては“こころざし半ば”感が半端なく、非常に落胆しました。とはいえ、もともととてもやる気もある優秀な方でしたので、何とか気持ちを切り替えて、新たな部署での仕事を頑張ろうとしていました。でも、ふとした時に、なぜわたしは異動になったのだろう、もっとあの仕事をやりたかったのに・・・という想いがふつふつと湧いてきて、湧いてきては、「いけないいけない、今のわたしの仕事は、これだから!」と自らを奮い立たせて、今の仕事に取り組んでいましたが、何となくやる気が起きず、もんもんとされていらっしゃいました。

 話を伺う中で、彼女は何度となく、「とはいえ、こういう異動は、組織では仕方ないんです」「せっかく今の部署に来たのだから、気持ちを切り替えて頑張りたいと思っています」という、異動の事実を受け入れて前に進みたい、とポジティブに話されていました。これ、端から見たら、組織人として見習うべき態度かと思います。過ぎたことは仕方がないと受け止め(場合によっては再発防止策を取り)、今を精一杯頑張る。こうあるべき!と言いたくなりますね。

 でも、わたしが感じたことは、それとはまったく違うこと。異動になって、やりたいと思っていたことができなくなってしまったという深い深い悲しみ。もっとあんなこともやってみたかった、今までやってきたこともちゃんと見届けたかった、そういう心の叫びともいえる想いや感情が、話している間中、わたしには響いてきていました。本人がどれだけ前向きな言葉を言おうとも、心は全くそこに従っていない、というのがよく分かりました。

 こういう不完全燃焼の想いやネガティブな感情は、いくら見ないふり・感じないをしたり、頭を切り替えて今に没頭しようとしても無くなりません。いつも心や身体のどこかにあって、悔しいよ、悲しいよ、と訴えかけてきます。それを無視して走ろうとすればするほど、その傷はうずき、当然なかなか目の前のことに集中できません。そんな自分を責めて、もっともっと今やるべきことをたくさんやろうとすると、いつか心か身体を壊してしまいます。
 ではどうすればいい?前の部署に戻りたいとダメ元で志願する?そんなこと、組織ではなかなかできないですよね。

そういうときにやるべきこと。それは、「嘆く」こと。もっとその仕事をやりたかった!せっかく信頼関係を築いた仲間たちとも離れたくなかった!こんな部署に来たくなかった!そう思い切り「嘆く」のです。
 ついわたしたちは、「それやって何になるの?」という成果として目に見えないことに対しては、軽視しがちです、だから、嘆いたところで元の部署に戻れるわけでもないし、だったら前向きにならなきゃ、と思いがちなのですが、それは頭が考えること。心は、嘆きたがっているのです。
 だから、何か悲しいこと、悔しいことがあったときは、まずは存分に嘆いてください。嘆いたとしてもどうしようもないことだとしても。むしろ、どうしようもできないことだからこそ、嘆くのです。そうしないと、わたしたちは前に進めません。その気持ちを見ないふりをしたまま前に進もうとしても、必ず自分の中でブレーキがかかります。
 嘆くときは、人に聴いてもらうことも有効ですが、大事なポイントは、ネガティブな感情を持つことを自分に許可する、ということです。起こったことに対して、どう解決しよう?仕方がない、と頭を無理に切り替えようとするのではなく、“悲しい”“残念だ”、“悔しい”と感じることを許可して、思い切り悔しい!悲しい!と嘆くのです。今まであったものがなくなれば、喪失感を抱き、悲しみを感じる、これは当たり前のことなのです。当たり前に悲しみましょう。これが嘆く、ということです。
そうして、自分の中でしっかり嘆き切れば、自分の中で本心から諦めがつき、自然と前に向きたくなるのです。

 私自身、それを痛感したのは、出産でした。出産後、当たり前ですが、いろいろなことができなくなりました。夜に飲み歩く、思いっきり仕事をする、気分転換のカフェ、辛いタイ料理を食べる、友達との時間を忘れたおしゃべり、などなど(書ききれません)。それが想像以上に辛くしんどいことでした。
 でも、母親ってそういうものだし、みんな我慢しているし、子どもはかわいい訳だし、そんなこと思うのはワガママだ、仕方がないんだと気持ちを切り替えて過ごしていましたが、でも、あまりに諦めなければならないことが多すぎて、空虚感をぬぐえませんでした
あるとき、気づきました。自分は自分の気持ちをなかったことにしていると。そこで、思い切り嘆きました。やりたいのにできなくて悲しい!、これもやりたいのに!、なんで母親ばかり?、悔しい!と。
そうやって嘆いたところで、状況は全く変わりません。変わらないのですが、少しずつ、すこーしずつ、玉ねぎの皮をはぐように、まぁ、仕方ないな、確かに失ったものは多いが、得たこともそれ以上に多いし、何よりこれが永遠に続くわけでもなしに・・・、と心底から思えるようになってきました。

 わたしは異動になった彼女に伝えました。「本当は悔しいですよね?悲しいですよね?まずはそこをご自身で分かってあげましょう。そして存分に嘆きましょう。前向きになるのはそれからです」と。

 皆さんも、本当は悲しかった、辛かったのに、感じないようにしていることはありませんか?何か閉じ込めている感情はないですか?
 言っても仕方ない、どうしようもないんだと、頭で言い聞かせているようなことはないですか?
頭で「仕方ないんだ」と思おうとした段階で要注意ですよ!
誰にとっても「嘆く」ということは重要。弱くもなんともなくない。自然なプロセス。
前向きになる前に、まずはしっかりと嘆ききりましょう。

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