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コネも実力のうち、という話

知人を頼る


こんばんは。
今日書くのは、「ビル倒しと環境問題?」の続きです。

京都で仕事を始めた私ですが、
頼れるものは何でも頼ろうと決めました。
若くて、知識もない。
でも、学生時代にネットワークを培っておいたので、
それは何かに生きるはず。
というか、生かそう。

社会人3年目くらいまで、学生時代の後輩の中には
まだ大学に通っている人も一定数いました。
そこで、自分の出身大学に加え、他大学の後輩たちに、

「学生に人気のある授業と先生の名前を教えて!」

と、聞いてみたのです。
そして、教えてもらった先生のことを調べて、
手紙を書き、「授業の内容を本にしませんか?」と依頼しにいったのです。

これはジャンル問わずでしたが、
同じ手を環境関係の企画でも考えました。
同じNPOで一緒に活動していた環境問題を勉強する大学院生に頼んで、
研究者の先生方を紹介していただいたのです。

そうしてできた本が、こちら。
今でも版を重ねている『3R・低炭素社会検定公式テキスト』の原型となる、
『3R検定公式テキスト』でした。
環境問題というと温暖化など、気候変動の話がすぐに思い浮かびますが、
資源の循環も大事な問題です。
とりわけ、「Reduce(ごみを減らす)・Reuse(再利用する)・Recycle(再生して使う)」の「3R」について学ぶことも大事。
そうした資源循環について、学ぶための検定試験の公式テキストの編集に従事しました。

2008年に『3R検定公式テキスト』ができてから、早15年。
委員会の発足から私も参加させていただき、
とても多くのことを学ばせていただきました。
前職で担当した本で初めて、1万部を超えた本となりました。

1万部と言っても大したことがないと思う方も多いかもしれませんが、
学術系出版社にとっての1万部というのは、文藝やビジネスで言うと…そうですね、数十万部~100万部くらいのインパクトがあると思っています(言い過ぎか?笑)。

「自分の頭で考える」ことの限界


こう書くと、しつこい営業マンのような気もしますが、
なんだかんだで紹介が一番仕事に繋がります。
そのことに気づいたのは、
「コネなんて関係ない!アイデアこそが全てなんだ!」
と思って、本を色々読んで企画を考えて、
先生に打診を繰り返したものの、
全て断られた経験があったことも大きいかもしれません。

断られてしまったのは、勉強不足で、未熟だったことも大きかったと思います。
でも、振り返ってみると、企画の考え方も悪かったように思います。
どういうことか?
本を読んで、議論されていない点や、今後の課題が何か、ということを一生懸命考えたのです。
これは、通常の読書の場合、誠実な姿勢だと思います。
しかし、それと企画は、別物です。
学術書の場合、アイデアを考えるということは、
問題提起をするということよりも(もちろん、そういうものがあってもいいのですが)、
企画コンセプト(教科書を書いてほしい、啓蒙書を書いてほしい、など)を具体的な形がイメージできるまで詰めるということが主になると思います。
その型が身に付くまでは、紹介してもらって話をお聴きする、というところから始めた方がスムーズのような気がします。
(会社が新人のために企画フォーマットを用意してくれていて、この先生にこうアプローチしろ、とお膳立てしてくれるなら話は別)

ある時、とある老舗出版社が新卒採用の募集要項に
「著者の紹介状あるいは社員の紹介があること」
という条件を出して炎上したことがありました。
しかし、私はこれを見た時、
「学術書の編集者に一番必要な力を見ている」
と思いました。

別にどこの大学出身だからとか、誰の子どもだからとか、ということではありません。
自分で動いてコネを作ることができるかどうかが大事なのです。

はっきり言います。
コネも実力です。

今コネクションがないなら、どうすればたどり着けるか、ロードマップを考えて行動に移す。
大事なのは、今コネがあることじゃない。
コネをつくることができるかどうか、なのです。

既にある人は、そこに頼り過ぎてしまってかえって発想の幅が狭くなってしまうこともありますが、
コネがなければ、そうした制限もないので、どこまでも作ればいい。
編集者でなくても、きっと役に立つ考え方だと思います。
自分の頭で考えて限界があると思ったら、人に頼る。
他人の褌で相撲をとることを恥じるのではなく、誇るのです。

繋がりに頼る、その先へ


そんな感じで、
友人や先輩、後輩たちに紹介をお願いしたところから、
多くの企画が生まれていきました。
(もちろん、紹介無しでいきなりお願いして、成功したものもあります。
そこは名誉のために言っておきます笑)
そのうちの一冊を紹介します。

この本は、早稲田の社会科学部で人気教授だった田村正勝先生のことを早稲田に在学中だった後輩に教えてもらい、企画を依頼して形になりました。
もともとボランティア関係は私も興味があったテーマですし、ガチンコで哲学的なところから考えるということをやってみたかったこともあり、先生方の論考をとても楽しく読ませていただきました。

そうして繋がりから本ができてくると、
「ああ、あの本を担当した人ね」
ということで、実績ができて、次の仕事を頼みやすくなります。
また、学会や研究の会合などに顔を出すことで先生方からの認知度も上がっていくので、
経験を積めば積むほど仕事はやりやすくなっていくはずです。

ただ、
先生から

「これを書きたいので、出してください」

と言われて、

「はい、わかりました!」

と答えるだけだと、売れる本は作りにくい。
読者のニーズを考えることも大事ですし、
本が出る必然性というか、文脈を考えることも大事です。
専門書の企画はこのパターンも多いのですが、
(学術系であっても)売れる本を作ろうと思ったら、
考える必要があります。
どうするか?

続きます!!




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