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【散文】17・星の光とアストラルライト

 明るく輝く星空の下、一人の女性がひざまずいて水差しの水を注いでいる。両方の手にそれぞれ水差しを持ち、大地と泉とに水は注がれる。片足は泉に浸し、もう片方は地面に膝をついた姿勢。これは節制の構図にも通じていて、大地が顕在意識、泉が潜在意識を象徴するとみなされる。
 遠景の小高い丘の上の木には一羽のトキがとまっている。トキはトート神を表す鳥で、死と再生のシンボルとされている。

 タロットの旅路は、死神、悪魔、塔と厳しいカードが続くゾーンをようやく抜け出したようだ。一度死して、内なる魔と戦い、これまでの価値観は崩壊した。いよいよ再生の道のりへと入っていくようである。
 星は希望であり、これから先の未来を描くという意味のカードだ。どちらかといえば、現状にはまだ満足しておらず、これから先の変化によって好転していくことを切望する気持ちが読み取れる。人生の意味や魂にとっての生きがいを見つけて、自分のゆく道が輝いていくことを願っている人のカードと読める。

 17番は1と7に分けられる。17という数字は中央の大きな黄色の星と、そのまわりの白い七つの星々でも表されており、一つの根源的光と7惑星天という天球層を表しているようにも見える。原初の光とそこから分かれた七つの天使のようでもある。
 17番・星のカードには宇宙の原初的エネルギーが七つの光線に分配されて、地上に降り注いでいるところがイメージされる。原初的エネルギー、それはアストラルライトだ。
 19世紀フランスのオカルティストで魔術研究家のエリファス・レヴィは、宇宙に遍満するエネルギーのことを「アストラルライト」と呼んでいる。物質界の向こう側には光明の世界があり、このアストラルライトこそ、あらゆるものの本性と力を構成していると考えた。故に、アストラルライトの知覚と統御こそが、魔術のことはじめであるとしたのだ。

 アストラルライトは原初の父の働きによって、下向きに投射される光だ。アストラル光は様々なシンボルによって表象されてきた。いくつかの例をあげればウロボロス、エデンの園の蛇、羽の生えたドラゴン、山羊……。悪魔のカードのバフォメットもまた、隠れた意味としてアストラルライトを表していた。
 さらにブラヴァツキー女史によって、アストラルライトは「アニマムンディ」と結び付けられた。アニマムンディとは世界霊魂と呼ぶべきものである。であるならば、星のカードに描かれている全裸の女性は、アニマムンディではないかと考えられる。

 アニマムンディは神の女性的創造力と言われ、雌雄同体、あるいは女性の姿で描かれることが多い。彼女の胸には太陽があり、腹には月がある。彼女の心臓は星辰や惑星に光を与え、子宮の中に吹き込まれる水銀的霊の官能力は、地球の中心にまで送られるという。大地と水に置かれた足は、硫黄と水銀の結合の暗示であるとも言われる。(『魔法と錬金術の百科事典』より)
 アニマムンディは霊魂を地上の生きとし生けるもの全てに与える存在だ。彼女の中の最も純粋な部分は神の光に繋がれており、下位の部分は物質世界と結びついている。タロットの絵柄の中で、地上と泉の両方に水を注ぐ彼女は、あらゆる生命体に霊的光を注いでいるかのようである。


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