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【詩】豊穣なる大地・Ace of Pentacles

宇宙が生まれた時
軽いものは浮かび上がり
重いものは沈んでいった
最も重いものは固まり
大地という土台を形成した

宇宙の天と地という
質量のグラデーションの中で
物質質量として沈んだものたちは
肉体を持った私たちの
生きる世界を形成した

大地は生きる場であり
生きる糧を実らせ
豊かさのエネルギーそのものとなる

古代の宗教の多くは
豊穣をもたらす大地の母への
畏れと敬いからはじまっている
大地母神は生と死を司り
一度枯れた冬から
再生の春を迎えるように
冥界から帰還するだろう

大地が育む命の
終わりなき円環
大地母神の死と再生のテーマは
物質としての肉体を超えた
魂の不死性を暗示している

地母神信仰は元々の三つ組である
「父・母・子」の
母の要素を担っていたが
正統派を標榜する教会の
「父・子・聖霊」によって
一旦は表舞台から葬り去られた

だが大いなる母を求める人々の心は
黒い聖母信仰として残される
聖母マリア信仰は
土着の女神を吸収していったが
その純潔さに吸収され得なかった
原初的な地母神の横顔が
黒い聖母の中には宿っている

大地と結びついた
荒々しくて豊かな女性性
イナンナや
イシスや
キュベレーの横顔が

はじまりの1が
大地と掛け合わされると
地に足のついた
着実な一歩となる
豊穣なるエネルギーは
私たちが生きている
物質世界の中に宿っている

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