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「理由なき修正指示」から生まれる、Web制作会社との溝

事業会社(発注側)のWeb担当者は、数多くのパートナーさんと関わると思います。Web制作会社、更新専門会社、システム会社、サーバー運用会社、SEOコンサル会社、カメラマンなどなど…。多くの方と関わるからこそ、「パートナーさんとの関係」に悩んでいるケースも多いのではないでしょうか。

関係がうまくいかなければ新しいパートナーさんを探すという選択肢もありますが、その選択肢をとるにしても、原因が何であったかは考えておきたいものです(実際はどちらか原因があるのか曖昧だったりするので難しいのですが…)。

個人的には、うまくいかない原因として「情報共有不足」が共通項としてあるのではと思います。

僕は、サイボウズ入社前はWeb制作会社で十数年勤めていました(プロフィールはこちらの記事から)。元Web制作会社の立場として、事業会社からどういう情報共有をしてもらうとよかったか、つまり事業会社側は、どういう共有の仕方をすればよさそうかを書いてみます。



制作会社として困る「理由なき修正指示」

制作会社時代にお客さん(事業会社)とのコミュニケーションで苦労したのが、「◯◯を✕✕に変更して」という理由なき修正指示でした。

もちろん単純な誤字レベルであれば理由は不要です。ここでは「文字の色を赤色にしてください」や「この部分に、この要素を追加してください」といったレベル感の修正指示を指しています。

修正理由が書かれていないと「なぜそうするか」がわかりません。目立たせたいのか、上司から言われただけなのか、社内検討用にほしいだけなのか。

指示通りに修正するのは簡単なのですが、制作側としては何かしらの意図を持ってデザインをしているので、意図がわからないとモヤモヤし、なぜその修正をするかの調査から入ったりしていました。でも結局は想像するしかないので「その修正はこういう意図でしょうか?もしそうならこういう方法もあると思いますが」といったコミュニケーションをしていました。

そもそも意図が異なっていれば的はずれな提案になってしまうのですが、提案なしだと「その修正意図はなんですか?」といった聞き方になり、一度であればいいかもしれませんが、毎回これだと事業会社側も困ってしまいますよね。

的はずれな提案だと満足度が落ちるし、そのまま修正してくれればいいのになんでそんなに聞いてくるんだといった不満、そのコミュニケーションのための時間ロスもあったりで、お互い疲弊してしまいます。

ただ、事業会社は制作に精通した担当者ばかりでもないので、「色やレイアウトってセンスや直感で決めているんでしょ?」と思っているケースも少なからずあります。このあたりは僕も制作会社時代に、しっかり制作会社側としてデザインの意図を説明する必要があったなと今更ながら反省しています。

また当時はコミュニケーションの基本がメールだったこともありますが、「誰の意見か」が見えづらいのも難点でした。人によって対応を変えるということではないのですが、「誰の意見か」は言い換えると「どういう立場の人の意見なのか」。

指摘をしているのが事業会社の営業さんやカスタマー系の方なら、実際のユーザーに近い意見とも捉えられたりして、制作会社側として提案する際に用意するデータ等の準備がしやすくなったりしていました。

事業会社は、毎回修正意図の詳細まで共有するのは大変?

制作会社としてありがたいのは「修正依頼を出す際は、背景を含め詳細まで意図を共有してくれる」なのですが、これって事業会社側からすると意外と大変ですよね。

  • 社内検討で出た議論内容を、制作会社さん向けにわかりやすくまとめるのが大変

  • 日々の業務に追われて、つい細かい部分の共有を省いてしまいがち

  • 制作経験がないため、制作会社さんがどこまでの情報を必要としているかがわからない

  • デザインへの理解がない場合が多いため、色やフォントにも意味があると思っていない

こうした背景もあり、理由なき修正指示をしてしまいがちではないでしょうか。「手間がかかる」「理解不足」の要因が大きいですが、これらのハードルは意外とやっかいだったりします。

検討過程もオープンにしたらお互いハッピーなのでは

サイボウズ(事業会社)にきてから意識しているのは、できるだけ検討過程もオープンにすること。

例えば以下のようなやりとり。

web制作会社のディレクターさんが見えるところで、サイト担当者と一緒にフィードバック

この例はあるデザイン案についてのやり取りですが、制作会社さんからご提案いただいた案について、社内検討してお返しするのではなく、制作会社さんも見える場所で議論しています。そうすることで、誰が意見しているのか、どこが気になっているのか、が一目瞭然です。

これだけで、先述したハードルの「手間がかかる」「理解不足」がなくなります。また、コメントを編集することなく、ありのままの情報を共有しているので、パートナーさんと事業会社のあいだに情報格差が少なくてすみます。伝言ゲームになると、当初の意図と異なって伝わってしまうというのは周知の事実ではないでしょうか。

あとサイボウズのWebチームでは、「Miro」というクラウド上のホワイトボードツールを使っているのですが、企画意図を明確にお伝えするためにMiro上で検討したものをそのままパートナーさんにお渡ししたりもします。口頭での説明は必要ですが、これも社内の温度感をそのまま伝えられたり、まとめる手間が減ったりします。

テレワーク主体になり、Miroがないとどうやって議論をまとめていくのだろうと不安になるときもあり、むちゃくちゃ便利なツールだと思います(注:Miroの回し者ではありません)。

とはいえ全部共有するのも難しいので、まずは意識するところから

もちろん社外に出せない情報もあると思いますし、社内の様子を見られるのに抵抗があるのもわかるので、すべての検討過程を共有する必要はないと思います。

また「結論だけ言ってくれればいいから」というパートナーさんもいるので、どういうフェーズから関わってほしいかや、その会社さんの強みなども考慮した上で、ケースバイケースでの対応が必要かなと思います。

とはいえ、お互いの情報格差が少なくなるほど、パートナーさんからの提案精度もあがりますし、対応スピードも早くなる傾向があると思います。事業会社側としてもいい事ずくめですね。

今回は前職経験もあり、制作会社とのやりとりを想定して書いてみましたが、基本的な考え方はどのパートナーさんでも同じだと思います。

事業会社として、何かをアウトソーシングするということは、いかによりよいパートナーさんと出会い、関係性を継続するかが重要になってくるのではないでしょうか。

まずは「検討過程の情報共有」を意識することからはじめると、パートナーさんとの関係性も変わってくるかもしれません。

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