さっぱりな彼女 #18
「先週の日曜日、仕事だって言ってたけど、会社の人たちとご飯行ってたんだって?」
彼は穏やかに話し始めたが、少しだけ疑念を含んだ声だった。美咲は、「そうなの。」と答えた。
「仕事はしてたんだけど、その後に食事に行こうって言い出してね。だから、そのままみんなで行ったのよ。」
「ん?誰が言い出したの?」
「えっと、上司とか。みんなで決めた感じ。まあ、みんなでね。
仕事が一段落ついてから、みんなでちょっとどうしようかって話になって、上司も交えて、まあ同僚たちもいて、それでその、みんなでとりあえずご飯を食べに行こうってことになったんだけど、もちろん仕事の話も含めてっていうか、その食事もただのランチじゃなくて、その後もプロジェクトの進行とかも話さなきゃいけなかったし、で、具体的には、プロジェクトの全体的な進め方について、その時点で決めなきゃいけないところがあったから、まあそういうこともあって、だから、ただの遊びじゃなくて、本当に、仕事がらみで、ちゃんとやってたっていうか、進めてたっていう感じで…」
「ちょっと待って、話が長すぎて何が言いたいのか、全然意味がわからないな。」
「いやいや、だから、そのご飯食べながら、上司も交えてプロジェクトの進め方とか話しながら、みんなでランチしてて、仕事の話をそのまま食事の時も続けてただけよ。」
「わかった。日曜日は、仕事の流れで、上司や同僚たちとランチミーティングをしていたんだね。
で、具体的に何を話していたんだい?」
「うん、だから、仕事の話をして、ランチの時もプロジェクトの進行とか、あと来週の会議のことも話して、で、途中で新しい案件の話も出てきたりして、それで結構いろんなことを話したんだよね。」
「そうか、ごめん。具体的な話は聞いてはいけなかったってことかな?」
「いいえ、だからね、具体的には、プロジェクトで幸せになろうって言ったのよ。ちゃんとその方向性で話がまとまって。なんだか素敵なことになりそうだと思わない?」
「『プロジェクトで幸せになろう』って、それどういう意味かな?一体何を話してたんだい?」
「だから、プロジェクトに関わるすべての人の『幸せ』についてよ。だから、問題ないって言ってるでしょ。」
「『だから』が多すぎて、何がつながってるのか全然わからないよ。ちゃんと説明してくれるかな?」
「うん、その…まあ、仕事終わった後に、みんなでランチしてプロジェクトの話も進めて、まあ、その場でブレインストーミングしてシナジー効果を生んだ感じで…だから、日曜日はあなたとの予定を断ってランチに出かけていたわけではないから、問題ないってば。」
「もういい、美咲。何が言いたいのか、さっぱりわからない。どこまでが嘘で、どこからが本当かさえも、僕にはわからない。」
彼は深いため息をつき、イライラが徐々に顔に表れ始めた。
美咲は戸惑った。誠意を尽くして話しているつもりなのに、彼にはその言葉が全く伝わっていない。話せば話すほど、彼の混乱と苛立ちが増していくのが明らかだった。