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同じ月を見ていた

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同じ月を見ていた①

同じ月を見ていた①

「いつおれのものになってくれるの?」

甘えるような試すようなそんな声だった。
「さぁ……」
わたしはそうはぐらかすとベッドの端に腰掛けてペットボトルの水をひと口飲んだ。
「……怒ってる?」
言葉とは裏腹に、唇の端をキュッとあげて何か楽しげな笑みを浮かべている。きれいな顔だ。いつ見ても見蕩れてしまうほど。如月遼。それが彼の名前だ。

「いつもその質問して飽きない?」
「今日は違う答えが返ってくるか

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同じ月を見ていた②

同じ月を見ていた②

「あっ、苗字」

「え?」
フラっと立ち寄ったサロンの受付で名前を書いているとそんな風に声をかけられて、わたしは顔を上げた。
「あっ……すみません。同じだなって思って」
「同じって?」
「僕の苗字にも、入ってるんです。ほら」
彼はそう言うと、胸の名札を指さした。『如月遼』と記してあった。
「ね?」
「あぁ、月」
わたしが答えると、彼は頷いて満足気に笑ってみせる。
「月島灯里さま、素敵なお名前ですね

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同じ月を見ていた③

同じ月を見ていた③

「シャンプー替えた?」

ふいに訊かれてドキリとする。
「髪、いい匂いだなって思って」
「あぁ、うん……昨日ジムに行ったから。そのまま寝ちゃって」
「そっか」
咄嗟に嘘をついてしまった。でもうまく誤魔化せたみたいだ。彼、浅見蒼一はそれ以上何も訊いてこなかった。

遼と会うのは決まってサロンが休みの月曜の夜だ。わたしも急に残業になったり遼に別の予定が入ったりするので、もちろん毎週という訳ではないが、

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同じ月を見ていた④

同じ月を見ていた④

金曜の夜だった。
仕事から帰り、シャワーを浴びた後、わたしはスマホと睨めっこをしていた。
あれから遼からの連絡はなかったし、わたしからも出来ずにいた。

……怒ってるのかな。。

電話してみようか。。もうお店は終わっている時間だ。
でもなんて切り出そうか。。

そう思ってからもう1時間、緑のボタンを押せずに固まっている。

急に鳴ったインターホンの音に驚いて落としてしまったスマホを拾い上げ、こんな

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同じ月を見ていた⑤

同じ月を見ていた⑤

月曜日の午後。
外は朝から雨が降り続いている。
わたしは会社を休んでいた。
あの夜からまだ開けられずにいる小さな箱を、手のひらの上に乗せる。蒼一のことだ。きっとわたしの左手薬指にぴったり合う、素敵な指輪なのだろう。
箱を元通りテーブルの上に置き、ベッドの傍らに投げられたスマートフォンを横目で見た。
遼からの連絡は、変わらずないままだった。
部屋着のまま、ゴロンとベッドに横になる。

どうすべきなの

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同じ月を見ていた⑥〈終〉

同じ月を見ていた⑥〈終〉

話があると蒼一の家に行ったのは、火曜の夜のことだった。
指輪は受け取れない、と箱を返すと、蒼一は虚をつかれたような顔をした。
遼への想いに気付いてしまった今、何でもないふりをして蒼一の傍にいることはできない。

「ごめんなさい」
「……理由を聞かせてもらえる?」
蒼一はわたしの前にコーヒーの入ったカップを静かに置いた。
付き合いだして1年目の記念日に、一緒に買ったペアのコーヒーカップだ。
「蒼一と

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