短編「君待ちたまふこと勿れ」

　ジャバーーー

男「あ、ちょっと今からモノローグするね。

(咳払い) さっきの音はトイレの流水音。汚い話は省略するがあれは、、、見事であった。かなり難産ではあったが、そのためか産み落とした今、俺はほんのり達成感を感じている。

どれくらいの時間、俺は便座に座っていただろう。壁のシミが人の顔に見え、それが俺に話しかけてくるイメージを持つぐらいは個室にいた、と思う。とにかくかなりの時間を要したため、途中5回ほどノックをされた。

俺が個室に入ってから外で待っていたのはおそらく3人。最初の2人は一度ノックをしてそのあとすぐに諦めて出ていったようだが、、

今、個室の外にいる人物は3度ノックをしてなお待ち続けている。

かなり気まずい。そして待たせた挙句にこの臭いだ。…申し訳ない！申し訳ない以外の何物でもない。

ちょっと諦めてくれないかなと何度かフェイントで水を流してみたりもしたが、逆に変に期待を持たせてしまったと今更後悔している。

…仕方がない、腹を括って出よう。怒られたら全力で謝ろう。と、ここまでが俺のモノローグ」

ガチャ(ドアが開く音)

男「すみません、お待たせしました…」

女「いえ大丈夫です」

男「ヲ、オンナァ！？」

女「はい？」

男「あれ？！すみません！俺！間違って女子トイレ入っちゃってました？！」

女「いや、間違ってないです」

男「なんだ良かった！…じゃない！！え？！じゃあ、あなた間違えちゃってますよ！？」

女「(ため息)…一体、何が間違いなんでしょうね」

男「え？！なに！？」

女「私がここにいる事は間違いなのでしょうか。そんな事、誰が決めたのです？」

男「いやそんなこと俺に聞かれても！分かんないですけど！でも分かんないけど変ですよ！おかしいですよ！」

女「何がおかしいんです？」

男「女性が男子トイレにいることがですよ！」

女「ここのトイレには男子トイレとは書いてませんよ」

男「いやマーク！マーク見て！青色の男性マーク！入り口のところにっ…」

女「(遮って) ちょっともうタンクの限界なのでどいてください」

男「すいません！」

バタン、ガチャ(トイレのドアが閉まる音)

男「…タンクとか、、言うか普通？」

女「大体ね？男性トイレのマークとか言って、あれはただの‘’青色、丸、逆三角系”じゃないですか」

男「まだしゃべんの？！」

女「あとすごく臭いです」

男「それはすみません！！」

軽快な音楽。

終。