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八月の銀の雪。「地球の内核にも、雪が降るんですよ。」

伊予原新さん著書の「八月の銀の雪」を読んだ。短編を1つだけ。
気になったことをメモしておこうかと思ったけど、それだと本の内容なのか後でごちゃごちゃになるなと思ってメモじゃなくて少し書くことにした。

理工学部の大学4年生の僕は、就職活動がうまくいかず1社からも内定をもらえていない。行きつけのコンビニの店員で、日本語学校に通っていると思われるベトナム人「グエン」は、コンビニのどのような業務にもどんくさい仕事ぶりで、片言の日本語。僕は「使えないやつ。」とグエンのことを蔑んでおり、できるだけコンビニで顔を合わせたくないと思っている。

ある日、大学の先輩とコンビニのイートインスペースでたまたま遭遇し、怪しいアフィリエイトビジネスのサクラのバイトを頼まれる。就活で金銭的に困窮していたところだったので、気は乗らないもののそのバイトを引き受けることに。先輩に呼び出されコンビニで待ち合わせると、先輩とグエンが言い合いになっていた。グエンは先輩と僕が会っていたあの日、イートインスペースで「論文」を見かけなかったか、と聞いてきて......といったような話。

地球内部のように、人間にもいくつもの層があって。関わっていくことでしか気づけないおかしみがあって、ある人にとっては悪い人であっても、ある人からみれば心が弱く優しい思慮深い人かもしれない。

美しかった記述は下記の通り。

「知ってますか。内核にも、雪が降るんですよ。」
「鉄の結晶の小さなかけらです。外核の底で、液体の鉄が凍って生まれる。それが、内核の表面に落ちていきます。ゆっくり、静かに、雪みたいに。」

地球の中で、もうひとつの星に、銀色の雪が降る。

                              おわり

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