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創業2年を迎えるスタートアップのCDOが2018年にやって良かった6つのこと

こんにちは!キネカという会社でCDOをやっています、原田佳樹 @yoshigorouu です。今年はこんな記事こんな記事を書きました!

キネカという会社は、2017年1月に創業してもうすぐ2年が経つスタートアップです。エンタメマッチングアプリ「pato」やメディア事業などを運営している会社です。

年の瀬なので、今回はスタートアップの現場からデザイン責任者としてやって良かった6つのことを、今年を振り返りつつ書いていきます。

1.  一つのプロダクトのリニューアルで、「デザインの力」を証明した
2.  デザインの価値を伝え続けた
3.  プレイヤーとしての武器をアップデートし続けてスキルを磨いた
4.  デザインができることにひたすら向き合い、腹落ちするまで考えた
5.  デザインチームを1人から6人体制に。デザイン組織の土台を作った
6.  事業作り・経営とのコミュニケーションを続けて、目線をそろえた

1. 一つのプロダクトのリニューアルで、「デザインの力」を証明した

キネカにジョインして最初の私の仕事は patoというアプリのリニューアル でした。半年をかけたリニューアルで当時は必死でしたが、今思うとこのリニューアルがデザインの力を示すのに大きな効果があったなと思います。

1つに、このリニューアルによって数字改善の結果を出せたことです。技術アップデートの後押しもあって各指標が10%前後も改善されました。「デザインの価値を示すには、まずは数字で証明すること」とよく言われますが、それを体現できたのかなと。

デザイン経営・デザイン組織作りの第1段階は「経営層などのトップレイヤーがデザインに関する重要認識を持っている」ことです。そのためにはまず、ボトムアップで1つのプロダクトの結果を出すのが手っ取り早いと思っていて、キネカにおいてはそれがpatoのリニューアルだったのでしょう。

▲「デザイナーマネジメント導入プロセス」(引用:「デザインは経営資源になる。という話」)

もう1つは、プロダクト開発におけるデザインプロセス。デザインを作ってはじめて、議論の土台にあがることが数多くあったり、何十回にも及ぶプロトタイピングはリリースのクオリティを高め、ここでもデザインの力を証明できました。

チーム内でのイシュー・施策はまずペーパーでモックにし、途中でシェア。担当者と違和感がないかすり合わせし、良ければデザインに入る。大きい機能はプロトタイピングして全体でインタラクションを確認、納得いくまで作り込む。リリース前にはデザインチェック。

こういったデザインドリブンなプロセスは、今では社内のどのプロダクト開発においても当たり前になりました。

2.  デザインの価値を伝え続けた

デザインができることを追求し、それをチーム・社内に伝える努力をし続けました。この1年、事あるごとに「デザインだ!デザインの力や!」と口うるさく言っていたような気がします。笑

例えば、週の定例ミーティングで事業進捗を報告する際に、その週に出した施策にデザインがどういう点で貢献したのかを全体に向けて話したり。また、デザインができることは何か?デザインチームが今後何をしていきたいのか?を積極的に全体の場で伝えてきました。

各チーム・各人のデザインとの関わりが持てるような努力もしました。キネカには「キズナメシ」という、各チームのリーダークラスの人が他チームの人と月に10,000円までご飯を食べて絆を深めるという神制度があります。

その制度を利用して、今年は社員・インターン含めほぼ全員とキズナメシをしましたが、そのときには必ず、その人、もしくはその人のチームに何らかの点でデザインが貢献できないか、どういった点ならデザインと関わりを持てるのかを一緒に話して深めることをしました。

その他にも、偉い人の言葉を引用しながらデザインに関する記事をslackに垂れ流したり、デザインチーム以外の人を交えてデザインに関わる勉強会をしたり。今思うと、自分の存在価値を証明するがごとくデザインの価値について強く伝え続けてきたような気がします。

その甲斐あってか、今では「デザインの力の見せどころだよね!」「これはデザインパワーだわ!」みたいな言葉が社内で飛び交うようになりました。

「言葉は文化の最小単位」とはよく言いますが、繰り返し同じことを言い続けた結果、「あ〜なんかデザインって大事なんだな〜」という雰囲気を社内に作れたと思っています。

あとからジョインしたデザイナーが働きやすい環境を作ったと思うし、これからのデザイン組織作りの第一歩になりました。

3.  プレイヤーとしての武器をアップデートし続けてスキルを磨いた

デザイナーの数はまだ多くないので、私の業務の70%はプレイヤーとしての仕事が占めています。

ただでさえ移り変わりが早いデザイン業界、スキルのアップデートをしないことは、現状維持ができていないことと同義だと思っているので、毎日2〜3時間インプットする時間を確保しました。

キネカで定義しているデザイナーのスキルセットの中で、客観的にみて明らかに水準に届いていない部分に重点を置きました。会社の四半期ごとに合わせて、自分の目標としてテーマとKPIを設定していました。

・徹底的なユーザー目線をアップデート
1つめのテーマはこれです。デザイナーなのでユーザーの体験に責任を持つのは当たり前なのですが、キネカのメンバーは私以上に徹底的なユーザー目線を持っているので、対等にプロダクト開発をするためにアップデートが必要でした。

0からユーザーヒアリングを実施したり、ユーザーが集まるサロンに参加したり、自らサービスを使ったり。実際にユーザーに会って話を聞くこと、これを徹底してやりました。

・アートワーク力をアップデート
2つめは、アートワーク・グラフィック力の強化。恥ずかしながらイラストレーターをほぼ触ったことがなかったので、イラレを中心にアップデートをしました。社外のデザインリソースを使ったときに、最終的な調整をイラレでやらなければいけない機会が多くあったので、その危機感から始めました。

毎日のイラレチュートリアル、フォントリサーチ。あと最近はグラレコも始めました。楽しい!表現力が増えると、デザインで見せられる未来が増える。アートワークのアップデートは引き続きやっていきたいところ。

▲今年制作したグラフィックの一例と、フォントリサーチの一例

プレイヤーとしてのアップデートをどこまでやるのか、この線引きは非常に難しいなあと思います。とくにビジュアルの部分。私よりできる人は多くいるし、その中でどこまで出来るようになる必要があるのか?

また、インプットの時間に関しては、今後は業務内にも積極的に取り入れたいと考えています。特にデザイナーは、いわゆる「木こりのジレンマ」問題が起きやすい仕事だと思うので、スキルをアップデートできるようなチーム内の仕組みづくりに今後は力を入れていきたいところです。

4. デザインができることにひたすら向き合い、腹落ちするまで考え抜いた

過去の経験、日頃のプロダクト開発、他の会社のデザインチームのミッションなど、あらゆる事例を参考に「デザイン」に向き合いました。

きっかけは前職でのプロダクトと、キネカでのあるプロダクトの0→1の立ち上げでした。前者は初回リリースから必要そうな機能を盛り込み、リリースのクオリティを高めるべく「デザインにこだわって」いました。後者では、デザインはほぼ入れず、簡易的なガイドラインだけ作りリリースを優して開発を進めました。

2つのプロダクトの初月の売上には、圧倒的な差がありました。これは今年頭の話ですが、そんな原体験から私は「デザインとは何なのか」「デザインができることは何なのか」について考えるようになりました。

当時考えていた「デザインができること」

デザインが得意とすることは、「ブランド創り」と「デザインプロセスを使った課題解決」この2つだと思います。細分化したらもっとあると思いますが、究極的にはこの2つではないかと思っています。

・ブランド創り
いまや世の中には無数のサービスが存在していて、私たちが認知できているものはそう多くありません。また、ユーザーの消費行動が多様化したことにより画一的なものは目に止まらなくなりました。つまり、サービスを選ぶ意味・理由をきちんと見出してあげる必要性が生まれたのです。そういったときに、サービス側の強烈な想い・世界観があると、ユーザーがそれを選択する強い引力となります。

・デザインプロセスを使った課題解決
デザインの手法はたくさんあります。ユーザーヒアリング、ビジネスキャンバス、デザインスプリント、UXリサーチ、ジャーニーマップ、プロトタイピング。こういったユーザーを軸にした手法は「デザイン思考」として体系化されました。それはときに大きな力を発揮し、0→1のプロダクトの立ち上げの成功、また伸び悩んでいるプロダクトの突破口になりえます。これらの手法をもとに「誰に、どんな価値を、どう届けるか?」を考えられること、これがデザインができることの2つめです。

この2つの「デザインができること」は、政府が打ち出した「デザイン経営宣言」が発表されたときに、私の中で確信に変わりました。

▲「デザイン経営」の効果 (引用: 「デザイン経営 - 経済産業省」)

「デザインができること」を考えることは、デザイン責任者の一番最初の仕事だと思っています。これが腹落ちしてから、自分の中で大きなブレイクスルーがあって、デザイナーとして前に進めた気がします。

何が良いかというと、冷静に事業作りと向き合うことができるんですね。

工数が重そうであれば、機能を削るコミュニケーションを積極的にとるし、デザイン修正は後回しにしてとりあえずリリースもする。極論、このビジネスはデザインが要らないという意思決定もできるかもしれない。

一方で、0→1フェーズでは徹底的にユーザー目線でプロトタイプを何回も作るし、作り込みが必要ときには時間をかけてディテールまでこだわる。

こういった意思決定が冷静にできるようになったことが、今年1番の成長かもしれません。

5. デザインチームを1人から6人体制に。デザイン組織の土台を作った

キネカのデザインチームは、現在は業務委託含め6人体制でやっています。 フルタイムでやっているのは私だけですが。泣

今年のはじめは私1人だけでしたが、今では副業で手伝ってくれる仲間が5人も増え、少しずつデザインから事業にインパクトが与えられるようになってきたと思います。

仲間が増えたことによって、事業部でのコミュニケーションが回るようになってきました。私が関与しなくとも物事が前に進むことに大変感動しました..仲間が増えるのが1番最高なのだなと..

一方で、今の段階からデザインチームをどうしたいか?も少しずつ明文化してきました。キネカは「事業家集団」を謳っており、現にスタートアップながら6つの事業をもっています。事業の領域も、フェーズも様々。そんな特徴を持つ会社では、どんなデザインチームを作るのがいいのでしょう。

▲デザインチームのミッション

まず定量的には、デザインがあることによって、「各事業部のPLを半分の速さで達成すること」そして「10年のスパンでみて、キネカグループ全体の売上を2Xにすること」を目標に掲げています。

キネカは事業家集団であるので、やはりデザインの価値を数字という見える形として追求し、「デザインで事業をドライブさせることができる」そんなデザインチームでありたいと考えています。

また、組織のあり方に関しての今のところの最適解は、社内にデザインファームを作ることだと思っています。各事業部にデザイナーがいるというより、独立したデザイン組織があって、各事業部の領域・フェーズに合わせて人を振り分ける。デザインの力によってインパクトが出たら、また違う事業部のデザインをする。

こういった柔軟で、最強なチームを作ることが来年の目標の1つです。今年はデザイン組織を作っている人とお話する機会が多くありましたが、デザイン組織を独立させて1つにまとめている会社は、外からみてもイケてるし、内情も上手くいっているように感じました。

来年にはデザインドメイン(kineca.design)をとって、キネカでも本格的にやっていきたい!良いデザインは、良いチームから。

6.  事業作り・経営とのコミュニケーションを続けて、目線をそろえた

デザインとビジネス、やっていること・使っている言語が違っても、最終的に目指すところは同じだから、目線を揃えることはできます。

コスト感、ビジネス感覚を合わせるために、毎日のコミュニケーションの中で、何の優先順位をあげて取り組むのか、どこにデザインの工数をどのくらい割くべきなのか。限られたリソースの中で最大のインパクトを出すべく、こういった認識の擦り合わせをしてきました。

▲ デザインの工数をどれだけ使うのかを議論

これはデザイナー目線ではできません。特にデザイナーは、自分のプロダクトへの帰属意識が高くなってしまいがちで、「完璧」を目指してしまうたちであり、私も例外ではありませんでした。

しかし、スタートアップは本当にリソースが少ないので「デザインができること」を理解した上で、今取り組みべきは本当にそれなのか、そういった決断を出来るように必要があります。

・デザイン・実装は最終手段。まずはアナログで回せないのか
・インパクトありそうだけど、他の施策に比べてどうなのか
・今作っているものは汎用性があって、今後も使いまわせるものなのか
・リリースの段階を分けることはできるか
・より大きなKPI、関わるKPIの多さを考慮できているのか
・高さをあげるほうが大事なのか、入り口を広げるほうが大事なのか
・もっとユーザーの体験の深いところにデザインを使えないのか

例えばこれらは最近残してあったメモです。こんな具合に、デザインとビジネスの目線を揃えるコミュニケーションを続けてきました。今では、自分がメインで見てるプロダクト以外の事業責任者と、こういった話をすることが増えました。

もちろん、デザインをもっとここに使ったらいいんじゃない?みたいな提案も積極的にしてきました。大事なのは、それを実行したときのインパクトをできるだけ数字で話すこと、つまり事業責任者・経営者に伝わるような言語で話すこと。デザイナーでありながら同じ目線で話すために、こういったコミュニケーションを諦めずに続けました。

今年はプロダクト単位でしたが、来年はもう少し目線をあげて、会社全体についても同じような目線で見れるようになりたいですね。

デザインに投資した分、どのくらいリターンが返ってくるのか、自社のことはもちろん、デザインに投資してる会社の決算はどうなってるのか、どういう投資の仕方があるのかなど。この指標を作るのは非常に難しいし、まだそのフェーズではないと思いますが、少しずつ進めていきたいです。

まとめ

今年の振り返りを兼ねて、スタートアップのデザイン責任者が2018年にやってよかった6つのことを書きました。

振り返ってみると、デザインに関してのあらゆる「土均し」を今年はしてきたなあと思います。1年で出来ることは本当に少ないとしみじみ.. 来年は、この均した土の上に城を立てられるように頑張るぞ〜!

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最後に、ツイッターのほうでもデザインのことを中心に発信してるので、もしよかったら見てくださいね!
アカウント: https://twitter.com/yoshigorouu

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